<figure id="attachment_292303" aria-describedby="caption-attachment-292303" style="width: 800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d7ca84f2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/9d24c92a32abce8069c6a005dff2a870.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292303" class="wp-caption-text">雅楽芸人カニササレアヤコ（左）と普段着の彼女（右）（左の写真は事務所提供）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「都営新宿線、発車……プオ〜ン」</span></p>
<p>ガシャッの衝撃音とともに落下――。</p>
<p>これは年末恒例お笑い番組『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』（フジテレビ系）での一コマで、演者はカニササレアヤコ（29）。烏帽子を被り、雅楽奏者の格好で雅楽楽器の笙（しょう）を吹いて、踏切音や電車の発車音、雅楽奏者の東儀秀樹氏のモノマネなどで人気となった同番組の常連である。そんなマイナー芸人が、昨年８月、『Forbes JAPAN』の世界を変える30歳未満の30人『30 UNDER 30』に選ばれた。</p>
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<p><span class="strongInContent">「『世界を変える』というのはきっと雅楽を世界に広めろよ、ってことですよね。せっかくフォーブスに選ばれたんだから世界に発信しなきゃなと思って…。１本だけ英語の動画を上げてみたんですけど、なかなか（視聴者は動画に）たどり着きませんよね。英語で『GAGAKU』を検索する人なんていないじゃないですか（笑）。尺八は海外で知られていますが、それは禅の概念が欧米で広まったからだと思うんです。だから『MIYABI』が広がれば雅楽も少しは広まるのかなと思うんですけど。『MOTTAINAI』みたいに広がらないですかね。ふふふ（笑）」</span></p>
<p>小さな声でゆっくりと、にこやかに話す雰囲気は、芸人カニササレアヤコの無表情で無愛想なそれとは全く違い、一般企業で働くOLといった雰囲気だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「私、もともと大人しいんです。声も小さくて…。最初は周囲のお笑い芸人的なノリに合わせようとして頑張って無理に合わせてました。飲み会ではたくさんしゃべらなきゃとか、誰かがボケたらちゃんとツッコんで、とか。でも、大きい声も出せないし、あまりテンションも上げられない。こりゃあ向いていないと思って、一時はもうお笑いの世界は諦めかけたんです」</span></p>
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<h4>雅楽芸人は自分らしく静かにお笑いをやれる道</h4>
<p>中学生の頃からお笑い芸人になりたくて高校でお笑い研究会を立ち上げた。４歳から習っていたピアノの先生からは音大受験を勧められたが、早稲田大学進学を選んだのは観に行ったお笑いサークルがいちばん面白かったから。在学中にワタナベエンターテインメントの養成所にも入り、ワタナベエンタ所属芸人にもなった。しかし、どうしても芸人ノリについていけない。そこで、「自分らしく静かにお笑いをやれる道」を模索した結果、出会ったのが雅楽ネタだったという。</p>
<p><span class="strongInContent">「ワタナベに所属していたときに１分ネタのライブがあって、そこで何かできないかなと笙を使ったらウケた。それが始まりです。衣装はダイソーのフェルトを継ぎ合わせて自作したものでした。そのネタで学生お笑いの大会で賞も取りました。ライブでやるというよりはYouTubeで細々とやるのが自分に合っているのかなと思ってやり始めたんです」</span></p>
<h4>「ペッパー」開発チームの一員という顔</h4>
<p>実は、彼女には、もう一つの顔がある。『Pepper（ペッパー）』のアプリ開発チームの一員なのだ。ペッパーとは、『ソフトバンク』グループの店舗に入ると、『いらっしゃいませ』と挨拶をしてくれる、「ペッパーくん」の愛称で知られる、あの人型ロボットのこと。彼女は、大学卒業後は就職の道を選んだ。それも、「芸人を続けるには、きちんと収入がないと続けられない」というのが理由だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「就職でエンジニアを選んだのはお笑いをやる時間が確保できるという理由でした。ただ、もうちょっと文系であることとか芸人的な素地を活かせるところで働きたいと思い、ペッパーのアプリを開発する会社に転職しました。そこでは、シナリオづくりみたいなこともやれるんです。それこそペッパーのセリフとか。実は、私が考えているんです。子供用のペッパーアプリでペッパーに話しかけたら私が考えたセリフが返ってきたりすると思います。世間のペッパーユーザーの方は間接的に私としゃべっているかもしれないですね（笑）」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="雅楽をちゃんと学びたくて東京藝大に一発合格"></div>
<figure id="attachment_292304" aria-describedby="caption-attachment-292304" style="width: 1728px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="989c9cf3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DT_0006-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292304" class="wp-caption-text">インタビュー中は実によく笑うカニササレアヤコ</figcaption></figure>
<h4>雅楽を世界に広めたいという思い</h4>
<p>2018年、ピン芸コンクールの「R−１ぐらんぷり（現「R−１グランプリ」）」に出場。見事、ファイナリストになり、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』でも人気を博した。傍目には、仕事に芸に、順風満帆にキャリアを積んでいるように見えたが、</p>
<p><span class="strongInContent">「やっぱり芸人さんたちの中に溶け込んでいけなくて。笙は音を出すためにコンロで温めないといけないのですが、ライブのときも私は会場のすみっこでずっと笙を温めていて、そのまま誰ともしゃべらずに帰る……みたいな。やはりここに私の居場所はないのかもしれないと思って、音楽の道に居場所を探したというのはありますね。笙はコロナ禍で暇だったときに練習していたら楽しくなってきちゃって、それでちゃんと学ぼうかなと思うようになったのが藝大に入ろうと思ったきっかけです」</span></p>
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<p>大胆にも東京藝術大学を志したカニササレアヤコ。しかし、そこで一発合格してしまうのが、彼女の非凡なところだ。現在は東京藝大邦楽科雅楽専攻１年に在学中。同学科の学生は一学年20人いるが、雅楽専攻は四学年でわずか５人。彼女の学年は何年かぶりに２人入学したのでかろうじてクラスメイトが１人いる。あまりにマイナーすぎる世界だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「もう１人が嫌な人だったら大変でしたけど幸い良い人で（笑）。でもこんな調子で雅楽が将来どうなってしまうのかという心配はあります。一般的にエンタメとして雅楽を聴きに行くというような機会がなかなかないので演奏家は仕事がないんです。結婚式場での奏楽などもありますけどごく少数ですし」</span></p>
<p>大学で改めて雅楽の現状を知り、少しでも雅楽と一般の人の架け橋になれれば、と思っている。</p>
<p><span class="strongInContent">「今のお笑いエンタメのスタイルで続けていければと思っています。けっこう相乗効果もあると思うので。ネットも使って海外の方とも交流して雅楽の場を広げられたら。そしてゆくゆくは、例えば海外で、雅楽奏者の方々の仕事が増えたらいいですね。そのために、私がフォーブスから選出されたのだと思いますし」</span></p>
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<p>まさに「世界を変える」人っぽい発言である。彼女はお笑い、雅楽、エンジニアと足を踏み入れたジャンルすべてで素晴らしいパフォーマンスを発揮している才媛なのだ。しかし、</p>
<p><span class="strongInContent">「私は世間様にイメージされているような人間ではなくて、放っておいたら何もしないでずっと寝ているタイプ。基本的にずっと寝ていたいです。生来面倒くさがりなので、頑張らなきゃいけない環境に身を置かないと駄目なんです。ただ、いつも私の周りにいる人たちが良い人ばかりですごく助けてもらっています。例えば藝大の受験のときにはいい楽器を調達してくださったり、受験の情報を教えてくださったりとか。夫もたくさんフォローしてくれますし（2017年に結婚）…。いろんな人に助けてもらって何とか生きてるっていう感じです。私はまわりから環境を作ってもらってそれに合わせて頑張るということをずっとやっているだけなんです」</span></p>
<p>カニササレアヤコ、実は意外と自己評価が低かったりもする。それもまた彼女の魅力なのだが、そのうち本人も気がつかないまま、本当に世界を変えているかもしれない。</p>
<figure id="attachment_292305" aria-describedby="caption-attachment-292305" style="width: 2592px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cfa8a365"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DT_9977.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292305" class="wp-caption-text">エンジニアであり、雅楽奏者であり、藝大生でもある芸人。そして、「世界を変える30人」の一人</figcaption></figure>
<figure id="attachment_292306" aria-describedby="caption-attachment-292306" style="width: 1728px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a3de1925"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DT_0025-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-292306" class="wp-caption-text">笙の音色は実に“MIYABI”だった</figcaption></figure>


足立百合

雅楽芸人カニササレアヤコ（左）と普段着の彼女（右）（左の写真は事務所提供） 「都営新宿線、発車……プオ〜ン」 ガシャッの衝撃音とともに落下――。 これは年末恒例お笑い番組『ザ・細かすぎて伝わらないモノ

ペッパーの開発から『細かすぎて』そして『世界を変える30人』に&#8230;カニササレアヤコの奇跡

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