吉高由里子『星降る夜に』と広瀬すず『夕暮れに』…大御所・脚本家で明暗わかれた納得の事情

奇しくも大御所の２大恋愛名手が、火曜ドラマで並び立った。脚本家の大石静と北川悦吏子である。

大石は、吉高由里子（34）を擁した21時枠のテレビ朝日ドラマ『星降る夜に』を担当。一方北川は、今をときめく若手２人・広瀬すず（24）と永瀬廉（24）が出演する22時枠のTBSドラマ『夕暮れに、手をぐなぐ』を担当している。ともに人気・知名度は文句なしの俳優陣だけに、脚本の質が問われる厳しい戦いとも言える。が、今のところ軍配は完全に大石静に傾いているようだ。

冒頭のキスシーンこそ賛否両論だった『星降る夜に』だが、吉高のキュートさや演技力もあって、視聴者からのコメントは概ね好評。視聴率も７％台をキープしている。

片や北川の『夕暮れに～』は、「物語の設定やヒロインのキャラクターが古い」と評判は芳しくない。中には「昭和や平成で活躍した巨匠が令和の恋愛を描くのは無理があるのでは？」という手厳しい声も上がっている。しかし年齢的なことを言うなら、大石も御年71歳。北川より10歳上である。

最大の違いは正反対のヒロイン像

ではなぜ北川の脚本は、あまり共感を得られず、大石の脚本は概ね受け入れられているのか？　その違いが気になり、芸能、また恋愛記事を担当する関係者たちに話を聞いてみた。そこから見えてきたものとは……。

「最大の違いは、正反対のヒロイン像にあると思います。大石さんの描くヒロインは、仕事や自分のやりたいことをしっかり持っていて、自立している。でも『このままでいいのか』と迷いが生じ、そんなときに出会った相手に救われていく、というものが多いんです。

今作も、吉高さん演じる雪宮鈴は35歳の産婦人科医。仕事や人生に葛藤し始める年齢ですが、聴覚障害を持つ遺品整理士の男性と出会って自分を取り戻していくわけです。こういった心情は、自分らしい生き方を探る現代女性の悩みと重なる部分も多く、それゆえ共感を得やすいのだと思います」（恋愛分析記事を手がけるライター）

一方、北川の描くヒロインは、フリーターだったりやりたいことがコロコロ変わったりというパターンが多い、と指摘する。

「どちらかというと地に足がついていないヒロインが多いんです。今回の広瀬すずさん演じる空豆も、結婚のために上京したものの相手に突然フラれてしまい途方に暮れる、というもの。しかもそこから、次なる相手を探すべく婚活を始めるという……。自立するよりも結婚で人生を何とかしようという価値観がにじみ出ており、これが現代女性の感覚とはあまりそぐわない印象を受けました」

たしかに、こういった視聴者とのズレも影響してはいるのだろう。しかし芸能記者たちによると、北川にあって大石にはない、ある不利な条件があるという。それは何かというと……。

「『ロンバケの呪縛』ですね。北川さんといえば、あの希代のヒット作『ロング・バケーション』（96年、フジテレビ系）を生み出した人。これは今でも知らない人はいないほど、有名過ぎると言っていい作品です。それゆえ何を書いても『ロンバケとかぶる、だから古い』と言われてしまう。一種の十字架を背負ってしまったわけです。

一方の大石さんも、『セカンドバージン』や『大恋愛～僕を忘れる君と～』など多くの恋愛ヒット作を生み出してはいますが、さすがに『ロンバケ』レベルのものはない。それゆえ過去作と比較されることがなく、視聴者からもまっさらな目で見てもらえています。

今ドラマの炎上は気の毒なところもありますが、つまりそれだけ北川さんがすごい脚本家だ、という証とも言えるでしょう」（芸能コラムニスト）

２人のドラマは第３話を終えたばかり。今後どうなっていくのか、まだまだ目が離せない。