綾瀬はるか『レジェンド＆バタフライ』で魅せた名場面の数々に見えた「ハリウッド進出」への野望

木村拓哉が主演する東映創立70年記念作品『レジェンド&バタフライ』。男勝りで武道や芸事に長けていながら、天真爛漫で蝶のように自由で気高く美しい濃姫を演じる綾瀬はるかに、心奪われているのは私だけではあるまい。

この映画は尾張の“大うつけ”織田信長と、美濃の“マムシの娘”と呼ばれた濃姫（綾瀬はるか）が政略結婚。今川義元の大軍が迫ると絶望する信長を濃姫が奮い立たせ勝利に導き、やがて２人は信頼を深めて天下統一を目指す。今作は死と隣り合わせの戦国時代を舞台にしたラブストーリーでもある。

「最初の見どころは、輿入れした濃姫と信長の初夜のシーン。口論からつい刀を抜いてしまう信長。しかし濃姫は、信長を投げ飛ばした上に組み従え、足を締め上げ刀の鞘で信長の尻を何度も叩く。

この乱闘シーンについて、木村は『放送では言えない場所に、刀の鞘がバッチンバッチン当たって相当痛かった』といって苦笑。しかもアクロバティックなシーンに濃姫の着物の袖が破れるなどアクシデントの連続。綾瀬の身体能力の高さには、改めて驚かされました」（ワイドショー関係者）

そんな２人の関係に大きな変化が訪れるのが、桶狭間の戦い前夜。負けを覚悟する信長の元を訪れ、“マムシの策”を授けながらいくさの勝利と信長の無事を祈って濃姫が舞う、幸若舞「敦盛」の美しさには目を見張るばかりだ。

「およそ６分に及ぶこのシーン。木村さん演じる信長の芝居に合わせて綾瀬さんの演技もテイクを重ねるごとに徐々に熱を帯びてくる。信長に頼られたことに喜びを感じ、体の内側から輝きを放つ濃姫の笑顔は眩いばかり。合戦シーンがなくとも、２人が心を通わせる素敵な場面となりました」（制作会社ディレクター）

そんな２人に、血湧き肉躍るラブシーンが訪れる。

それは上洛を果たして信長と濃姫の２人が、洛中の祭りをお忍びで散策していた時のこと。買ったばかりの金平糖と巾着を人混みで盗まれた信長は、子供を追いかけて貧しい集落へ迷い込む。

そこで住人たちに襲われ濃姫共々、刃を抜いて大立ち回り。血の修羅場を逃げ延びた２人が興奮状態に陥ったまま演じる“血まみれのラブシーン”は、今作イチの名場面となった。

「世界遺産に登録された仁和寺に隣接する御室八十八ケ所霊場で撮影されたこのシーン。実はスケジュールの関係もあり、血まみれのラブシーンだけ年をまたぎました。’22年、新年の挨拶からいきなり、信長の唇を奪い愛を確かめ合う激しいラブシーンを演じることに、さすがの綾瀬さんも“恥ずかしかった”と告白しています」（前出・ワイドショー関係者）

やがて、人の心を失い“魔王”となっていく信長を止めることができず、濃姫は苦しんだ末に別れを切り出す。ロウソクで埋め尽くされたセミナリヨ（神学校）を思わせる場所での幻想的なシーンは、切なくも忘れがたい。

「信長を演じることに並々ならぬ情熱を傾けてきた木村拓哉と“国民的な女優”綾瀬はるかの２人が演じる今作。タイトルの“LEGEND（信長）&BUTTERFLY（濃姫）”には、時代劇を超えた華やかで絢爛豪華な“ハリウッドの史劇”を狙う東映の新たな意気込みが感じられます。

これまで綾瀬は、ドラマ『奥様は、取り扱い注意』（日本テレビ系）ではスタントマンを使わずにアクションシーンに挑み、大ヒットして映画化もされています。そして大河ファンタジー『精霊の守り人』シリーズ（NHK）では、殺陣やワイヤーアクションに挑戦。英語にも取り組んでおり、今作が大きな注目を集めたらハリウッド進出も夢ではありません」（制作会社プロデューサー）

配信ものとの競合・共存の時代を迎え、岐路に立たされた日本映画界に一石を投じた『レジェンド&バタフライ』。女優・綾瀬はるかとしても、さらなる進化を遂げるチャンスを今作で手に入れたのかもしれない――。