フリーアナウンサー神田愛花『ぽかぽか』メインMCに抜擢の舞台裏と複雑な内心
神田愛花 わたしとピンクと、時々NY【連載】第3回
年始から始まったフジテレビの『ぽかぽか』。ハライチのお二人やスタッフさんたちに支えられ、なんとか私も存在している。伸び代満載の番組で、ステージ裏は毎日とてつもない活気だ。
初めてメインMCのお話を頂戴したのは昨年、まだ蝉が鳴いていた8月下旬だった。打診という感じで、チーフマネージャーとマネージャーの所に、わざわざフジテレビの方が来て下さったそうだ。その直後、私の耳にも入った。
普段から私とマネージャーの間には、「本決まりになった仕事のみ私に伝える」というルールがある。フリーになってこの4月で丸11年。驚くことに芸能界は仮の仕事の依頼がとても多い。フリー転身後7〜8年間は、その仮がばこばこバラシになった。
つまり、入るか入らないかわからないお仕事のためにプライベートの予定を空けておくも、数日前に消えてなくなりまくった。その都度、「私の何が足りなかったのだろう」「他の誰に決まったのだろう」などと考えてしまい、とてつもなく気落ちした。それでは精神的にもたないと思い、いまのマネージャーには私の日々の時間をすべて託す代わりに、相談無しでどんどん仮のお仕事を入れてもらい、本決まりした仕事のみ教えてもらうルールにさせてもらった。
つまり、いつ何処でどんな仕事をするのかは、すべてマネージャーが決めている。私はその決定に絶対NOを言わない約束だ。ところが、今回に関しては打診があった数時間後に私の耳に入れたのだ。
「神田さんすみません、ちょっと話が……。隣の部屋に来てもらえますか?」
と、硬い表情のマネージャー。
「うわ〜、まさかFRIDAYに何か撮られたかなぁ」
と思った。しかし、
「フジテレビの年明けからの新番組のMCを、神田さんにお願いできないかと打診がありまして……」
と言う。当然驚いた。「え!? 私に?」が第一声だったが、すぐさま、ん? 打診? ひと通りマジメ顔のマネージャーから話を聞いた後、
神「それは本決まりの依頼ですか?」
マ「いや、まだ打診の段階で」
神「打診? じゃあ私がいまここで受けますと言ったとしても、確定する話ではないんですよね? それって、私の耳に入れちゃダメなんじゃないんですか?」
マ「え! あ、でも大きな話だったので」
神「いや、だからこそでしょ」
マ「あ、はい」
神「この話、本決まりの依頼が来るまでもう禁止にしましょう」
という事でこの話は一切無しにした。いまだから言うが、正直なところもう気になって気になって仕方がなかった。そんな大きなお話が私に決まるはずがないと思う反面、無くなったら無くなったで傷付くし、他の誰に決まってももう絶対に見たくないと思うと、年明けからの平日の日中をどう過ごしていいかわからなくなって、頭の中がクルックルになった。
その後どうなっているのか本当は聞きたい私。その本心に気づいているけれど何も言わないマネージャー。車移動の際も変な沈黙が生まれるようになった。
バレバレの質問を矢継ぎ早に
そんなこんなで数週間経った時、ついに正式な依頼が来た。あまりに時間が経っていたのでもう別の方に依頼がいっているだろうと覚悟を決めていた頃だったから、マネージャーからその話を聞き、内心ホッとしながらも、無表情で「あーそうですか」とクールに答える。
でも我慢できず、この数週間心の中に溜めてきた思いや疑問がバーッと噴き出た。「いま呼んで下さっているレギュラー番組との兼ね合いは?」「なぜ私に白羽の矢が?」「共に戦って共に死んでいく覚悟はありそうか?」などなど……。めちゃくちゃ考えてきちゃってたじゃん!! とバレバレの質問を矢継ぎ早にした。
『ぽかぽか』がスタートして1ヵ月半。お口に合う方も合わない方もいると思う。だがいまは、良いことも悪いことも何かしら言われていることに意味がある時期だと思っている。私はアナウンサーとしてではなく、プレーヤーとして依頼があった。アナウンサーのお仕事なら学んできたのでできるけれど、ここでは別の一面を求められている。42歳、女、神田愛花。初めての挑戦は続く。
1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 ©下村一喜
『FRIDAY』2023年3月3日・10日号より