「認知症と診断」のブルース・ウィリス 家族が“認知症協会”のサイトで病気を公表した「理由と意義」
映画『ダイ・ハード』シリーズなど数多くのヒット作で知られる米俳優ブルース・ウィリスさんが認知症と診断されたことを家族が2月16日(現地時間)、公表した。ウィリスさんは昨年3月、失語症のために俳優業からの引退を表明していた。病状が悪化して認知症になったという。
ウィリスさんの家族は長文の声明を前頭側頭型認知症協会のウェブサイトに発表して、ウィリスさんが前頭側頭型認知症(FTD)と診断されたことを明らかにした。声明にはウィリスさんの元妻で女優のデミ・ムーア、現在の妻で女優のエマ・ヘミング、そして5人の娘たち全員が署名した。
《辛いことではありますが、ようやく明確な診断がついたことに安堵しています》
としたうえで
《FTDは、私たちの多くが聞いたこともないような、誰にでも起こりうる残酷な病気です。60歳未満の人にとって、FTDは最も一般的な認知症であり、診断を受けるまでに何年もかかるため、私たちが知っている以上にFTDは普及している可能性が高いのです》
と明らかにした。
ウィリスさんは西ドイツ出身。テレビドラマシリーズ『こちらブルームーン探偵社』(‘85年~‘89年)の探偵役で人気が出て、『ダイ・ハード』(‘88年)のジョン・マクレーン役が大ヒットしてシリーズ化された。
ほかに『フィフス・エレメント』(‘97年)、『アルマゲドン』(‘98年)、『シックス・センス』(‘99年)、『アンブレイカブル』(‘00年)など、数多くのヒット作に出演した。
私生活では‘87年に結婚して‘00年に離婚した女優のデミ・ムーアとの間に女優のルーマー・ウィリス、スカウト・ウィリス、タルーラ・ウィリスの3人の娘がいる。
‘09年に再婚した現在の妻で女優のエマ・ヘミングとの間には、マーベル、エブリンの2人の娘がいる。
それにしても、認知症というセンシティブな病だけに、あまり公表したくないようにも思える。病状の詳細まで明らかにした理由は何だったのか。
しかも前頭側頭型認知症協会のウェブサイトで発表というのも異例だ。その答えは家族が声明文の中で明らかにしている。
《現在、この病気に対する治療法はありませんが、私たちはこの現実が今後変わることを望んでいます。ブルースの病状が進むにつれ、メディアの関心が、より多くの認識と研究を必要とするこの病気に光を当てることに向けられることを願っています》
そして
《ブルースは常に人生の喜びを見出しており、彼の知る全ての人がそうなるよう手助けをしてきました。そのケアの感覚が彼や私たち全員に返ってくることは、とても意味のあることです》
と声明文を締めくくっている。
ウィリスさんの家族は昨年3月、インスタグラムで
《私たちの愛するブルースがいくつかの健康上の問題を経験し、最近、認知能力に影響を及ぼしている失語症と診断された》
としたうえで俳優を引退することを明らかにしている。
「ハリウッドのセレブは自身の病状をSNSで公表することは珍しくなく、カナダ出身の歌手ジャスティン・ビーバーは‘19年3月に米誌『ヴォーグ』で‘17年のツアー中に14公演を中止したのはうつ病になっていたことが原因だった公表しました。
また‘20年に感染症のライム病と診断されたことを明かしたほか、昨年6月、インスタグラムでラムジーハント症候群と診断され、その影響で顔の右側が顔面神経麻痺になっていることを公表しています。右目が開かない顔の写真を投稿して《顔のエクササイズをしており、仕事をすればすべてが正常に戻るだろう》と明らかにしましたね」(スポーツ紙記者)
また、女優で歌手のセレーナ・ゴメスは‘17年に全身性 エリテマトーデスの治療のため腎臓移植を受けたことを公表。アカデミー賞主演男優賞を2度受賞している名優のトム・ハンクスは‘20年3月11日、妻のリタ・ウイルソンと共に新型コロナウイルスに感染したことをハリウッド俳優として初めてSNSで報告している。
いまだ治療法のない前頭側頭型認知症の認識と研究のため、協会のウェブサイトで病を公表したウィルスさんとその家族。その決断と勇気に心から拍手を送りたい――。
- 文:阪本良(ライター)
- 写真:Backgrid/アフロ