<figure id="attachment_299741" aria-describedby="caption-attachment-299741" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="56f57f9f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/0335.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299741" class="wp-caption-text">震災直後の宮城県気仙沼市の様子。大型船が津波により内陸まで押し上げられた</figcaption></figure>
<p>あれから12年――。</p>
<p>2011年３月11日に起きた東日本大震災から長い年月を経たが、多くの人々にとっては決して忘れられない出来事だろう。東北地方を中心に震度６強の揺れが襲い、地震の規模は日本の観測史上最大となるマグニチュード9.0。震災関連死を含めると、亡くなった方や行方不明者は２万人以上にのぼる。</p>
<p>『ＦＲＩＤＡＹ』は震災発生直後から、被災地に入り凄惨な現場の状況を伝えてきた。2011年４月１日号では、10ｍを超える巨大な津波にのまれながら奇跡の生還をはたした70代の夫婦の実話を報じている。再録記事から、自然災害の恐ろしさをあらためて実感していただきたい（内容は一部修正しています）――。</p>
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<p>東北地方には、住民約１万5000のうち１万人もの人々が安否不明となった街もある。建物は鉄筋コンクリート製の数軒を残し、大半が破壊され高さ10ｍにおよぶ巨大津波に流されてしまったのだ。</p>
<p>絶望的な状況から、奇跡的に生還した人々もいた。岩手県釜石市で被災した70代の男性Ａさん（当時）も、その一人だ。以下、Ａさんが語った生々しい津波の脅威である。</p>
<p><span class="strongInContent">「凄まじい揺れに驚き、慌てて自宅から外に出たんです。すると海岸のほうから、水が流れて来るのが見えました。水量は少なく透明だったと思います。私は家の中にいる妻に向かい、こう言いました。『水が来たぞ。外に出ろ！』と」</span></p>
<h2>ゴゴゴゴゴという恐ろしい地鳴りの先には……</h2>
<figure id="attachment_299743" aria-describedby="caption-attachment-299743" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b33e87d2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/0251.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299743" class="wp-caption-text">宮城県気仙沼市の海岸近くの大通りには打ち上げられた漁船が</figcaption></figure>
<p>その直後だ。ゴゴゴゴゴと恐ろしい地鳴りがしＡさんが音のする方向を見ると、空を覆うほどの高さの巨大津波が、電柱や木をなぎ倒しながら迫って来たのである。</p>
<p><span class="strongInContent">「車より速いスピードで、津波は近づいてきます。私たち夫婦は逃げる余裕もなく、アッという間に津波にのみ込まれてしまいました。凄まじい勢いで流され、水面から顔を出すのがやっとです。『もうダメだ。このまま死んでしまうのか』。</span></p>
<p><span class="strongInContent">そう思った時、目の前に近所の見覚えのある家の２階の窓が見えました。私は必死に窓枠に掴まり屋内に入ったんです。しかし濁流の中には、まだ妻がいます。無我夢中で周囲を探すと、流されている人々の中に畳に掴まっている妻を発見しました。私は室内にあったバスタオルをロープ代わりに、近づいてきた妻へ向かって投げたんです」</span></p>
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<p>幸いＡさんの奥さんはロープを掴むことができ、室内へ引っ張られた。</p>
<p><span class="strongInContent">「窮地を脱した私たちでしたが、恐怖と寒さでしゃべることもできません。しばらくは無言で、ただブルブルと震えていました」</span></p>
<p>Ａさん夫婦は身体を温めるため、ズブ濡れの服を脱ぎ全裸で抱き合った。身体が温まると、タンスの中にあった若い女性の服を着て水が引くのを待つ。避難所に指定された中学校の体育館に向かったのは、夕方になってからだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「避難所では、私たちが逃げ込んだ家の家族にも会いました。私が『娘さんの服を勝手にタンスから出して着てしまい申し訳ない』と謝ると、彼らは『助かったなら何よりです』と笑っていました。避難所での食事は３回ありましたが、おにぎりが２人で一つなどひもじい思いをします。しかし、夫婦そろって生きのびられたのですから本当に良かった……」</span></p>
<p>多くの尊い命を奪った超巨大地震の被災地では、Ａさん夫婦のような生還劇もあったのだ。【後編：巨大津波で生死を分けた40代男性の一瞬の判断】では、10秒の差で命びろいした被災者の実話を紹介したい。</p>
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<p>【<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/299762">後編：巨大津波で生死を分けた40代男性の一瞬の判断</a>】</p>
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<figure id="attachment_299744" aria-describedby="caption-attachment-299744" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="97e14e6c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/HK2_0053.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299744" class="wp-caption-text">宮城県の仙台空港近くにある航空大学校も水没。学生や近隣住民はボートで救出された</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299745" aria-describedby="caption-attachment-299745" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a3518f70"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB1_2505.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299745" class="wp-caption-text">町民約１万7600人のうち１万人と連絡が取れなかった宮城県南三陸町。不気味な静寂につつまれていた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299747" aria-describedby="caption-attachment-299747" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8924345e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/240_r.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299747" class="wp-caption-text">岩手県大槌町の小学校敷地内で自動車の下敷きになった男性を救出しようとする自衛隊員</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299746" aria-describedby="caption-attachment-299746" style="width: 1804px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="44066cd5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/IMG_8084.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299746" class="wp-caption-text">宮城県仙台市で被災者の救出にあたるヘリコプター</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299749" aria-describedby="caption-attachment-299749" style="width: 3765px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8ff94e76"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/DSC_8656-bw.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299749" class="wp-caption-text">岩手県釜石市内の鉄橋には津波で流された自動車が逆さまに</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299748" aria-describedby="caption-attachment-299748" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5df48f6d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/IMG_2400-4c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299748" class="wp-caption-text">宮城県東松島市内の小学校には多くの遺体が安置されていた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299750" aria-describedby="caption-attachment-299750" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9d65935e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/KB1_2523.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299750" class="wp-caption-text">壊滅した宮城県南三陸町では母子らしい女性２人が途方にくれていた</figcaption></figure>


郡山総一郎　小檜山毅彦　結束武郎　幸多潤平　川柳まさ裕　嘉納愛夏　山田宏次郎　菊池雅之　小野一光

３月11日で東日本大震災が発生してから12年が経つ。多くの人にとって忘れられない記憶だろう。中には10ｍ超の巨大な津波にのみ込まれながら奇跡の生還を果たした被災者もいる。当時取材した実話を再録したい。

「車より速いスピードに『もうダメだ』」…東日本大震災「10ｍの津波から生還した」70代夫婦の実話

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