<h3>「ズルいことだ」だと禁止するべきか？ 「活用して何ができるかを考える」を教えるべきなのか…</h3>
春休みの宿題問題のほか、入学や進級前に子どもに学年度末の復習をさせておきたいと思う保護者も多数いるだろう。
そこで考えたいのが、今話題の「ChatGPT」で宿題をするのがアリかナシかという問題。
ChatGPTとは‘22年11月にOpenAI社が開発したチャットボットで、最大の特徴は「生身の人間を相手にするようなリアルな会話形式でやり取りができること」。すでに大学生の論文やビジネスパーソンのレポートなどに使えるのかの議論なども盛んに行われている。
<figure id="attachment_301594" aria-describedby="caption-attachment-301594" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cd3823f2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/aflo_168290793.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301594" class="wp-caption-text">「デジタルネイティブ、AIネイティブで育つ世代が大学入試を受ける頃には、むしろChatGPTは使いこなして当たり前で、それでも答えが出ない問題について出題されるのが入試の大前提になっていくのはほぼ間違いないと思います」と笹埜氏</figcaption></figure>
では、子どもの宿題を、ChatGPTを使ってやることのメリットとデメリットとは？　世界経済フォーラム（WEF）のメンバーやSDGsを教育や経営に応用するためのサステナビリティ学の提唱者の一人として、SDGs/ESGデータサイエンスの新技術を研究・開発する天才集団を率いるサステナビリティ学者の笹埜健斗氏は言う。
「ChatGPTのメリットはなんといっても便利さ。例えば、東大の二次試験レベルでも対応できます。 
実際、僕も世界史問題で『マキャヴェッリが“君主論”で述べた主張について2行以内で説明せよ』という問いを試してみましたが、高校レベルであれば十分高得点がもらえるんじゃないかという文章が出てきました。 
基本的には『文章を書く』『要約する』ことなどが得意で、『日記を書いて』『小説を書いて』といったことも創作でできます。ただし、倫理感がないので、やってはいけないことがわからないという問題はあります」 
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試しに「小学3年生の夏休みのある1日の日記を書いて」と言うと、以下の文章が出てきた。
「今日は夏休みの中で1番楽しい日の1つ！朝、家族で海に行くことになりました。 
朝は早起きして準備をしました。お母さんがおにぎりやサンドイッチを用意してくれたので、それを持って車で海へ向かいました。車でのドライブも楽しかったです。 
海に着いたら、さっそく水着に着替えてビーチに出ました。海水はひんやりしていて気持ち良かったです。お父さんが浮き輪を持って来てくれたので、海で遊ぶのが更に楽しくなりました。 
お昼ご飯は、持参したおにぎりやサンドイッチを食べました。お母さんが冷たいジュースも用意してくれたので、海の近くで食べるのがとてもおいしかったです。午後はビーチで遊んで過ごしました。海で遊んだり、砂浜で遊んだり、お父さんとキャッチボールをしたり。夕方には美味しいかき氷を食べて、夜は花火大会もあると聞いて、とても楽しみです。 
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夏休み中はたくさん遊んで、友達ともたくさん遊んで、楽しい1日を過ごしています。明日も楽しみです！」
ちゃんと「小学生」「夏休み」を踏まえて家族のレジャーを詳しく書いている。構成もしっかりしていて、「更に」を漢字で書けるのに、「たくさん遊んで」が重複したり、「明日も楽しみです！」と無邪気に締めたりするあたりのアンバランスさに、「子どものフリをした大人が書いた」臭さはちょっとあるが、それでも十分な出来だ。
<h3>「考える力がつかない」「リテラシーが身につかない」という危険性</h3>
ChatGPTを宿題に使う上で、できることと、できないこととは？
「まず、現時点では、2500字程度を超える長い文章は入力できません。 
逆に、仕組み的にそこまでたいした論文には使えないから、重大な不正には至らない点が安心とは言えるでしょう。 
ただし、API連携（APIを利用してアプリ間やシステム間でデータ機能を連携し、利用できる機能を拡張すること）でお金を払えば技術者たちが自由に使えるという仕組みにしているので、今後より改良されて長い文章が作れるようになるのは時間の問題でしょう。 
それは裏を返せば危険性でもあり、宿題に使う上で『考える力がつかない』『リテラシーが身につかない』という危険性についての指摘はもっともな部分もあります」
そもそも「ChatGPT」はOpenAI社のGPT-3.5モデルを採用し、契約社員として集められた40人程度の「AI設計チーム」が「〇〇についてはこう答える」といった文章を書く形式で強化学習（RLHF）を用いて学習させ、人間らしく応答するようにしたもの。
日本語版は英語版で作られたオリジナルを日本語訳するため、英語で問うときよりも翻訳に最大20秒程度時間がかかると言う。
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「ChatGPTはありとあらゆるwebページから答えを取って来て構成してくれる仕組みですが、宿題は悩みながら読み書きし、添削してもらいながら修正し、学んでいくことに意味があるはずですよね。 
それに、間違えることの大切さを語る親御さんは多いですが、ChatGPTを使って間違った答えを出しても、『それはAIが導き出しただけ』という言い訳ができてしまう。 
『こういう嘘をついたらダメなんだ』とか『人の文章を勝手にとってきたらダメなんだ』ということは教えられないんです」 
<h3>精度が高い答えを導く『“プロンプト”エンジニア』のレッスンになる</h3>
その一方で、これまでの検索エンジンとの違い、可能性について笹埜氏はこう語る。
「Google検索の場合、検索の単位が単語でしたが、ChatGPTでは文章、文脈で検索できるようになりました。これは単にビジネスモデルが変わったということではなく、検索の仕方によって大きな差がつくこと。 
僕はこれを『文系がエンジニア領域に活躍の道を拓ける可能性』だと思うんです。 
だからこそ、危険性を分かった上で活用していけば良いし、むしろ乗りこなさなければ、社会に出たときに飲み込まれてしまう1つのキーワードではないかと思います」
使用方法について笹埜氏が着目するのが、「プロンプト（呪文）＝ChatGPTで質問をするときの文章」だ。
「どのように質問するかで、出てくる文章が全然違うんです。『詳しく書いて』『小学生でもわかるように書いて』など、少し修飾するだけで答えが大きく変わってきますし。ChatGPTで求める答えをいかに精度高く出せるようにするかはプロンプト次第、今まさに問われているのは、国語力なんですよ。 
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エンジニア界隈でAIの思考を人間が助ける『プロンプトエンジニア』と呼ばれる領域が今後求められていくと思います。 
最先端の技術を使っても、アウトプットが面白くなるか、つまらない、ありきたりな文章になるかは、結局使う人の文章力に左右されるので、うまく聞き方を組み合わせて良い答えが出てくるようにすることが必要で、それで宿題が片付くのであれば、それはそれでいいのではないかと思います」 
<figure id="attachment_301595" aria-describedby="caption-attachment-301595" style="width: 740px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="02522edb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/main-1.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301595" class="wp-caption-text">LINEリサーチの調査によると「ChatGPT」の認知は全体では約3割、男性20代・30代では4割超だった（実施時期：‘23年3月6日～7日、調査対象：日本全国の15歳～69歳の男女、有効回収数：1,056サンプル）</figcaption></figure>
<h3>宿題で使う時に必要な「二つのルール」</h3>
使う上では当然「ルールをつけること」も必要だ。
「一つは、出典、ソースをはっきりさせること。 
研究者の論文は当たり前ですが、必ずweb上のどこかから取ってきている文章になるので、特に事実について説明する場合は、誰の論文か、どこの記事をソースにしているかを必ず聞くことを各ご家庭で口を酸っぱくして指導していただければ良いのではないかと思います。 
もう一つ、ChatGPTが『間違える』ことも覚えておかなければいけないこと。 
例えば大学生がレポートに使う場合、大まかな下調べとしてChatGPTでテーマや用語ごとに読むべき論文10選などを検索するとして、そこで出てきたものが本当に正しいかは出典元の論文をたどって調べることなどが必要です」
ChatGPTは表を作ることなどもできるため、例えば中学の中間テスト直前対策などで、5教科について単元ごとなどに小テストを作ることも可能という。
ただし、ChatGPTの活用に関しては子供の発達にどんな影響を与えるのか、何歳から使い始めると危険がないのかなど、まだまだ教育の世界ではわかっていない。
今後は文科省や教育委員会などを中心にガイドライン作りのプロジェクトが進んでいって欲しいと笹埜氏は言う。
<h3>デジタルの奴隷になるか、デジタルルールメーカーになるのか…</h3>
「ChatGPTの存在によって、今後入試が変わるのは間違いないと思います。 
使って良い・使ってはいけないという議論で終わらず、将来的にはChatGPTで簡単に答えが出るような問題ではなく、もっと考えさせる問題、資料を読み込んで自分の考えを言わせる問題などが増えていくでしょう。 
デジタルネイティブ、AIネイティブで育つ世代が大学入試を受ける頃には、むしろChatGPTは使いこなして当たり前で、それでも答えが出ない問題について出題されるのが入試の大前提になっていくのはほぼ間違いないと思います」
子どもがChatGPTを宿題に使う場合、保護者が注意したい点もある。
「宿題を何のためにするかというと、自分で考えるため、定着させていくため。AIができるのはあくまでもデータを切り分け、あるいは集めて、インフォメーション（情報）にすることだけで、インフォメーションをナレッジ（知識）に変えていことはできない。そこは我々人間の問題領域です。 
僕はよく『物知りのお友達が中にいると思って』と例えるんですが、知りたいことについて聞くと、一生懸命構成してくれるけど、間違えることもある。でも、コミュニケーションをしていくことで、正しい知識が増えていく。 
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単に『使ってはいけない』と止めるのではなく、親御さんも一緒に試しながら、遊びながら、使う上でのガイドライン作りや家族でのルール作りをしていくのが良いと思います。 
今は、デジタル奴隷になるのか、デジタルルールメーカーになるのかの過渡期。親子で一緒にコミュニケーションをしながら興味のあることを調べてみる。家族旅行を一緒に計画してみるなども良いですね」
<figure id="attachment_301830" aria-describedby="caption-attachment-301830" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c3bdfbe8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/b584c208de7b4b8b2fe82f3ad38aabaa.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301830" class="wp-caption-text">「ChatGPTの存在によって、今後入試が変わるのは間違いないと思います」と笹埜氏</figcaption></figure>
笹埜 健斗（ささの・けんと）サステナビリティ学者・SDGsコミュニケーター・実業家。SDGs（持続可能な開発目標）を経営や教育に応用するためのサステナビリティ学の提唱者の一人。高校時代に生死の境を彷徨い、哲学に目覚める。国際哲学オリンピック出場、京都大学法学部、東京大学大学院学際情報学府を経て、一般社団法人サステナビリティ総合研究所（サステナビリティ総研）所長、株式会社Scrumy代表取締役。現在、持続可能な社会の実現に向けた調査研究やSDGs経営・SDGs教育プログラムのための技術開発に取り組んでいる。

1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）、『KinKi Kids　おわりなき道』『Hey! Say! JUMP　9つのトビラが開くとき』（ともにアールズ出版）など。

田幸和歌子

春休みの宿題問題のほか、入学や進級前に子どもに学年度末の復習をさせておきたいと思う保護者も多数いるだろう。そこで考えたいのが、今話題の「ChatGPT」で宿題をするのがアリかナシかという問題。

「子どもの宿題」ChatGPTを使うのはアリかナシか…データサイエンスの専門家に聞いてみた

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