「必ず母をラクにしてやる」…WBCの女房役・甲斐拓也が語っていた「自身を恥じた」毎晩のグチ電話 | FRIDAYデジタル

「必ず母をラクにしてやる」…WBCの女房役・甲斐拓也が語っていた「自身を恥じた」毎晩のグチ電話

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’92年、大分県生まれ。小学1年から野球を始める。’17年には育成選手出身として、史上初のゴールデングラブ賞とベストナインを受賞
’92年、大分県生まれ。小学1年から野球を始める。’17年には育成選手出身として、史上初のゴールデングラブ賞とベストナインを受賞

大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希、ダルビッシュ有……。

WBC侍ジャパンには、そうそうたる投手がズラリと顔をそろえる。その豪華ピッチャー陣を支えるのが女房役の甲斐拓也(30)だ。甲斐の代名詞といえば、球界随一の強肩「甲斐キャノン」だろう。

「最速1.7秒で2塁へ送球できるんです。各国の走者も甲斐の肩を注視し、そう簡単には盗塁できません。投手にとって甲斐は頼もしい存在でしょう。リードも一人よがりにならず、常に投手と事前に相談して配球を決めているそうです」(スポーツ紙担当記者)

日本を代表する捕手となった甲斐だが、プロ(ソフトバンク)へは育成選手として入団した。1年目の出場は3軍戦のみ。そんな甲斐は、どうやってゴールデングラブ賞6回、ベストナイン3回を受賞するほどの一流選手となったのだろうか。『FRIDAY』は’18年12月7日号で甲斐をインタビューしている。当時の記事を振り返り、常にネガティブだった甲斐が覚醒する過程を紹介したい(内容は一部修正しています)――。

ノムさんとの数々の共通点

マメだらけの左手。「連日素振りを繰り返す春先はマメが潰れて血まみれ状態です」と語っていた
マメだらけの左手。「連日素振りを繰り返す春先はマメが潰れて血まみれ状態です」と語っていた

甲斐が「師匠」と尊敬するのは、ホークスの大先輩捕手・野村克也氏だ。野村氏の著作は、座右の書としてほぼすべて読んでいるという(以下、発言は甲斐)。

「野村さんの本には、捕手の極意が書かれています。感銘を受けたのが『失敗には必ず原因がある』という言葉です。捕手は守備の要。負ければ全責任があります。だから試合後は、すべての配球をチェックし直し、なぜ打たれたのか徹底的に考える。

気づいた点はノートに書き残し、繰り返し反省しています。ネガティブでないと捕手はできません。勝てるのは投手のおかげ。『功は人に譲れ』というのも野村さんの言葉です」

野村氏と甲斐には共通点が多い。ともにプロ野球選手としては小柄(甲斐は身長170cm)で、母子家庭育ち。支配下登録外の育成選手から這い上がり、正捕手の座を摑みとったのも同じだ。

「入団4年目ぐらいまでは、本当にしんどかったですね。高校時代(大分県の楊志館高)は守備に自信があったんですが、プロに入り他の選手との力の差に愕然とした。コーチからは『(育成選手の)背番号3ケタはプロじゃないぞ。悔しかったら2ケタを勝ちとれ』と厳しく言われ、心が折れそうになり毎晩のように母に電話しグチを聞いてもらいました」

転機となったのは、プロ入り5年目での広島とのオープン戦だ。

「ボクがパスボールしサヨナラ負けを喫したんです。その前年は2軍で58試合に出場し、パスボールはリーグワースト2位の4つ。母には『もうクビになるかもしれん』と話しました。母は『ツラかったら帰っておいで。いつでも母ちゃんは味方やから』と言ってくれて……。

母は昼にタクシー運転手、夜はパチンコ店の清掃をしながら、女手一つで兄とボクの2人を育ててくれた。そんな母を心配させていることが、恥ずかしくなりました。それからは『プロで活躍し必ず母をラクにしてやろう』という思いで、野球に取り組んでいます」

甲斐は休日返上で練習を続け、誰もいなくなってもグラウンドで居残りする。帰宅してもテレビをつけず、タブレットで対戦した打者や他チームの捕手を研究。実力をつけ日本シリーズMVP(’18年)を獲得するまでの選手になる。

球界ナンバー1捕手となった甲斐が、守備につくたびに行っている習慣がある。ホームベース付近の土をならし、一筆ずつ丁寧に指で「心」という文字を書くのだ。

「2つ意味があります。1つは、成功した今の状況を当たり前だと思いたくない『心』。背番号が3ケタの『130』で、母親を心配させてしまったツラい育成選手時代を忘れたくないんです。

2つ目が野村さんの本から学んだ、謙虚な『心』。工藤公康監督(当時)からは、よくこう言われています。『キャッチャーで大事なのは気持ちだ。自分は前に出ず投手を勝たせてやろうという心を忘れてはいけない』と」

謙虚な心があるからこそ、甲斐は成長を続けられる。一流投手たちが、安心して甲斐のミットへ投げ込めるゆえんだろう。

「腰もヒザも股関節も痛いところだらけ。シーズンが終わっても回復していません」
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「母をラクにしたい」という思いから人一倍練習したという甲斐
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  • PHOTO繁昌良司

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