フリーアナウンサー神田愛花「眉毛の形は大きな心境の変化の表れ」

２０２３年２月８日水曜日。私は３年ぶりに眉毛の形を大幅に変えた。報道っぽい角張った太眉から、バラエティっぽい緩いカーブの細眉に変えたのだ。……なんだその話、どうでもいいよ……と思ったあなた。ノン、ノン、ノン。女性にとって眉毛の変化は大きな心境の変化の表れなのだ。

昨年、『ゴゴスマ』＆『報道ランナー』でコメンテーターを務めさせていただいたが、今年１月から『ぽかぽか』のＭＣを担うことになり、この２番組は時間的に出演が叶わなくなった。今は、『スッキリ』と、数ヵ月に一度、『ワイドナショー』や『ビートたけしのＴＶタックル』に呼んでいただいている。何かの専門家ではない”ただ者”の私に貴重な一席を託してくださるなんて、有り難すぎる。期待に応えるべく、本番前日の夜か当日の朝には必ず３時間ほどかけ、番組で扱うニュースの周辺情報を調べて自分の意見をまとめる。

日本では非難されているが海外ではどう受け止められているのか、何故このタイミングでそんなことが起きたのかという背景や時系列など。内容によっては関係する法律まで調べることもあるが、この作業、体の中に新しい知識がグンッ！　グンッ！　と音を立てて吸収されていく感じがして、非常に楽しく興奮するのだ。

時に全身タイツを着てアントニオ猪木さんのモノマネもしている私は、コメンテーターとバラエティ番組のお仕事の違いは？　とよく聞かれる。それは、事前にどのくらい具体的な準備ができるか、それをどのくらい発揮できるか、だと感じる。コメンテーターのお仕事は、前もって自分の発言を固めておけるし、「神田さんはこのニュースをどう思いますか？」と司会者が順番に聞いてくれて、発言の機会が必ず与えられる。

一方、バラエティ番組は真逆だ。大まかなトークテーマは決まっているが、別の話でも盛り上がればそれでＯＫ。「ほいで？　神田はどうやねん!?」と司会者から名指しされなくても自ら喋り出すことを求められ、だからこそ誰がいつ何を言い出すかわからない。つまり、すべてが予測不能で、何をどこまで準備したらいいのかさっぱりわからないのだ。中学＆高校時代は生徒会長、大学は数学科出身のゴリゴリの理系で理屈っぽく、挙げ句の果てに堅さの極みであるＮＨＫ出身の私。言わずもがな、前者の仕事のほうが性に合っていた。

そこである時、コメンテーターとして説得力が増すよう「見た目も工夫だ！」と、女・西郷隆盛と言わんばかりの角張った太眉にした。存在感があり、芯の強さとブレない精神を醸し出す、見事な報道眉。完璧だ。見た目から入るなんて……と言われそうだが、それこそが「コメンテーターのお仕事を頑張るぞ！」という強い決意の表れだった。

加藤さんに挑むための盾と刀

お陰様で年々居場所を増やすことに成功。昨年秋には『スッキリ』にも呼んでいただけるようになり、ＭＣの加藤浩次さんの鋭い眼光を、凛々しい報道眉でなんとか受け止め、しがみついてきた。というのも『スッキリ』は、ニュースに対する意見を述べるだけでは終わらないからだ。「〜なので私はこう思う」という意見に、加藤さんが「でもそれは難しくないですか？」など、一歩踏み込んだ質問をしてくる。議論をする感覚で挑む気持ちが必要だった。だからこそ強めの報道眉が心の支えとなり、いつの間にか精神的盾かつ刀のような存在になっていた。

その眉を、３年ぶりに、真逆のバラエティ眉に変更した。これは本当に大変な出来事なのだ。

決め手は、『スッキリ』がこの３月で終わってしまうことだった。毎日行く『ぽかぽか』では報道眉が凛々しすぎて、ぽかぽかした表情に映っていない気がした。眉だけが前に出ちゃっているというか、貼って付けた眉に見えるというか。とにかくＴＰＯに合っていない眉に見えた。

現場で一緒に頑張ってきた報道眉に恥をかかせるなんて、不憫で仕方がない。なので……これも親心。いっそのこと『スッキリ』と共に卒業させよう。気持ちを固め、メイクさんに「『ぽかぽか』の雰囲気に合うように、眉毛を細くして緩いカーブにして下さい」と申し出た。

こうして２月８日のお昼、私の新しいバラエティ眉が世に放たれたのだった。

1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』（フジテレビ系）にメインMCとしてレギュラー出演中

『FRIDAY』2023年3月31日・4月7日号より