バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版

島 右近

<figure id="attachment_303821" aria-describedby="caption-attachment-303821" style="width: 1852px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="671f2c51"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/7b9e9a9ec4fff15dc42bfb01d2f978cb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303821" class="wp-caption-text">ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』でヒロインを演じた広瀬すず</figcaption></figure>
女優・広瀬すず主演の火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』（TBS系）の最終回の放送が終わり１週間が経った今も、その余韻はますます広まるばかり。伏線回収や名言の数々にも注目が集まっている。
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このドラマは、九州の片田舎で育った野生的でチャーミングな空豆（広瀬）が都会で育った男の子・音（永瀬廉）と運命的な出会いを果たすことから始まる青春ラブストーリー。最終回では、交差点ですれ違いざまにぶつかりAirPodsを落とした空豆と音が、再び初めて出会った交差点で再会。
この出会いから、２人の物語は始まっていたのだと気付かされる伏線回収劇は、見応え十分。ポスターのキャッチコピー
「とっくに恋に落ちていた」
が心に刺さるエンディングとなった。
しかし心に刺さったのは、空豆と音のラブストーリーばかりではない。最終回では母・塔子（松雪泰子）と共にパリに旅立っていた空豆が、3年後に九州の実家に戻っていることを知り、師でもあるデザイナーの久遠徹（遠藤憲一）が、空豆の元を訪ねる。
「もったいない。せっかく、パリで成功を収めたのに」
と言って、東京に戻ることを勧める久遠。しかし空豆は
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「何のために、誰のために作っとるのかようわからんくなってしまった。作ることにトキメかなくなってしまった」
と苦しい胸の内を打ち明ける。さらに空豆は
「人生を戦うために生まれて来た人と、楽しむために生まれて来た人がおる」
「おいは、楽しむために生まれてきた。先生とは違う」
と思いを口にする。それに対して、久遠が放った
「どう生きたって楽しいだけなんてあるわけがない。楽しみながら戦うんだよ」
のコメントが、大勢の視聴者の心を捉えた。
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「久遠役を演じた遠藤は、今作が北川作品初出演。撮影に入る前に北川さんと会い、様々な話をしています。その時の印象について『自由な人だった』。さらに『北川さんの自由さは、もがき、戦い掴んだ自由さだと分かった』『ラブストーリーにそんな思いをわずかに響かすのが、俺の役かもしれない』と話しています」(制作会社プロデューサー)
デザイナーやミュージシャンなど、〝モノ作り〟に携わる人がたくさん登場する今作の中には、〝モノ作り〟の最前線で30年以上、戦ってきた脚本家・北川悦吏子の経験から生まれたセリフが散りばめられている。
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「絵描きでもある雪平響子（夏木マリ）の『モノを作るってのは、人間がいっちばん遠くまで行ける手段なんだよ』と言って、パリに旅立つ空豆の背中を押す。しかしその一方で、世界のトップデザイナーとして活躍する母・塔子が、幼い自分を捨てて出て行ったことから『遠くの人を楽しませる人は、近くの人を悲しませる』と空豆にさりげなく語らせる。
今作は、今までの北川作品とはひと味もふた味も違う。単なる青春ラブストーリーとは違う、味わいがにじみ出ています」（前出・プロデューサー）
北川はドラマの公式HPのインタビューにおいても、「アイディアは美しい」。しかし
「新しいことをすると必ず軋轢が生まれるし、覚悟も試される」
その上で
「常識に囚われすぎず、これまでにないような新しい試みにも誰かが取り組んでいかないと、吸引力はなくなるし〝作る側の人間になりたい〟って憧れる人もいなくなってしまう」
と、〝アイディアへの挑戦〟でもあった自身の脚本家人生を振り返っている。
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そんな北川さんが、３月７日にツイッターで気になる発言をしている。
《私は、しばらくホン（シナリオのこと）書かないと思います。諸事情あって。書くとしてもずいぶん先かと思います。
今日の#夕暮れに手をつなぐ８話。私はこの回が書けただけでも、このドラマをやったかいがあると、》
これは、伝えられる体調不良が原因なのか。それとも『Beautiful Life』や『オレンジデイズ』でタッグを組んだ植田博樹プロデューサーが言う
「命を燃やし尽くすような勢い」
で書き切った後の”燃え尽き症候群”の影響なのか。
ところが３月27日のツイッターでは、こんなコメントもつぶやいている。
「ふと、本当にふと、ポツリと雨が一滴だけ降ってきたように、あ、こんなの書きたいかも、がやってきた。
こんなシーンはどう?がやってきた。それはまだ見ぬ作品の話。しばらく、夕暮れロスだった」
新しいラブストーリーの大河の一滴が、早くも降りて来たのか。〝モノ作り〟の素晴らしさ、厳しさをラブストーリーに響かせた今作。それを超える、次回作を是非期待したい。

バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

島右近（放送作家・映像プロデューサー）

近藤 裕介

広瀬すずと永瀬廉が演じ、大きな反響で終わったドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』。脚本家の北川悦吏子はその後、「しばらくは書かない」というほど、魂を込めた作品で…

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