コロナの閉塞感をうまく逆手にとり…「クズ」&「ド痛」芸人の台頭のワケと見逃せないリスク
連載 スタッフは見た!週刊「テレビのウラ側」Inside story of Television
高校生を対象とした「これからブレイクしそうだと思うお笑い芸人」(『LINEリサーチ』調べ)で、『さや香』が男女部門ともに1位に輝いた。
「昨年の『M-1グランプリ』で準優勝した勢いあるしゃべくり漫才が武器で、『NHK上方漫才コンテスト』で優勝するなど、賞レースでは早くから存在感を出していました。『M-1』以降は、ツッコミ担当の新山(31)の自信満々な”ド痛キャラ”が受け、トーク番組に呼ばれる機会が増えています」(放送作家)
コロナ禍で『ぺこぱ』の”人を傷つけない笑い”がブームになっていたが、感染状況が落ち着いてきたからか、『空気階段』鈴木もぐら(35)や岡野陽一(41)ら”クズ芸人”たちが台頭。そこに続く新勢力として、新山のような”ド痛芸人”がテレビ界で注目されているという。
「件(くだん)の『これからブレイクしそうだと思うお笑い芸人』の調査で、女子高生の票を3番目に集めた『コットン』の西村真二(38)は、小学生の時に水泳でジュニアオリンピック選手になっており、大学生時代には『ミスター慶應コンテスト』でグランプリを受賞。
その後は広島ホームテレビでアナウンサーとして活躍するなど、輝かしい経歴の持ち主。清々しいほど自信満々で”経験人数は300人以上”といったイケているエピソードが痛くて武器になっています。芸人は学生時代に地味だった”陰キャ”が多いので、最近の若手には少ない”陽キャ”なのも新鮮ですね。
”ド痛”ではないですが、ギャル芸人の『エルフ』荒川(26)が売れたのも、閉塞感のあったコロナ禍の反動だと思います。自粛続きだった日本人の間で”弾けたい願望”が高まっているからだと言われています」(制作会社ディレクター)
コンプライアンスの強化で、「安心安全」な番組が増えたことへの反動もあると、キー局プロデューサーは見ている。
「制作サイドはもちろん、視聴者も”傷つけない笑い”だけでは満足できなくなっている印象を受けます。かといって、平成中期のような過激な演出はできない。そこでコンプライアンス的にギリギリOKなクズ芸人やド痛芸人のような”腫れ物イジり”の需要が高まっているんです」
前出の放送作家は「テレビで起用される”ド痛芸人”たちは愛されキャラかどうかが重要」だと指摘する。
「ただ痛い、勘違いしているだけだと、見る側も不快ですからね。お見送り芸人しんいち(37)も、実は人たらしで他の事務所の先輩からも可愛がられていますし、『水曜日のダウンタウン』の藤井健太郎プロデューサー(42)に激ハマりしています。代表的なのが狩野英孝(41)。これまで8股疑惑など様々な女性問題を起こし、未成年女性と交際して活動自粛に追い込まれたこともあります。それでも見事に這い上がってこられたのは、彼の人柄ゆえ。天然でどこか憎めないキャラクターが演者にもスタッフにも愛されているからです」
”痛さ”ゆえの注意点もある。
「本気で勘違いしているぶん、スキャンダルを起こすリスクがある。実際、お見送り芸人しんいちは既婚女性との不倫報道が出ました……」(広告代理店関係者)
痛いのは芸風だけにしておいたほうがよさそうだ。
『FRIDAY』2023年4月14日号より
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- PHOTO:足立百合