まさに知る人ぞ知る店…新宿・歌舞伎町でホストやキャバ嬢たちが本音で語り明かす「羊肉の名店」とは | FRIDAYデジタル

まさに知る人ぞ知る店…新宿・歌舞伎町でホストやキャバ嬢たちが本音で語り明かす「羊肉の名店」とは

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和5年、歌舞伎町はいま……第53回

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筆者が取材に訪れた夜も常連のホストで賑わっていた。大将の白鷹氏(左)の人柄と絶品の羊肉が名物だ
筆者が取材に訪れた夜も常連のホストで賑わっていた。大将の白鷹氏(左)の人柄と絶品の羊肉が名物だ

ホスト、キャバ嬢、風俗嬢……。毎夜、仕事で客を喜ばせるための会話をしている歌舞伎町の「夜職住民」にとって、本音を話せる馴染みの飲み屋というのは重要な存在である。ときには仲間と、ときには一人で店を訪れ、仕事の愚痴や将来の不安を吐露する。

怪しげな店が立ち並ぶ歌舞伎町「思い出の抜け道」(新宿センター街)の一角にある『せきね家』は、知る人ぞ知る羊肉の名店だ。カウンター席のみの小さな店は、連日、ホストやキャバ嬢でいっぱいになる。常連客のデリヘル嬢・マイカ(仮名・22)が言う。

「風俗で鬼出勤して、やっと指名しているホストに会えたのにアフターがなくて……って日に、服が臭くなるのを覚悟して初めて行きました。以来、週に1回は必ず食べに来てますね」

『せきね家』の目の前には老舗ホストクラブ『TOPDANDY』がある。このクラブに勤めるホストの黒城みづきは、『せきね家』にハマった理由をこう語る。

「たまたま横に座ったお客さんと仲良くなることが多いんです。『せきね家』の大将は、今どき珍しいくらいの江戸っ子で、義理人情を大切にする人。大将が客同士の仲をつないでくれるんですよ」

大将の白鷹輝司氏(50)は歌舞伎町生まれ歌舞伎町育ち。地元を盛り上げたいという思いから、店に立ち続けている。白鷹氏が言う。

「常連客のホストクラブとかキャバクラに、俺が行くこともあります。やっぱり、そういう繋がりは大切にしたいんで。逆に不義理だったりマナーがなってない奴は嫌いですね。どんな売れっ子でも一発で出禁にします。なかには、酒を飲みながらとか煙草を吸いながら入ってくる奴もいるんですよ。そういう人はうちの店の客じゃないんで帰ってもらいますね」

人情派の白鷹氏が営む『せきね家』のSNSには、料理よりもむしろ、来店した客の写真が多数掲載されている。そのなかには、赤ちゃんを連れた若い母親の写真なんかもある。

「大将に酒を奢りつつ、うまい肉を食うのが最高です。写真を撮ってくれるのはありがたいんですけど、僕らホストからするともう少し盛ってほしいってのが本音です(笑)」(常連客のホスト・天音雫)

白鷹氏は客相手に、時に厳しい意見をぶつけることもあるという。

「売れるホストと売れないホストってのは、会話してたらすぐわかります。うちの店に来てくれる子にはみんな売れてほしいのもあって、時にはスパッと思っていることを伝えますね。人の気持ちを考えられなかったり、俺みたいな店の人間に舐めた態度をとってくる奴は、どんなに顔が良くても売れない。そうやってアドバイスした子が、『売れました!』って報告しにまた店に来てくれるのが嬉しいですね。お客さんの人生模様と成長を観られるのが、この仕事をしていて楽しい瞬間でもあります」

次々と新しい店がオープンしている歌舞伎町だが、一本路地を入れば、老舗の居酒屋やクセの強い面白い店が溢れている。お気に入りの店を探してみるのも、この街の楽しみ方の一つだ。

新宿区役所近くの「思い出の抜け道」の一角に『せきね家』はある。周囲にはディープな居酒屋が立ち並ぶ
新宿区役所近くの「思い出の抜け道」の一角に『せきね家』はある。周囲にはディープな居酒屋が立ち並ぶ

『FRIDAY』2023年5月5日号より

  • 佐々木チワワ

    ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

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