フリーアナウンサー神田愛花「声帯ポリープ、誕生秘話」 | FRIDAYデジタル

フリーアナウンサー神田愛花「声帯ポリープ、誕生秘話」

【連載第9回】神田愛花 わたしとピンクと、時々NY

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昨年の冬、突然声帯ポリープができた。なんだかんだで2週間も仕事を休むことになり、切除手術もした。誰のためになるのかわからないけれど、今週はそのポリープ誕生秘話をお届けする。

©下村一喜
©下村一喜

声が命の仕事なため、NHK入局時から喉には人一倍気を遣っていた。毎朝欠かさず発声練習をしていたし、今は、芸人のどぶろっくさんの歌をアカペラで歌うことを発声練習にしている。

その甲斐あって社会人になって19年間、ハードスケジュールでも、どんな環境で声を張り上げても、風邪をひかない限り喉に異変を感じることはなかった。

なのに、昨年11月のある日の朝。起きてすぐ「眠たいなぁ」という言葉が勝手に出そうになったとき、一音も、うっすらとも、声が出ない。痛みはなく違和感はゼロ。なのに低音も高音も「ア゛」や「ヴ」のカケラさえも出ず、まるで餌を前に口をパクパクする金魚状態だった。

よりによってその日の仕事は福岡のテレビ局での収録。予定の飛行機に乗り遅れたら1時間以上遅刻してしまうという焦りで必死だった。幸か不幸か、実は新型コロナウイルスに感染して以降ずっと上咽頭炎を患っていて、総合病院の耳鼻咽喉科に通っていたのですぐに向かった。

診察が始まるといつもお世話になっている先生が、先っぽに小さなカメラがついた細い管を鼻の穴から入れ込んできた。少し痛みがあるがスルスルと入っていき喉元まで到達したとき、カメラが”そいつ”を捉えた。

「あぁ……声帯にポリープができていますねぇ」と先生。自分とは無縁だと信じ込んでいた”そいつ”なのかどうか聞き直したかったが、声は出ないしカメラが喉にあるから苦しくて聞けない。続けて先生が、「まだ小さいですし見た感じ、悪さをするポリープではなさそうですが、最近喉を酷使しましたか?」と言ってきた。嘘でしょ!? 私に限って声帯ポリープなんかできるわけない! あんなに声を出すことに丁寧に向き合ってきたのに! 心当たりがないタイミングで突然現れた”そいつ”に、愕然とした。

「1週間くらい経つとまれに消えることもある」という先生の言葉に希望を託し、予定通り飛行機に乗って福岡で仕事をした。だが事務所の判断で、翌日から1週間は仕事を休み、様子を見ることに。

そして1週間後。私の声帯ポリープは、鋭く尖った形に進化し、なくなるどころか反対側の声帯にも影響を及ぼし始めていた。すぐに、切除手術が上手だという別の専門病院を紹介してもらい受診した。専門家の先生から、声が出なくなった前日の行動について詳しく聞かれた。

「それです、原因!」

その日の私は、名古屋でTBS系列『ゴゴスマ』に出演したあと、大好きな台湾料理屋さんに行き辛い台湾ラーメンを食べ、ビールをジョッキ2杯飲みながら、その辛さに思いきり噎(む)せていた。そのことを話すと先生が、

「それです、原因!」

もともと上咽頭炎を患っていて声を出しにくい日が長く続いていた中、連日大きな声で喋って声帯が傷つき、そんなタイミングで辛い物を食べてアルコールを飲みながら思いきり噎せたことで、その傷がポリープになったという。声帯は痛みを感じないそうで、傷がついてもまったく気がつかないとのこと。

人間の体ってそんなに繊細なのか。あのとき台湾料理屋さんに寄らずにマネージャーと一緒に新幹線に乗っていれば……。寄ったとしても台湾ラーメンを食べなければ……。食べたとしても噎せていなければ……。声帯ポリープの誕生を阻止できるタイミングは何度もあったのに、阻止できなかった。悔しかった。こうして私は社会人になって初めての入院を経験し、その生活が極上であることを知る。そのお話はまた今度。

1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中

「FRIDAY」2023年5月5日号より

  • 文・イラスト神田愛花

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