ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』を手掛ける脚本家・岡田惠和と山田太一親子の「浅からぬ因縁」 | FRIDAYデジタル

ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』を手掛ける脚本家・岡田惠和と山田太一親子の「浅からぬ因縁」

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ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』に出演している〝めるる〟こと生見愛瑠。女優として確実にステップアップしている
ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』に出演している〝めるる〟こと生見愛瑠。女優として確実にステップアップしている

今期から日曜22時台に新設されたドラマ『日曜の夜ぐらいは…』(テレビ朝日系)が、回を追うごとに大きな波紋を呼んでいる。

このドラマは、車椅子の母親と寂れた団地で暮らしながら郊外のファミレスで働く岸田サチ(清野菜名)と、家族から縁を切られタクシー運転手として働く野田翔子(岸井ゆきの)、祖母と田舎の借家で暮らしながら「ちくわぶ工場」で働く樋口若葉(生見愛瑠)の3人があるラジオ番組をきっかけに知り合い、友情を育む物語。

脚本家・岡田惠和によるオリジナルストーリーであり、「恋愛なんて奇跡じゃない。友情こそが奇跡だ」のキャッチコピーが放送を重ねるごとに胸に沁みる、今期注目の感動作である。

「〝女性の友情モノ〟といえば、1月期に放送された安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、水川あさみ、4人の友情を描いた『ブラッシュアップライフ』が話題を呼び、バカリズムの脚本にも注目が集まりました。しかし〝友情モノ〟といえば、今作を手掛ける岡田惠和の右に出る脚本家はいない、と言っても過言ではありません」(制作会社プロデューサー)

『ちゅらさん』『おひさま』『ひよっこ』と、朝ドラを三度手掛けた〝朝ドラ〟の名手として知られる岡田惠和だが、その一方で’97年に放送された月9ドラマ『ビーチボーイズ』(フジテレビ系)では、反町隆史と竹野内豊の2人がW主演。ひと夏を海の民宿・ダイヤモンドヘッドで過ごす男同士の友情を描き、全話平均視聴率23.7%を記録。

翌年、金曜ドラマ『ランデヴー』(TBS系)では、恋を忘れた平凡な主婦(田中美佐子)と女流ポルノ作家(桃井かおり)の〝女同士の友情〟を描き、高い評価を得ている。

さらに’99年には、ひょんなことから出会った26歳の女性3人(深津絵里、水野美紀、中山忍)の友情と恋の行方を描くドラマ『彼女たちの時代』(フジテレビ系)を執筆して数々の賞に輝いている。

岡田こそ〝友情モノ〟があまり描かれることのなかった時代に、数多くの名作を紡いできた〝友情モノの名手〟と言える。そんな岡田が手掛ける今作を観て、山田太一脚本の名作『想い出づくり。』(TBS系)を思い出すドラマファンも多いのではないか……。

「’81年に放送された『思い出づくり。』は、結婚適齢期(24歳)を迎えた3人(森昌子、田中裕子、古手川祐子)が結婚への重圧の中、自分らしい生き方を模索する〝女同士の友情〟を描いた物語。主人公が複数いる群像劇の先駆けとなり、後の人気ドラマ『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(TBS系)の原型となったとも言われる作品です。

ちなみに岡田さんは『想い出づくり。』のことを『バイブルみたいなものです。すべてのことをこのドラマから学ばせていただきました』と記しています。やはり『日曜の夜ぐらいは…』は『想い出づくり。』の影響を色濃く受けているのかもしれませんね」(前出・プロデューサー)

しかし脚本家・岡田惠和と脚本家・山田太一を結ぶエニシは、それだけではない。

実は山田太一の長女・宮本(旧姓・石坂)理江子は、『101回目のプロポーズ』や、女性同士(安田成美、中森明菜)の友情を描いた『素顔のままで』など数々のヒット作を手掛けたフジテレビの演出家。岡田が手掛けたドラマ『ビーチボーイズ』『彼女たちの時代』に、宮本はディレクターとして参加している。

「小さい頃は家にテレビが一台しかなく録画もできない時代だったため、父の作品は父の横に座って黙って観るのが習慣になっていたと話す宮本さん。DNAに止まらず、ドラマにおいても『私の求めている世界観は、父の世界観なのかもしれません』と打ち明けています」(制作会社ディレクター)

山田太一をリスペクトする岡田惠和と、山田太一のDNAを受け継ぐ宮本理江子。その2人が再びタッグを組んだ作品が、’12年のドラマ『最後から二番目の恋』、’14年『続・最後から二番目の恋』である。

「このドラマは、古都・鎌倉を舞台に45歳の独身女性(小泉今日子)と50歳の独身男性(中井貴一)が繰り広げる恋愛コメディ。ホームドラマ的な世界観の中で、それぞれが抱える問題と向き合ううちに主役2人の関係や絆が深まる展開は、往年の山田作品を彷彿とさせます。この作品で父が受賞した『芸術選奨新人賞』を宮本が受賞したことも縁を感じます」(前出・ディレクター)

数々の名作を生み出した山田太一を仰ぎ見て来た岡田惠和。『日曜の夜ぐらいは…』は、そんな山田太一へのオマージュを楽しむことができる貴重な作品なのかもしれない。

 

  • 島 右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO近藤 裕介

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