飲み物は客の持参で、料金は1時間3000円…大久保公園に出没した “路上ホスト”が語る将来の夢 | FRIDAYデジタル

飲み物は客の持参で、料金は1時間3000円…大久保公園に出没した “路上ホスト”が語る将来の夢

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和5年、歌舞伎町はいま…… 第60回

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約8000人のホストが夜の歌舞伎町で鎬(しのぎ)を削る。そんななか、大久保公園にいる個人売春の女性たち″立ちんぼ″に交ざり、一人路上でホストクラブを開く猛者(もさ)がいる。

『Club Okubo Park』の看板を持つ山田風涼介。開店初日の集客は5組だった
『Club Okubo Park』の看板を持つ山田風涼介。開店初日の集客は5組だった

「初めまして、山田″風″涼介といいます。27歳です。『Hey!Say!JUMP』の山田涼介くん(30)のファンで、ファン歴は13年目。自分でもメンズ地下アイドルをしていました。 もともとホストにはなりたくなかったのですが、アイドル時代に借金を抱えていて……。3年前にとある店から『借金を立て替えるので働かないか』とスカウトされ、ホストになりました」

その後、転々と店を移籍するも借金はなくならず、客とのトラブルで新たに借金を抱えてしまったという。山田は現在も、とあるホストクラブに所属しながら、所属店への借金170万円を返済している。

「やってみてわかりましたが、自分はホストに向いてないなって思っていて、赤裸々にホストに対する苦手意識や偏見を発信していたら、ツイートがバズったんです。で、この機会にもっと知名度を上げようと思って、路上ホストを始めました。飲み物はお客さんの持参で、1時間3000円。最初のお客さんは大久保公園で立ちんぼをしていた二人組の女の子でした。けっこう繁盛していて、毎晩お客さんが途切れない。一人じゃ回らなくなってきたので、一緒に接客をしてくれる従業員も募集してみようと思っています」

端麗な容姿だが、自らはホストに向いていないと話す山田。実は、ホストを始めてから、トラブルに巻き込まれ、住む家すら失ってしまったのだという。

「ネットカフェで寝泊まりする生活も3ヵ月目に突入しました。路上ホストの活動を面白がった女の子が、ツイッターのDMで『ウチ来ていいよ』って泊めてくれることもある。助かりますね」

温かい人情を感じる日もあるというが、彼が暮らしているのはやはり歌舞伎町。ホスト絡みのトラブルに巻き込まれることも多い。台風が上陸した日、ツイッターのDMを通して泊めてくれる約束をした女性の家へ行くと、そこに住んでいたのはまったく別の女性。嵐の中、路頭に迷うことになったという。

「どうやらホス狂の女性が、同じホストを指名する女性客へのいやがらせとして、彼女の家へ僕を差し向けたみたいです。こういうことが続いて、若干人間不信になりました。歌舞伎町に来てから騙されることは常ですが、やっぱり傷つきます」

客足は順調。営業中の様子をリアルタイムで見られる動画配信も順調に視聴者数を伸ばしている。しかし、彼はホストとして成功したいわけではないという。

「借金を返したらホストは辞める予定です。ホストという仕事に未練はありません。ぶっちゃけ、今水揚げ(担当ホストに店を辞めさせて、生活の面倒をみると約束すること)してくれる女の子がいたら即行であがります。とりあえず目先の生活費と借金のためにも所属店での勤務と並行して、路上ホストと、その配信を頑張っていきたいですね」

聞けば、マメで真面目な性格の山田。今もメイクには毎日1時間半かけている。

「早く安定した仕事に就(つ)きたいですね。水揚げしてもらってもヒモにはならないです。働きたい」

彼がホストを卒業する日はいつになるのか――。その日を夢見て、今日もホームレス山田は大久保公園の路上に座る。

佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

『FRIDAY』2023年7月7日号より

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