神田愛花【連載第17回】バイバイ! 『ぽかぽか』でぽかぽかしない自分。

フジテレビのお昼の帯番組『ぽかぽか』がスタートして、６ヵ月。お笑いコンビ・ハライチのお二人とともにＭＣを担っている。たった半年で３年間分くらい悩み、無我夢中の毎日だ。

アナウンサーではなく″プレイヤー″として出演依頼があった私。「それって何をする存在なのだろう」と、スタート前から悩んできた。ただ正直なところ、始まってみればなんとなくやっていけるだろうとも思っていたのだが、実際は真逆だった。小柄な大橋巨泉さんかと思うような見事な進行をしていく澤部佑と、黒髪のネイマールかと思うような笑いのゴールをパワフルに決めていく岩井勇気。しかも幼馴染みの二人の世界観は仕上がっている。人見知りな私が交ざり込むなんて無理があると、日を重ねるごとに思うようになった。せめて「ＬＩＮＥを交換したい！」と声を掛けるも、「まだいいんじゃないですか？」と大人の対応……（笑）。何もできない姿を全国に晒(さら)しているのではないか、と怖さも感じていた。

そして、スタッフさんたちとの関係。番組立ち上げが決まった昨秋から毎日深夜まで準備を続けてきたにもかかわらず、全員が楽しそうで、誰一人の例外もなく全力で番組に向き合っている。その姿に私も背中を押されると同時に、挨拶程度しか言葉を交わさない関係に孤独を感じた。距離が縮まらない日々から抜け出したくて、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、演出担当をご飯に誘った。何を話したかなんて覚えていない。ただお肉をたらふく食べ、笑いながらお酒を飲んだだけ。なのに翌日から、スタッフさんと目を見て話せるようになった。たった一回のご飯でこんなに変わるのか！　実は全員人見知りだったのか!?　ようやく輪に入り込めた気がした。

そして５月、「神田さんって43才に見えないですね！　って言われたい」という、私の初コーナーが新設された。私に若者のトレンドを教えて、視聴者の方々にもビビビッ！　と刺激になればいいなぁという企画。韓国のアイドルグループ『ＳＥＶＥＮＴＥＥＮ』が、目の前でキレキレのダンスを披露してくださった。情報に疎過ぎる私も彼らのオーラに大興奮したのだが、目の前で起きていることに神経を集中させ、連続する「どうですか神田さん!?」の声に間髪を容れずリアクションする数分間に、信じられないほどヘトヘトになった。翌日、ハライチのお二人に「あんなに大変なんですね……盛り上げてくださってありがとうございます」と心から感じたことを伝えると、「いえいえ」と微笑んだ。ＬＩＮＥの交換よりもグッと深く繋がれた気がした。

日本のお昼に改革を！

そして、６月最初の土曜。その日私は、中高時代の仲良し４人組で都内のホテルでお泊まり会をしていた。突然「お酒が足りない」と言って、出て行く３人。少しすると、『笑っていいとも！』のオープニングテーマを大音量で流しながら戻ってきた。「お昼休みはウキウキＷａｔｃｈｉｎｇ♫」と歌いながら、私にサングラスをかけマイクを持たす。歌詞のカンペを指差し「歌え！」と合図をしてくる。自分なりにタモリさんのモノマネをしながら、「御機嫌ななめはまっすぐに♫」。すると友人は私を挟んで踊り出し、いいとも青年隊をし始めた。曲が終わって金色のくす玉の紐を引くと……″祝！　おめでとう！″の文字が。そして「ぽかぽかＭＣおめでとう!!」と揃って言ってくれた。

胸が熱くなった。友だちになって30年。これまでお互いの仕事について何か話したことはない。興味がないのではない。出会った頃のままでいてくれればどんな仕事をしていても関係ない。私たちは私たちの絆で結ばれてきたからだ。その彼女たちがこんなイベントを開いてくれた。「今までの積み重ねだね！」「日本のお昼に愛花あり！」「愛花タ〜モリ！　愛花タ〜モリ！」

これまで色々な方から「おめでとう」と声を掛けていただいたが、私なんて何もできないし独りだし……と自分中心の悩みをかかえて、状況を客観的に見られなくなっていた。なぜそんなに狭い視野でカメラの前に立っていたのだろう。全力で楽しまなきゃもったいないじゃん!!

この現場の熱量を伝えたい。私はみんなと一緒に日本のお昼を創っている。待ってろ日本！　今はそんな思いを胸に、オープニングで走って登場している。

1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』（フジテレビ系）にメインMCとしてレギュラー出演中

『FRIDAY』2023年7月14・21日号より