フリーアナウンサー・神田愛花「 好きですか？ おばさんのミニスカート」

ミニスカートの季節がやってきた♡　今着なくていつ着るの？　っていうくらいのベストシーズンが、今年も始まった！　この時期のミニスカートには利点がいくつもある。

まずは、少しでも涼しく過ごせること。蒸し暑い夏を乗り切るためには、腕と同様、脚だって極力布を纏(まと)っていたくない。風を脚で直接感じることができるのは、やっぱり気持ちがいい！

次に、足捌(さば)きが楽であること。私はわりと歩幅が大きい。ミニスカートは邪魔する布が少ないため、脚が抵抗なく前に出る。公共交通機関と徒歩移動が多い私にとってはこれが大事なのだ。

そして、洗濯物を減らせること。服のサイズがＸＬの男性と暮らしていると、夏場は毎日洗濯機を回す。二人暮らしでこれは多い！　私のスカートの布の量が少なくなれば、（洗濯物が減って家事が楽になる！）という気休めになる。

それでも「穿くのやめようかな……」と思わせる強敵がいる。”老化”だ。

実は去年、あの超高級ブランドＣＨＡＮＥＬでミニスカートを買った。大好きなＢａｒｂｉｅピンクで、ＣＨＡＮＥＬらしいツイード素材。お値段なんと40万円弱だ。いくらピンク色が好きだからってパッと購入すべき値段ではない。だが当時ちょうど、ミニスカートを一生卒業すべきかどうか悩んでいた頃だった。

20代中頃までは何の違和感もなく穿いていたミニスカート。20代後半になって（少し大人っぽく見られたい）という気持ちから、穿かなくなった。30代前半、旅先のアメリカで、お婆ちゃんが元気にミニスカートを穿いている姿に刺激を受けた。（ファッションは自由だ！）と、どう見られるかよりも自由を重んじ始め、また穿くように。しかし30代後半に膝の老いによって清潔感を感じなくなった。（膝は隠したほうが、品のある年の重ね方をした女性に見えるかな？）と思い、ミニスカートから再度離脱した。

そして去年、42歳にして（死ぬまで40年近く、この先ミニスカートを穿くことは、もうないのかなぁ。本当にいいのかなぁ）と考えていたときに、ＣＨＡＮＥＬで出会ってしまったのだ。可愛かった。輝いて見えた。若かったら迷わず買いたかったが、この値段じゃさすがに手が出ない。ってことは、年齢を重ねた人が穿く用のミニスカートなのか？　いやでも、「ＣＨＡＮＥＬはおばさん用のミニスカートを扱っています」なんて聞いたことがない。じゃあこの値段のミニスカートって一体誰が穿くために売ってんのよ！　デザインと値段のギャップに腹が立って、（くそ！　試着してやる！）となった。

そして、奴(ヤツ)に見つかる……

きっともう心は決まっていた。高級なツイード素材。ファスナーに引っ掛けないようにしなきゃと慎重に穿いてみると……あら不思議。似合って見えた。というか、実際は似合っていなくても、欲しい気持ちが強すぎて、似合って見えた。でも買っても穿かないんじゃもったいない。老化が進んでいる膝をあえて見せる理由を試着室の中で必死に探した。で、辿り着いた答えが、（最後の足掻きだ!!）。

こんなにドンピシャな好みの色＆素材のミニスカートなんて、後にも先にもない。最後に穿くのがＣＨＡＮＥＬだなんて、上等じゃないか。（人生も上がりだ！　エイッ！　ヤーッ!!）とカードを切った。

去年はその勢いでひと夏穿けた。さぁ今年はどうだ。恐る恐る、今朝穿いてみた。（んーどうでしょう？）自分じゃわからない。というか本当は膝が気になるが、それを認めると穿けなくなってしまうので、目をつむる。そのままとりあえず『ぽかぽか』へ。すぐに衣装に着替えるので人目に晒(さら)されることはないのだが、一人だけ女性スタッフさんとすれ違ってしまい「わぁ！　もう夏ですね！」とお声を掛けて頂いた。どういう意味だろうか。

そして帰り、エレベーターホールでハライチの岩井勇気に会ってしまった。常に何かを感じ、何かを思う人。この状況で一番会ってはならない人物だ。「お疲れ様でしたぁ」とお互い言葉を交わしたが、背中に感じる、奴の視線を。横目でチラッと見える、奴の視線が。でも何も言ってこない。エレベーターよ、早く来い。一体奴は、何を思い何を感じているのだろう。怖くてそれ以上は振り向けず、エレベーターに乗り込んだのだった。

1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』（フジテレビ系）にメインMCとしてレギュラー出演中

『FRIDAY』2023年7月28日号より