神田愛花【連載第19回】私が政治家になる可能性 | FRIDAYデジタル

神田愛花【連載第19回】私が政治家になる可能性

【連載第19回】わたしとピンクと、時々NY

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神田さんが描いたイラスト

先日、MCを務める番組『ぽかぽか』で、ゲストの元宮崎県知事・東国原英夫さんがビックリすることをおっしゃった。

私が「ある政党の候補者リストに挙がっている」。しかも「そのリストの2番目くらい」だそうだ。え!? 私が!? 漢字もまともに読めないし、お堅いイメージもない。なのに「年、経歴、考え方、活動歴がど真ん中」だそう。

今まで政界へのお誘いなんて、まったくなかった。ただまぁなんであれ、選んでいただけていることはありがたい。仰天だけどイイ気持ちになり(私も捨てたもんじゃないねぇ〜)なんて思っていたら、CM中に「どうします? 本当に誘われたら」と、共演者が小声で聞いてきた。「え!? いやいや、夫の仕事に迷惑がかかるからお断りするに決まってるじゃないですか!」と、タラレバの話であることを忘れて焦って答えた。すると「じゃあそういう障壁がなかったらどうします?」と聞き返してきた。(え!! そんなに突っ込んで聞く!?)。――頭をフル回転させ、一生懸命お断りする論理を導き出そうとした。だが途中で道筋がゴチャゴチャしてしまい、「ん〜、受けないんじゃないですかねぇ?」となんとも歯切れの悪い返答をしてしまった。

東国原さんのお話が本当なら、”Xデー”に備えて自分の考えをまとめておかなきゃならない。その日の夜、なぜ「お断りする」までの根拠や理由がパッと思い浮かばなかったのかを考えた。

まず、今の私の場合。もし私が何かしらの選挙に出馬することになったら、選挙期間中はずっと、夫は仕事を休まなければならない。候補者の親族がテレビやラジオに出演すると、私のことを思い起こす可能性がある。一票に繋がってしまうかもしれない。公平で公正な選挙報道のためにはそれを避けなければならず、各局は夫を番組に出すことを控えるようになる。よって夫に迷惑がかかるので、「お断りする」に辿り着く。

じゃあもし私が独り身だった場合……「あー!!」急に思い出し大きな声が出た。そういえば1年くらい前、ずいぶん昔に合コンで同席した方からLINEが来た。合コン以来一度も連絡を取っておらず、存在すら忘れていた。書き出しの「ご相談があります」だけを読み、お名前をネットで検索したら、ある国会議員の方がヒット。(あ〜なんか覚えてるなぁ。この方とLINE交換してたのかぁ。私もう既婚者だし、親しくない男性の相談に乗るのも変だしなぁ。つーか今更相談って、急に私のことを好きになっちゃったとか? あり得ないけど万が一があるから、申し訳ないけれど既読にしないで消そーっと)と、その方のLINE自体を消去した。今思うと、あれは出馬に関する相談だったのかもしれない!? Xデーが現実味を帯び、より真剣に考え始めた。

それって”私”の魅力ですか?

独り身で今の仕事をしていたとしても、日々はきっと充実している。せっかく呼んでくださる現場に失礼なことをしたくないから、「お断りする」だ。

ただ待てよ。独り身で、今の仕事も呼ばれなくなって、仲良しの母も他界してしまったら……毎日が暇で気持ちが沈み、自分が生きている理由ってなんだろうと、どんどん負のスパイラルに陥る気がする。そんなときにXデーが来たら……「生き甲斐をありがとうございます!」となる気がするのだ。これだ!! あのとき「お断りする」の答えまでの道筋がスッと通らなかった理由は。すべての障壁がなくなってしまったら、答えは逆なのだ。

じゃあ、国民のために身を粉にして成し遂げたいことってあるのか? (ん〜……ない)。政治に対してどうしても間違ってると思うことはあるかな? (ん〜……そんなにない)。こりゃダメだ。これじゃ街頭演説で聴衆を惹きつけられないし、マニフェストも作れない。ダメだダメ、無理がある。それに、私を候補者リストに載せている政党さんって、独り身で仕事がない状況の私も評価してくれる? 夫のファンの皆さんの票も見越してるんじゃない? 絶対そうでしょ!! あー嫌だ嫌だ、そういうことか! 魂胆が見え見えだっつーの!

なぜか失恋したような気持ちになって腹が立ち、忘れようとNetflixを見始めたのだった。

©下村一喜

1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中

『FRIDAY』2023年8月4日号より

  • 文・イラスト神田愛花

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