田幸 和歌子

<h3>「もしかして朝ドラのことをご存知なのかとドキッとしたんですよ」</h3>
橋本環奈が’24年度後期の第111作目NHK連続テレビ小説（通称「朝ドラ」）『おむすび』のヒロインに決定したことが、８月９日に発表された。脚本を手掛けるのは、『正直不動産』（NHK総合）、『監察医 朝顔』シリーズ（フジテレビ系）、『ハコヅメ』（日本テレビ系）、『フルーツ宅配便』（テレビ東京）などの根本ノンジさん。
<figure id="attachment_328752" aria-describedby="caption-attachment-328752" style="width: 2880px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e22cd0c2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/f783281af83108c0f709dcefc05e2df9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328752" class="wp-caption-text">８月９日に発表された’24年度後期の第111作目朝ドラ『おむすび』。ヒロインの橋本環奈さんと記者会見に登場した根本ノンジさん（写真右／PHOTO：NHK提供）</figcaption></figure>
この発表を聞いた瞬間、「やっぱり！」と思った。というのも、根本さんにFRIDAYデジタル（６月19日公開）でインタビューした際、根本さんが朝ドラをまだ書いていないのが不思議だと言うと、こんな返答をしていたためだ。
「僕はキャリア的にまだまだじゃないですかねえ……。でも、声がかかったら頑張れるように準備だけはしておきたいですね」
そこから２ヵ月足らずでこの発表、そして制作統括は『正直不動産』のプロデューサーも務めていた宇佐川隆史さんである。「やっぱり！」
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そこで早速、根本ノンジさんに再度インタビュー。朝ドラとの「接点」などについてたっぷり語ってもらった。
「前回は『合理的にあり得ない～探偵・上水流涼子の解明～』（フジテレビ系）放送中のインタビューでしたが、そもそもご依頼いただいたときに、もしかして朝ドラのことをご存知なのかとドキッとしたんですよ。朝ドラに関するご質問も出ましたから（笑）」
根本さんが朝ドラを最初に意識したのは、『マー姉ちゃん』（’79年度前期）。小学生のときで、両親が時計がわりに観ているのを間近で見ている感じだったと言う。
<figure id="attachment_328753" aria-describedby="caption-attachment-328753" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b7f90276"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/303ad6147ab08417f9c81e87fb6127b7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328753" class="wp-caption-text">「僕は小学生の頃から漫画家になりたくて、題材が長谷川町子さんとそのお姉さんだったから、親に『これ、サザエさんの人だよ』と言われ、興味深く観たのが朝ドラ原体験ですね」と根本さん（PHOTO：スギゾー）</figcaption></figure>
「朝ドラの時間は学校に行っている時間だから、普段は観られなくて、夏休みに観たのかな。僕は小学生の頃から漫画家になりたくて、題材が長谷川町子さんとそのお姉さんだったから、親に『これ、サザエさんの人だよ』と言われ、興味深く観たのが朝ドラ原体験ですね。 
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もちろん『おしん』も観ていますが、ちゃんと朝ドラを意識して観るようになったのは、ドラマ脚本を書くようになってから。『ゲゲゲの女房』（’10年度前期）以降ですね」 
<div data-friday-nextpage-lead="リベンジって！？"></div>
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<h3>「リベンジ」の訳…</h3>
ただし、根本さんにとって、実は朝ドラ参加は今回が初めてではないと言う。
「実は僕、『てっぱん』（’10年度後期）に脚本協力で入っているんです」
根本さんが参加したのは、ドラマが12週くらいまで進み、煮詰まった段階だったとか。実は朝ドラにとって一番キツイ時期は、通常の連ドラ１クール分にあたる12週で、「魔の12週」とも呼ばれているのだという。
<figure id="attachment_328754" aria-describedby="caption-attachment-328754" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="441001c5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/a50e9947530008b72fdafbbfd10fdc27.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328754" class="wp-caption-text">「実は僕、『てっぱん』に脚本協力で入っているんです」</figcaption></figure>
「今回メインライターとして『てっぱん』と同じBKの朝ドラに呼んでいただいたのは、僕にとってはリベンジというか。 
今呼ばれても、やっぱり当時と同じホテルに泊まるんですね。会議室も確か同じで、『ああ、戻ってきた』という運命的なものを感じるんです」
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根本さんが「リベンジ」と言うのには理由がある。
「とにかくめちゃくちゃ大変だったんですよ。当時はまだ週６本×15分＝90分のドラマを26週描く。箱を作りながら『キツイな』と思って見ていたので、大変なのは十分わかっていたし、もし自分が書くことになったらどうやってやればいいだろうとも思っていて、いつか朝ドラをやりたいなとはずっと言っていたんです。 
僕はずっとテレビにお世話になっているので、テレビドラマになるべくこだわって書きたいですし、なかでも朝ドラや大河ドラマはテレビドラマの最高峰のような王道の枠だから、死ぬまでにやれればいいなとずっと言っていたんですよ。（『フルーツ宅配便』などの）濱谷晃一さんなんて特にずっと一緒にやってきた仲間ですけど、僕が朝ドラ書きたいと言うと、笑っていましたから。今度お祝いしてくれるみたいで、ありがたいですね。 
僕の原点はやっぱりテレビ東京などの深夜ドラマだから、テレ東でずっとご一緒してきたプロデューサーたちは本当に喜んでくれていますし、今こうして王道の枠で書けるというのはすごく幸せで。タイミングもあるし、書きたいと思って書けるわけじゃないじゃないですか」
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オファーがあったのは昨年秋頃。決め手となったのは、『正直不動産』が好評だったこと、さらに『ハコヅメ』でコメディとヒューマンのバランスを評価されたことも大きかったようだ。
「突然電話があって『朝ドラ興味ありますか』と聞かれて、スケジュールを確認したらちょっと大変な時期で、どうしようと思ったんですけど、たぶんここが一生に１度あるかないかのタイミングだろうと思い、『やります！』と。制作統括は『正直不動産』の宇佐川Pでしたが、その時点では題材もヒロインも何も決まっておらず、『こんなに０からのスタートなんだ』と驚きました」 
<div data-friday-nextpage-lead="舞台は平成、主役はギャル"></div>
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<h3>舞台は平成、主役はギャル…「『失われた30年』とずっと言われているけど、そんなことないじゃん、と」</h3>
そこでたどり着いたのが、「平成のギャル」米田結が「栄養士」となり、現代人が抱える問題を解決しながら成長していく物語『おむすび』である。
「偉人や、何か成し遂げた女性などを探して、一応ネタになりそうな本なども読もうとしたんですけど、今が『らんまん』で植物学者、その後が『ブギウギ』で笠置シヅ子さんがモデルと、時代物で、実在の人物が続いていたんですね。だったら現代劇がいいなと思って。 
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それで、現代劇をやるならどこにでもいるような身近さがあって、全然偉くない、普通の泣いたり笑ったりする女の子がいいなと言っていて、時代はどのあたりか考える中で『平成がいいんじゃないか』となり、『平成だったら、ギャルじゃないか』と。 
『舞いあがれ！』も平成の時代は描いていますが、しっかりしたヒロインでしたし、『おむすび』は今までの朝ドラではありえなかったギャルがヒロインという、たぶん変わったドラマになると思います（笑）」 
<figure id="attachment_328755" aria-describedby="caption-attachment-328755" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ba8c9fdd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/f9906ba49d64700e867575dccbaa1814.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328755" class="wp-caption-text">「時代はどのあたりか考える中で『平成がいいんじゃないか』となり、『平成だったら、ギャルじゃないか』と…」</figcaption></figure>
昭和モノで戦争などを描く作品のほうが、中高年層などを巻き込む計算がしやすいのでは？
「そうですね。でも、平成って、近いけど懐かしいみたいな感じがあって、面白いじゃないですか。それに、『失われた30年』とずっと言われているけど、そんなことないじゃん、めちゃくちゃ楽しかったし、いろんなこと・モノも生まれたのに、なんで失われたとか言うの？ と僕は思っていて。 
特に平成を生きてきた若者、今の30代くらいの子たちが『なんで俺たち、私たちが生きてきた時代を失われたと言われなきゃいけないの』と思っているんじゃないかと、だったらその平成を生きた人たちを生き生きと描こうと思ったんですね。 
テーマに関しては、前のインタビューでも話しましたが僕自身、三代続く焼鳥屋の息子で、子どもの頃からお店を手伝っていて、調理師免許も持っておりまして（笑）、今まで描いたドラマでも、特に食に関するシーンはこだわりを持って書いてきたつもりです。だからやっぱり自分が描くなら、食をテーマにしようと決めました。 
でも、食を描く朝ドラも今までいっぱいあるじゃないですか。だから、料理人とかまともにやっても難しいよねということで色々調べ、栄養士だったら食と人に関われるなと。比較的トントン拍子で決まっていきました」 
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実在のモデルがなく、「平成のギャル」を描くオリジナルの現代モノというと、企画を通すのが非常に難しそうな気も……。
「そこは制作統括の宇佐川さんが頑張ってくれたところでもあると思います。僕と宇佐川さん以外、『芋たこなんきん』や『まんぷく』をやっていた真鍋斎さんとか、朝ドラのレジェンドだらけの現場なんですね。 
だからスタッフの皆さんにアドバイスをいただきつつ物語を作っています。
また、演者さんが決まれば、僕の場合、いつもあて書きというか、その人がやったら面白いものに寄せていくタイプなので、橋本さんがやるからこそのヒロイン像を作っていきました。 
橋本さんはコメディの上手い方なので、それは前面に出そうと思っていて、もちろんヒューマンなものにはなるんですけど、まずは笑いに一生懸命取り組もうと思っています」
<div data-friday-nextpage-lead="橋本環奈さんのこと"></div>
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<h3>「朝ドラ」ならではの脚本の作り方</h3>
毎週１時間や30分のドラマを作ることと、15分×週５本のドラマを作ることは、やっぱり大きく違うもの？
「全然違いますね。単純に15分×週５本＝75分を25週から26週分という物量の多さも違いますが、リズムが他の連続ドラマとは全然違うんですよ。 
脚本を書くときはA４のワードで書くんですが、だいたい台本の見開き１枚２ページ分として、15分だと８～９枚しか書けないんです。８枚で１つのエピソードを起承転結まで行かないまでも、うねりを作るのが難しいですね。 
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ショートコントともまた違うけど、リズム的にはそれに近い感じというか。それを５日分、75分で１本とする。15分でうねりもありつつ、75分全部見てグッとくる物語とするのは意外と難しいんですよね」 
<figure id="attachment_328756" aria-describedby="caption-attachment-328756" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="30b56adf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/435eabdd3c976ab37ee925b83de6454b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328756" class="wp-caption-text">「15分でうねりもありつつ、75分全部見てグッとくる物語とするのは意外と難しいんですよね」</figcaption></figure>
執筆を進める上で、今準備していることとは。
「『ごちそうさん』（’13年度後期）は全巻DVDを買って全部観て、台本もNHKからお借りして見させていただいています。時代は全く違いますが、同じBK作品で、食べ物を描くということで一番近い作品ですので、リズムも含めて勉強させてもらっています」 
朝ドラでは、主人公が戦争や関東大震災などの困難を乗り越える様を描くことが多いが、平成の場合はやはり避けて通れないのが災害だろう。
「そうなんですよ。平成は災害の歴史でもあるので、そこは避けられないので、丁寧に取材しているところですね。 
平成を描く以上エポックな出来事はいくつもあるので、それをどう描くかは打ち合わせ中です」
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<h3>橋本環奈さんのこと</h3>
ヒロインは「平成が始まった日に生まれた子」で「ギャル」だが、平成から令和の現在30代までの長いスパンを描く物語だけに、おそらくシビアな現実も多数描かれることになる。それは逆に、橋本環奈という俳優の力が活かされる点でもあるだろう。
根本さんは朝ドラファンに向けて、こんなメッセージをくれた。
「今回のヒロインは、平成から令和という時代のアップダウンの中で大人になっていく、感情のアップダウンも含めてかなり大変な役です。でも、『おむすび』制作発表の会見時に橋本さんと会って、ものすごくチャーミングで気さくで、ざっくばらんな方なので頼もしいなと思ったんですよ。 
もちろん制作統括から説明は受けていると思いますが、まだ台本もできてない状態なのに、様々な質問に流暢に答えている度胸の良さに驚きました。その後、僕が出ていったんですけど、大体もう質問がなくて（笑）。 
あの頼もしい橋本さんとこれから一緒に朝ドラを作れると思うとワクワクします。これまでの朝ドラの伝統を守りつつも、オリジナル作品としてのオリジナリティも出しつつ、一人でも多くの方に楽しんでいただけるよう、誠心誠意、真摯に頑張っていきますので、楽しみにしていてください」 
<figure id="attachment_328757" aria-describedby="caption-attachment-328757" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dc0f61c7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/a7a391828cfa61645cd9e0b2285e29ad.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-328757" class="wp-caption-text">「これまでの朝ドラの伝統を守りつつも、オリジナル作品としてのオリジナリティも出しつつ、一人でも多くの方に楽しんでいただけるよう、誠心誠意、真摯に頑張っていきますので、楽しみにしていてください」</figcaption></figure>

田幸和歌子

スギゾー

橋本環奈が’24年度後期の第111作目NHK連続テレビ小説『おむすび』のヒロインに決定したことが、8月9日に発表された。脚本を手掛けるのは、『監察医 朝顔』シリーズなどの根本ノンジさんだ。

「朝ドラ」初登板！ 『正直不動産』『ハコヅメ』でお馴染みの脚本家・根本ノンジが語る「朝ドラ論」

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