スポーツ紙記者として、音楽、映画、テレビなど芸能界を幅広く取材。現在はフリーライターとして執筆する

青山 太郎

<figure id="attachment_334919" aria-describedby="caption-attachment-334919" style="width: 5343px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1d97ddd9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/929d75e16c926ef894e940191458ef91.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334919" class="wp-caption-text">２回目の会見で発表されたのは、まさに「ジャニーズ解体」だった</figcaption></figure>
<p>ジャニーズ事務所の東山紀之社長らが２回目の会見を開き、事務所の名称変更と、現事務所の将来的な廃業を発表した。同社の株式を１００％保有する藤島ジュリー景子氏はパニック障害を理由に会見を欠席したが、ジャニー喜多川氏の痕跡を「この世からなくしたい」とまで表明。これで創業者の名前が消えることになるが、追い込まれた感はぬぐえない。これまで公開での会見などは開かず、木で鼻をくくった広報対応が真骨頂だっただけに、２度の会見は異例だ。</p>
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<p>廃業まで口にするほどの焦りの背景は、タレントをＣＭに使っている企業の&#8221;造反&#8221;にある。これまで商品やサービスの宣伝でタレントの恩恵を受けてきたが、事務所が窮地に追い込まれるや手の平を返す。問題は事務所の故人の元社長でタレントには罪はないという声もあったが、性加害や、児童虐待を容認してきた企業との取引は見直すと言い出した。経済部の記者が解説する。</p>
<p><span class="strongInContent">「経団連の十倉雅和会長は、タレントはある意味被害者であって加害者ではない。機会を長きにわたって奪うのも問題だと指摘しましたが、経済同友会の新浪剛史代表幹事は、児童虐待に対して真摯に反省しているか疑わしいと手厳しかった。児童虐待というワードは海外で展開する大企業には容認できなかったようです。ただ、新浪氏の言葉がきつかったのか、週刊誌にパワハラ疑惑まで報じられてしまいました」</span></p>
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<p>そもそも、このボタンの掛け違いはジュリー氏のミスから始まった。ジャニー氏の性加害問題が次々報じられる中、同事務所は５月に公式ＨＰで見解と対応の文書を公表。ジュリー氏が動画で謝罪を表明した。その動画の中でジャニー氏の性加害について「知らなかったでは決してすまされない話だとは思っていますが、知りませんでした」と語ってしまった。この「知りませんでした」が後々にボディーブローのように効いてくる。スポーツ紙の担当記者が振り返る。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「知らなかった」の一言が……"></div>
<p><span class="strongInContent">「事務所幹部の中にはビデオ謝罪に反対する人もいたが、ジュリー氏が押し切ったようです。相談するコンサル側からの提言のようで、初の顔出し謝罪は話題にはなりましたが、知らなかったという言葉がまずかった。性加害を事務所としてどう捉えるかという大切な論点を、ジュリー氏はコンサルとともに決めてしまったのです。オーナー社長なのでそれも仕方ありませんが、結果的に同族支配への批判につながってしまいました」</span></p>
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<p>東山社長は当初、キャスターを務める番組で、事務所名を変更した方がいいとの個人的見解までも示唆していた。だが、１回目の会見では事務所名の維持を表明。報道陣から追及されるとしどろもどろに。５月の段階で会見を開きとりあえず謝罪、１回目の会見時に２回目の会見内容を発表していれば、これほどの痛手を負わなかった。オーナー会社ゆえのガバナンス不在が、企業の棄損を招いてしまったと言えそうだ。</p>
<p>ジュリー氏はジャニーズからの完全撤退を明らかにした。事務所の代表取締役を辞めないのは、事業承継税制の特例措置を申請し相続税の支払いを免れているからだと一部週刊誌に指摘された。だが、会見に同席した弁護士は、８００億円以上とみられる相続税を支払った上で、新会社から利益を受けることはないと明言した。</p>
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<p>とはいえ、旧社から新社への事業譲渡の内容はまだ不透明だ。ジャニーズの場合、過去の原盤権や出版権など、いわゆる知的財産が生み出す金額は膨大で、この権利を新社に無償譲渡するとも思えない。旧社は被害者への補償、救済を請け負うが、清算後にはかなりの金額がジュリー氏の手元に残るとみられる。ジャニー＆メリー両氏の遺産を相続したジュリー氏。その莫大な遺産と引き換えに、芸能界での立ち位置を失ったということになりそうだ。</p>


青山太郎

中村和彦

10月2日のジャニーズ事務所の会見では、事務所の名称変更や将来的な廃業など、まさに解体的な出直しが発表された。だが、ここまで窮地に追い込まれたのは、後手後手に回ってしまった対応の拙さにあった。

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