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<p>前の記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/346592">『【SMAP誕生前夜】ジャニー喜多川の理想をかなえた「少年隊」と「光GENJI」のおそるべし実力』</a>では、SMAPデビュー直前にジャニーズ事務所を絶頂期へと導いた二つのグループについて取り上げた。</p>
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<h2>「SMAPは踊れない」</h2>
<p>SMAPは、見捨てられた子供たちだった。ジャニーズのエリートではない。落ちこぼれだ。</p>
<figure id="attachment_347071" aria-describedby="caption-attachment-347071" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0139ee2a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/fdfcaaeb38fe9d17fce984f1c70e97b0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-347071" class="wp-caption-text">デビューからわずか１年後のSMAP</figcaption></figure>
<p>光GENJIの人気の全盛時、バックで踊っていたスケートボーイズのメンバーから６人が選出された。1988年４月に結成。当時のメンバーを年長順に挙げてみよう。</p>
<p>・中居正広（15歳）<br>
・木村拓哉（15歳）<br>
・稲垣吾郎（14歳）<br>
・森且行（14歳）<br>
・草薙剛（13歳）<br>
・香取慎吾（11歳）</p>
<p>中居と木村は高校入学直後だ。香取に至っては小学生である。年齢のみならず、いかにもバラバラの印象がある。</p>
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<p>Sports　Music　Assemble　Peopleの頭文字を取ったという〈SMAP〉の名称は、正直、まったくピンとくるものではない。当初は意味不明の記号と見えたものだ。</p>
<p>結成から３年後の1991年の元日、SMAPは日本武道館で初コンサートを開いた。昼夜３回の公演は満席である。だが……。</p>
<p>三回目のステージでは音程が外れ、踊りもバラバラになっていた。笑顔も引きつっていた。体力がもたなかったのだ。しかし、レコード会社の担当者は冷酷な通告をした。四月にデビュー予定だったが、「見送る」と言った。あまりにも歌が下手だったのだ。<br>
（中川右介『SMAPと平成』〈朝日新書〉）</p>
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<p>これは、きびしい。SMAPは歌もダンスもダメだ、とは当初、よく言われた。後に中居正広の音痴ぶりがネタになったほどだ。いや、解散の前年（2015年）でさえ、メリー喜多川に「SMAPは踊れないじゃないですか」と公言される始末である（「週刊文春」１月29日号）。</p>
<p>SMAPは、見捨てられた子供たちだった。彼らはいったい何に見捨てられたのか？</p>
<div data-friday-nextpage-lead="SMAPが見捨てられ続けたもの"></div>
<h2>ヒットにも時代にも見捨てられ</h2>
<p>ジャニー喜多川だ。いや、ジャニーは相応の愛情をもってSMAPを世に送り出したはずである。</p>
<p>正確に言い直そう。</p>
<p>ジャニー喜多川の「価値観」に見捨てられたのだ。</p>
<figure id="attachment_347072" aria-describedby="caption-attachment-347072" style="width: 1194px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="823092e5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/c02c22eaf7fd4bf37f3d0d4f80b3b599.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-347072" class="wp-caption-text">1986年にグラミー賞授賞式に招かれた「少年隊」</figcaption></figure>
<p>価値観とは？　ミュージカル映画『ウエストサイド物語』に感動してアイドルプロデュースを始めたジャニーにとって、唄って踊る少年たちの輝きこそが至高のものだった。</p>
<p>少年隊と光GENJIで、それは達成された。たとえば少年隊の３人は、全員がバク宙ができる。後輩のSMAPは、そんなアクロバティックな体技など持ち合わせていない（草彅剛のみはバク宙ができるとも）。歌はヘタだし、ダンスもぐだぐだ……落ちこぼれである。ジャニーズの美意識からまったく「見捨てられていた」のだ。</p>
<p>次に、彼らが見捨てられたのは……ヒットである。</p>
<p>当初の予定から遅れて1991年９月９日、デビュー曲『Can`t Stop!! –LOVING-』をリリースする。オリコンのヒットチャートでは初登場２位だった。これが最高位で、遂にトップに立てない。</p>
<p>少年隊も光GENJIも共にデビュー曲はチャート初登場１位だ。デビューまでに時間をかけ、周到に準備をし、世に出た瞬間にいきなりトップに立つ。それがジャニーズのやり方だった。しかし、SMAPには叶わない。15万枚というセールスも、当時の事務所的には最低の部類と言われている。</p>
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<p>同年12月６日にリリースのセカンドシングル『正義の味方はあてにならない』では、チャートの最高位がなんと10位にまで急落した。その後も、３位、５位、８位、７位……と延々と低迷を続ける。</p>
<p>SMAPがやっとチャート１位を獲得するのは、実に12曲目の『Hey Hey おおきに毎度あり』によってだった。1994年３月12日にリリース。デビュー曲からはるか３年６ヵ月をも経ている。</p>
<p>ナンバーワン・ヒットが使命とされるジャニーズにおいて、SMAPは完全に落ちこぼれていた。歌手としての彼らの将来を期待する声は少なかったはずだ。なぜ、彼らはヒットに見捨てられていたのか？</p>
<p>そこで問題になるのが、三つ目の視点だ。</p>
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<p>そう、SMAPは……時代に見捨てられていた。</p>
<p>時代とは？　昭和の終わりから平成の始まりにかけてである。後にバブル景気と呼ばれ、それが爛熱して崩壊へと至る端境期だ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="２つの人気番組が相次いで終了"></div>
<h2>手を差し伸べたのは「素人マネージャー」</h2>
<p>SMAPは1988年４月に結成され、1991年９月にデビュー曲をリリースした。その３年５ヵ月のあいだにいったい何が起こったか？</p>
<p>◎1989年９月＝『ザ・ベストテン』放送終了。<br>
◎1990年10月＝『夜のヒットスタジオ』放送終了。</p>
<p>なるほど、これである。『ザ・ベストテン』はTBS系列で1978年から11年間、放送された。『夜のヒットスタジオ』は1968年から実に22年間も続いた長寿番組である。ゴールデンタイムに放送されていた２大歌番組が、この間、立て続けに終わったのだ。</p>
<p>たのきんトリオやシブがき隊、少年隊、光GENJIら、先輩グループはみんな両番組に顔を出して唄い、踊ることで全国区の人気を獲得していった。しかし……。SMAPがデビューする頃に、そのステージは消え失せている。日本テレビ系列の『ザ・トップテン』もそれ以前（1986年３月）に終了していた。この頃、歌番組が次々と消滅して、アイドル歌手が世に出る機会が奪われている。〈アイドル冬の時代〉とも呼ばれた。</p>
<p>そんな真冬の時代に、よりによってSMAPはアイドル歌手グループとして出発したのである。運が悪い、と言うしかない。</p>
<p>SMAPは、冷酷にも時代に見捨てられていたのだった。</p>
<p>ジャニー喜多川に、ヒットに、時代に、見捨てられた。三重苦である。事務所の落ちこぼれグループ。売れないアイドルだ。とても人気者になる気配もない。</p>
<p>パッとしないまま消えていって何らおかしくはなかった。それまでのジャニーズ事務所の価値観、ジャニー喜多川のプロデュースと、メリー喜多川のマネージメント—―その両輪のパワー、辣腕を持ってしても、よほど難しい。それは自明のように見えた。</p>
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<p>端的に言おう。SMAPは、ジャニーズ・アイドルの失格者たちなのだ。</p>
<p>彼らは、完全に捨て去れられようとしていた。</p>
<p>……その時である。</p>
<p>見るに見かねて一人の女性が声を上げた。</p>
<p>SMAPをなんとかしたい。この子たちを助けたい。</p>
<p>クリエイターではない。マネージャーですらない。それはジャニーズ事務所のいち事務員だった。</p>
<p>飯島三智である。</p>
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<p>周囲の視線は冷ややかだった。</p>
<p>ふん、売れない落ちこぼれアイドルと、ド素人の女事務員に、いったい何ができるというのか？</p>
<p>そう思われて当然だ。しかし、運命というのは面白い。どん底のその暗闇に、やがて奇跡のようにひと筋の光が射し込んでくるのである。</p>
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<p>次の記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/346596">『【Ｂ級アイドルから一転】SMAPブレイク前夜に飯島三智マネージャーが起こした「歴史的な転換」』</a>では、SMAPが大ブレイク前にしていた意外な仕事と、彼らが駆け上がってきた道のりを取り上げる。</p>
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中森明夫

菊地弘一

デビュー直後から苦難に見舞われるSMAP。それは、ある重要な要素に見放され続けたからだった。そんな彼らを変えようと、ひとりの事務員が立ち上がる。

【ジャニーズの失格者とも】デビュー直後のSMAPを崖っぷちへと追い込んだ「裏切り者」の正体

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