<h3><span class="strongInContent">世界情勢や政治が不透明で不安定な今…自ら「情報収集」や「判断」はできるのか？</span></h3>
<p>これまでの運用資産への非課税優遇をさらに拡大する制度「新NISA」が’24年から始まる。</p>
<p>長く続いたデフレ経済では、資産を運用せず預金にするだけでもよかったが、物価が上昇するインフレ時代を迎えて、預金は資産価値が目減りしていく。そんな状況で、新NISAの活用に乗り遅れるな、といわんばかりに、一般人に投資を促す話があちこちで大流行だ。</p>
<p>プロの投資家であれば、経済や投資環境に関係なく、常にどんな投資をすればいいのかを考えるのだろう。一方、経済や投資知識の乏しい一般人がいま、投資するのにふさわしいタイミングなのだろうか。</p>
<p>何十年という期間で運用するなら、状況を少し冷静に見極めるタイミングがあってもいい。一般人にとって、いまはそういうタイミングなのかもしれない。</p>
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<h3><span class="strongInContent">「長期投資なら大丈夫と言われても、相場は必ず右肩上がりになるわけではありません」</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p><span class="strongInContent">「日本の株価は’24</span><span class="strongInContent">年前半にかけて下落し、後半に持ち直す可能性があります」</span></p>
<p>こう話すのは、みずほリサーチ＆テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミスト。投資環境については当面、慎重に見極めてもいいかもしれないという見方が、専門家からも出ている。</p>
<p>これまで貯蓄中心だった一般人が、資金を投資に振り向けることについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、こんな見方をしている。</p>
<p><span class="strongInContent">「投資は安定した環境で、正常な金融市場でするものです。いまは、どれをとっても不安定です。新NISA</span><span class="strongInContent">を利用した長期投資なら大丈夫と言われても、相場は必ず右肩上がりになるわけではありません」（荻原博子さん・以下同）</span></p>
<p>株式市場については「非常にゆがんでいます」と、荻原さんは指摘する。</p>
<p>日本の株式市場で大口の投資家といえば、金融政策の手法としてETF（指数連動型上場投資信託受益権）で株を大量に買い入れている日本銀行のほか、年金基金（年金積立金管理運用独立行政法人）、そして外人投資家だ。これら投資家の存在感が大きく、株式市場で個人投資家の影が薄い。</p>
<p><span class="strongInContent">「そこに一般人が新NISA</span><span class="strongInContent">で呼び込まれることになります。特に、外人投資家などプロは逃げ足も速く、勝ち逃げされて、一般人が取り残されることになると罪深い」</span></p>
<figure id="attachment_349900" aria-describedby="caption-attachment-349900" style="width: 734px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5ff3b685"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/0fb8bb9b7da0d47346a268f5b489fddf.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349900" class="wp-caption-text">「投資は安定した環境で、正常な金融市場でするものです」と言う荻原さん。現在の日本の株式市場については「非常にゆがんでいます」と指摘する（PHOTO:：共同通信）</figcaption></figure>
<p>荻原さんは、いまの世界情勢や政治が不透明で不安定になっていて、「投資する状況なのか」と疑問を持っている。</p>
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<p>たとえば、ウクライナ戦争は泥沼の状態になっている。イスラエルとパレスチナの対立を受けて、スエズ運河に通じる紅海で、アラビア半島南部のイエメンの反政府組織「フーシ派」がイスラエル寄りとみている商船を攻撃するなどで、国際物流への影響が懸念されている。日本の政治に目を向けると、政権の支持率が低下しており、先行きの不透明感が強まっている。</p>
<p>一般人は投資をするよりも、借金を抱えている人が多く、荻原さんは「まず借金を返済したほうがいい」と話す。特に、住宅や教育などのローンを抱えている働き盛りの世代を意識している。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="’24年は投資判断が難しい１年に？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">米国経済が減速、日本の実質賃金はマイナス…’24</span><span class="strongInContent">年は投資判断が難しい１</span><span class="strongInContent">年に</span></h3>
<p>国内外の経済は’24年に向けて、どうなるのだろうか。エコノミストの酒井さんは、世界経済をけん引するのは米国と中国で、中国は不動産バブル崩壊で経済の調整が長引くという。もう一方の米国について、酒井さんは次のようにみている。<span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「’24</span><span class="strongInContent">年前半は米国経済が減速していき、株価にはネガティブとなりますが、その後は政策金利の利下げが視野に入り、株価にポジティブとなるかもしれません」（酒井才介さん・以下同）</span></p>
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<p>米国では消費が減速し、インフレ率も鈍化してきているという。人手不足は女性や移民が労働市場に入ってきていることで、供給面の制約が解消に向かっているとも。</p>
<p>日本の経済はどうなるのか。政府が強く期待する企業の賃上げは、’24年の春闘で前年以上の引き上げとなる可能性もあるという。</p>
<p>酒井さんは、人手不足の深刻化や、輸出産業を中心とした企業収益の好調、賃上げせざるを得ないような雰囲気が社会的にあると指摘する。日銀は春闘の賃上げ状況を確認したタイミングで、金融機関が日銀に預ける一部の預金への「マイナス金利」を解除する可能性があるとみている。</p>
<figure id="attachment_349901" aria-describedby="caption-attachment-349901" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cd0be1b4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/6c1a0683093ef6293d9a70cc333b2283.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349901" class="wp-caption-text">日銀は12月19日の金融政策決定会合で、金利を極めて低い水準に抑える現行の大規模な金融緩和策の維持を全員一致で決めた。低金利で経済を下支えし、’24年春闘での賃上げを後押しする（PHOTO:共同通信）</figcaption></figure>
<p>一方、日本の国内総生産（GDP）は７～９月期で、個人消費の不振からマイナスとなっている。</p>
<p>酒井さんは「実体経済が弱い」と話す。物価上昇分を差し引いた実質賃金はマイナスが続いており、実質賃金がプラスに転じるのは’24年後半になると予想する。</p>
<p>酒井さんはこうした見方に基づき、日本の株式市場について、’24年前半にかけて下落、後半にかけて持ち直す展開を予想している。</p>
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<p>いまのタイミングで、一般人が投資を始めることについて、酒井さんはこんな見方をしている。</p>
<p><span class="strongInContent">「日本人は一般的に、金融のリテラシー（知識・判断能力）が十分なのでしょうか。米国と違い、金融のリテラシーが低いのではないでしょうか。</span></p>
<p><span class="strongInContent">新NISA</span><span class="strongInContent">は投資をするきっかけになりますが、自ら情報にアクセスして、経済環境や金融政策、為替変動のリスクなどをしっかり判断していく必要があります」</span></p>
<p>荻原さんも「国が投資教育を十分にしてこなかった」と話し、これまで貯金を奨励するばかりだったと指摘する。</p>
<p>資金に余裕のある人が投資をするのは、悪いことではない。投資は自己責任であり、おいしい話がころがってくるわけでない。知識や判断能力も必要で、投資するタイミングも大切になる。新NISAの開始ばかりに目を奪われず、投資するならば、勉強しながら情報を収集し、タイミングを判断していきたい。</p>
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<p><span class="strongInContent"><span class="strongInContent">荻原 </span></span><span class="strongInContent"><span class="strongInContent">博子</span>　</span>経済ジャーナリスト。1954年、長野県生まれ。大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。以降、経済ジャーナリストとして活動。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説する第一人者として活躍。</p>
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浅井秀樹

プロの投資家であれば、経済や投資環境に関係なく、常にどんな投資をすればいいのかを考えるのだろう。一方、経済や投資知識の乏しい一般人がいま、投資するのにふさわしいタイミングなのだろうか。

新NISAに惑わされるな…「一般人は、まず借金を返済したほうがいい」と経済ジャーナリストが説く訳

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