「テレビ不況でタレントのギャラは下がる一方…」令和の芸能事務所に問われる経営センス
連載 スタッフは見た!週刊「テレビのウラ側」Inside story of Television
3月27日、壇蜜(43)らが所属していたフィットが破産手続きを開始したと大きく報じられた。4月1日には、吉岡里帆(31)らが所属していたA-Teamが芸能部門の業務休止を発表するなど、芸能事務所の破産や休業が相次いでいる。
フィットはグラビアアイドルブーム真っ只中の’95年に設立。’00年代には、系列事務所に所属していた乙葉(43)がブレイク。その後も杉原杏璃(41)や壇蜜らの成功で存在感を発揮していた。
「グラビアで名前を売ってバラエティに進出するという戦略で一世を風靡しましたが、AKB48や坂道シリーズが台頭してからは、グラビアアイドルが活躍できる場そのものが減りました。自社で番組制作会社を作るなど、新たな事業を生み出すことにチャンスを見出そうとした時期もありましたが、結局うまくいきませんでした」(制作会社ディレクター)
A-Teamは辣腕で知られた創業者社長が’18年に亡くなってから、伊藤英明(48)や松本まりか(39)ら、有力タレントが次々と去り始めた。
「吉岡が事務所の稼ぎ頭でしたが、彼女を長年担当していたマネージャーも、神尾楓珠(25)が辞めたタイミングで退社。吉岡が事務所を去るのは、時間の問題だと言われていました。社長の死後、親族が事務所の運営に口を挟むようになってから歯車が狂い始めたといいます。素人に引っ掻き回されて、タレントも辟易していたのだとか……」(芸能プロ幹部)
この芸能プロ幹部は「今後も芸能事務所の倒産や休業は増えるでしょう」と指摘する。
「元SMAPのメンバーを使わないようテレビ局に圧力をかけた疑いで旧ジャニーズ事務所が公正取引委員会から注意を受けてからは、どこの事務所も所属タレントの独立を止められなくなりましたからね……。吉本興業やホリプロら大手は、番組制作にもかかわるなど、関連業務でも稼げている。ちょっとタレントが抜けたくらいで、経営は揺らぎません。ところが、ほとんどの芸能事務所は小さな組織。売れっ子タレントに依存している事務所は、タレントの独立が経営を直撃するのです」
中小の芸能事務所の中には、生き延びるために大手企業の傘下に入るところも増え始めているという。
「オダギリジョー(48)や河合優実(23)らが所属する『鈍牛倶楽部』は、’17年に木下グループの傘下に入っています。オスカープロモーションから独立した米倉涼子(48)も、前事務所時代から彼女を支えてきた敏腕マネージャーと袂を分かち、木下グループの木下直哉社長が彼女の事務所を取り仕切っていると聞きますよ」(キー局プロデューサー)
芸能事務所が生き残っていくには、「サイドビジネスを行わないと厳しい」と前出の芸能プロ幹部は分析する。
「テレビ不況で、俳優やタレントのギャラは下がる一方ですからね。大手のアミューズは舞台制作を行うほか、楽曲版権も多数所有。スターダストプロモーションの関連会社は化粧品事業に本格参入しています。タレントマネジメント事業だけに依存することは危険なのです」
令和の芸能事務所には、経営センスも問われるのだ。
『FRIDAY』2024年5月3日号より
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- PHOTO:村田義人