’60年三重県生まれ。'80年代半ばから「新人類」として注目を集め、「おたく」という語の生みの親としても知られる。ペンネームの由来は中森明菜。近著に『推す力／人生をかけたアイドル論』(集英社新書)、『TRY48』（新潮社）など

中森明夫

【ジャニーズ史上最大のスキャンダル】解雇された同僚を横目に…滝沢秀明が乗り越えた「屍たち」の正体

【ジャニーズを全米１位に…】死から５年…滝沢秀明が実現したジャニー喜多川の「かなわぬ恋」

欲望のジャニーズ論

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<h2>堂本光一への「あこがれ」</h2>
<p>滝沢秀明は〈小さなジャニーさん〉と呼ばれていた。芸能活動を引退して、ジャニーズ事務所の副社長を務めるよりはるか前のこと。13歳でジャニーズ入りして、中学生でJr.のリーダーだった頃からだ。まさに〈ジャニーズの申し子〉である。</p>
<figure id="attachment_380659" aria-describedby="caption-attachment-380659" style="width: 1894px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="363fa688"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/373c8038cb9379cb9ef2cf1c2b7b006b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-380659" class="wp-caption-text">『太陽の季節』（TBS系）のロケで肉体美を披露する滝沢</figcaption></figure>
<p>ジャニーズ・アイドルの「あるある」を考えてみたい。</p>
<p>〈姉が勝手に事務所へ履歴書を送った〉というやつである。KinKi Kidsの堂本光一・剛、両者の姉が同時期に送っていたことは有名だ。さらには滝沢とタッキー＆翼を組んだ今井翼もまた、姉が事務所に応募している。</p>
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<p>まず、姉がいる弟であること。これが重要なのだ。たとえば嵐では、大野智、二宮和也、松本潤の３人に姉がいる。幼い男の子が、自発的にジャニーズに入りたい、と望むのは稀だろう。たいていはサッカーや野球、バスケなどスポーツ選手に憧れるのではないか？（滝沢秀明はプロレスラーになりたかったという）</p>
<p>まず、姉がいて、その姉がジャニーズのアイドルのファンであった。そうして、ある日、自分の弟がジャニーズに入れるのではないか？　と気づくのだ。これを〈ジャニーズ姉弟連鎖の法則〉とでも名づけたい。</p>
<p>滝沢秀明にも姉がいた。KinKi Kidsのファンだったそうである。姉が勝手に履歴書を送ったわけではない。KinKiのライブから帰ってきた姉が「秀明ぐらいの男の子がバックでたくさん踊っていたよ」と伝えたのだ。それを聞いて、自身で履歴書を送ったという。’95年４月にオーディションを受け、その翌月には『ミュージックステーション』でKinKi Kidsのバックで踊っていた!?　すごい。姉の言葉を即座に実現した、優秀な弟だったというわけである。</p>
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<p>タッキー＆翼の今井翼が滝沢の家へ遊びに行ったら、部屋の一面に堂本光一のポスターが貼られていて驚いたという。光一に熱烈に憧れていた。<span class="strongInContent">「もし女性だったらジャニーズの誰とつき合いたい？」</span>と訊かれ、即座に<span class="strongInContent">「僕は堂本光一くんですかね」</span>と答えている。</p>
<p>しかし、“タッキー”というその愛称を考えたのは、実は堂本剛なのだ。最初は嫌だったそうだが、やがてそれを受け入れ、“タッキー”は万人に愛される称号となった。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ヒガシとの共通点"></div>
<h2>東山紀之とも重なる「生い立ち」</h2>
<p>堂本剛はジャニー喜多川に<span class="strongInContent">「ユーは、天才だよ！」</span>と絶賛された、いわゆるオキニ（お気に入り）だ。滝沢秀明は、剛以来のジャニーのスペオキ（スペシャルお気に入り）だといわれている。</p>
<p>他方、堂本光一は<span class="strongInContent">「ユーは、最悪だね」</span>とジャニーに冷たくされた。光一は悩み、自らの道を模索する。それはジャニー喜多川の最大の夢、ステージで歌い踊る少年たちを輝かせること――やがて舞台演出や座長を務めることになった。</p>
<p>それを受け継いだのが、滝沢秀明である。Jr.のリーダーから『滝沢歌舞伎』の座長へ。憧れの光一の後を追っている。堂本剛以来のジャニーのオキニであり、かつ堂本光一の資質を受け継ぐ。つまり滝沢秀明はKinKi Kidsの両者の才能を、たった一人で体現しているのだ。</p>
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<p>幼い頃に両親が離婚して、父親が家を出ていった。その後、母と暮らす。ひどく貧しい生活で、食べるもの、着るものにも困窮したという。こんな滝沢秀明の壮絶な生い立ちは、ジャニーズファミリーの「長男」、東山紀之の幼少期を想起させる（自伝『カワサキ・キッド』で赤裸々に告白していた）。</p>
<figure id="attachment_380660" aria-describedby="caption-attachment-380660" style="width: 1046px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e1b49240"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/a28f2218c6ec61d0faca803dda7d13d6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-380660" class="wp-caption-text">SMILE-UP.の社長である東山紀之</figcaption></figure>
<p>東山は３歳の時、両親が離婚して、父親の顔も名前も知らないという。極貧生活から脱出するため、ジャニーズでがんばり抜いた。タッキーとヒガシ、この両者は森光子と舞台で共演して寵愛を受けてもいる。</p>
<p>ジャニーズファミリーの「長男」から、芸能界を引退して事務所の社長に転じた東山紀之。同じくJr.のリーダーから座長、やがて芸能活動を引退して副社長となった滝沢秀明。その生い立ちだけでなく、両者の軌跡はあまりにもよく似ている。</p>
<p>しかし、明確に異なる点があった。東山は社長就任の会見で記者らに厳しい追及を受けている。過去に後輩に対するひどいハラスメントがあったという。「人望の無さ」を批判する記事も多く見られた。</p>
<p>他方、滝沢秀明は人望が厚い。先輩・後輩問わず、ジャニーズの誰からも愛されている。両者の評判は、実に対照的なのだ。滝沢秀明が世間一般に大きく認知されたのは、’05年、NHK大河ドラマ『義経』の主役に抜擢された時だろう。22歳、（当時）最年少での大河ドラマ主役だった。</p>
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<p>若々しくも凜々しいその源義経の姿を見ながら、我が脳裏にひらめくものがあった。33年前の大河ドラマを想起したのだ。『新・平家物語』である。そこで平清盛の弟、経盛役でジャニーズ事務所の新人タレントがデビューした。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="“一人KinKi Kids”の称号"></div>
<h2>「強い愛」がありながら離脱した背景</h2>
<p>郷ひろみである。16歳だった。光り輝くばかりのその美少年ぶりが話題を呼び、『男の子女の子』で歌手デビューすると、一躍、超人気アイドルとなった。</p>
<p>しかし、３年後、突如、ジャニーズ事務所を退所する。なんとジャニー喜多川が重病で入院中に他事務所へと電撃移籍を果たしたのだ。</p>
<figure id="attachment_380661" aria-describedby="caption-attachment-380661" style="width: 643px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4f852ab3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/07/9c853ab2eaf088b6e55ea99c1cd2ef93.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-380661" class="wp-caption-text">郷ひろみはジャニー喜多川から高く評価されていた</figcaption></figure>
<p>これはジャニーにとって生涯の痛恨事だったという。トップスター・郷ひろみに逃げられ、事務所は傾き、長らく低迷するに至った。’80年代の“たのきん”ブームで再浮上するまで苦しんだという。</p>
<p>ジャニー喜多川の死後、郷ひろみは『中居正広の金スマスペシャル』（TBS系）にゲスト出演した。その後、まったく交流の途絶えたジャニーに対する想いを語り、涙を流したのだ。</p>
<p>それにしても――。大河ドラマで平清盛（平家）の弟役だった郷ひろみと、源頼朝（源氏）の弟役だった滝沢秀明。そこには何か運命的なものを感じないではいられない。</p>
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<p>しかも、郷がジャニー喜多川を「裏切った」のに対して、滝沢はその最後までジャニーへの愛を貫いたのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「僕はやっぱり……ジャニーズが好きなんですよ。本当に。ジャニーズが好きで、もっと良くしたい。そして、ジャニーさんが思い描いているものを形にしたいという思いが強かった」</span>（「週刊新潮」’18年10月４日号）。</p>
<p>芸能界を引退して、裏方に徹すると表明した時の滝沢秀明の言葉だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「私は驚きと共に嬉しくて涙がこぼれそうでした」</span></p>
<p>とジャニー喜多川はコメントしている。</p>
<p>さて、滝沢秀明とは何者だったか？　姉にとっての優秀な弟であり、父を知らず、貧しく壮絶な環境から脱出するため努力しぬいた。仲間たちに愛された。</p>
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<p>そうして彼は歴代ジャニーズの突出した才能たちを、はるかにアップデートした存在となったのだ。決して裏切らない郷ひろみであり、人望の厚い東山紀之であり、堂本剛と光一、両者の美点を併せ持つ “一人KinKi Kids”である。</p>
<p>まさに、スーパージャニーズ！</p>
<p>かつて〈小さなジャニーさん〉と呼ばれた少年は、時を経て、遂にジャニー喜多川その人の魂を受け継ぐ最後の者となったのだ。その滝沢秀明が、なぜ、ジャニーズ事務所を離れなければならなくなったのか？</p>
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<p>次の記事『<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/379216">【ジャニーズ史上最大のスキャンダル】解雇された同僚を横目に…滝沢秀明が乗り越えた「屍たち」の正体</a>』では、ジャニーズ事務所史上最大のスキャンダルといわれる「未成年Jr.飲酒パーティー事件」と滝沢秀明との因縁を詳報する。</p>
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西圭介、共同通信社

滝沢秀明は＜小さなジャニーさん＞と呼ばれていた。芸能活動を引退して、ジャニーズ事務所の副社長を務めるよりはるか前のこと。13歳でジャニーズ入りして、中学生でJr.のリーダーだった頃からだ。

【ひとりKinKi Kidsとの呼び声も】滝沢秀明を「小さなジャニーさん」にした衝撃の生い立ち

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