朝ドラ一「あきらめない家族」の物語…『まんぷく』感動のラスト! | FRIDAYデジタル

朝ドラ一「あきらめない家族」の物語…『まんぷく』感動のラスト!

作家・栗山圭介の『朝ドラ』に恋して 第12話

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『居酒屋ふじ』『国士舘物語』の著者として知られる作家・栗山圭介。人生の酸いも甘いも噛み分けてきた男が、長年こよなく愛するのが「朝ドラ」だ。毎朝必ず、BSプレミアム・総合テレビを2連続で視聴するほどの大ファンが、週ごとに内容を振り返る。今回は大人気放送中の『まんぷく』第25~最終週から。

NHK連続テレビ小説「まんぷく」公式サイトより
NHK連続テレビ小説「まんぷく」公式サイトより

時代の先を行き過ぎた「まんぷくラーメン」

マラソンに喩えるならば競技場に入ってからのラスト数百メートル。2時間強にもおよぶレースの残りわずか数分で、劇的な展開を見せるのが朝ドラの持ち味だ。

スタートから足並みを揃えて並走する萬平(長谷川博己)と福子(安藤サクラ)に沿道から声援を送り、特にはペースメーカーとなって風を避け、給水所でドリンクを手渡したキャストたちが、手を取り励まし合いながら難コースを走破する。ラストスパートで蘇る走馬灯にさまざまな思いを巡らせながら、萬平と福子は笑顔のゴールへと向かった。

25週。フリーズドライの食材、カップを密閉する蓋、カップの底の麺が折れてしまうことなど、完成間際の『まんぷくヌードル』には問題が山積される。しかし萬平は福子の何気ない言葉にヒントを得て、難題をひとつひとつ解決し、ついに『まんぷくヌードル』は完成する。残る課題は100円で売れるかどうか、それだけだ。

最終(26)週。画期的な『まんぷくラーメン』は話題になるものの一向に売れず、真一(大谷亮平)や神部(瀬戸康史)ら幹部も弱気になり、世良(桐谷健太)は断固値下げを要求するが萬平は折れない。そこで営業部長の岡(中尾明慶)は深夜に仕事をする人たちをターゲットに『特別販売ルート』を提案する。人手が足りず営業に駆り出された神部は妻のタカ(岸井ゆきの)に不満を漏らした。

「まんぷくヌードルは俺らの自信作や。せやけど値段が高くて売れへんのや。俺らが営業に駆り出されたところで何の意味もないわ」

崩れそうになる神部との絆、社員の不満、売れない商品……
悩み多き萬平は、ある日の夕食時に、ボウリングをしてから外で食事をしてきた幸(小川紗良)に一喝した。

「女の子がアルバイトや遊びにかまけてだらしない生活をするんじゃない!」
「女の子やから何? 女の子やからこれはダメ、あれはダメっていうのはもうナンセンス。男女は平等やの。お父さんは画期的な『まんぷくヌードル』作ったって言ってるけど、私たちが何を考えてるかは全然知らないやない! もう頭が古いんよ」

萬平と言い争う幸に時代の変貌を痛感する福子は、翌日から周囲に意見を聞いてまわった。

「古い時代には理解できんほど『まんぷくヌードル』は新しいいうことです」

牧(浜野健太)の言葉が福子の心に響き、新たなヒントへと繋がっていく。

鈴、まさかの生前葬!

一方、最後までお騒がせな鈴は、夢枕に立った咲の言葉に感化され生前葬をすることに。最終回を前にして、今作にバランスよく散りばめられたコメディの大放出かと思いきや、そこには家族、親族、仲間といった、『大切な人たち』の思いが溢れていた。

人は大切な人を亡くしたときに、それまで言えなかった想いをはじめて言えるのかもしれない。「お母さんの娘でほんまによかった」と涙ながらに言う克子(松下奈緒)。福子は咲の写真を抱いてあいさつした。

「私はお母さんに心配かけてばかりやった。私がいちばん困らせたのは萬平さんとの結婚やったかもしれません。せやけどお母さんは萬平さんを受け入れてくれた。山あり谷ありの私たちに、お母さんは文句言いながらも一緒に居てくれました。心から感謝しています」

武士の娘たちは鈴の誇りであり、夫を支える、ええ女房。葬儀の最後に萬平が鈴に礼を言った。

「お母さんには本当に心配をかけてしまいました。これからもまだまだ何が起こるかわかりません。でも大丈夫です。僕には信頼できる仲間がいます。家族、親族、福子がいます。お母さんには何よりも福子を産んでくださったことに感謝しています。本当にありがとうございました」

それが萬平の感謝でありラストスパートへの決意だった。ハラハラさせながらも最後まで鈴を死なせない作り手の愛情、生前葬という驚きの展開でみせた家族のラブシーンに、『まんぷく泣き笑い劇場』の真髄をみた。福子、克子、萬平、世良の弔辞は、とびっきりのラブレターにとなり、鈴の心をまんぷくにした。

そして大団円へ……

牧や周囲の言葉にヒントを得た福子は、「『まんぷくヌードル』を源や幸のように若い世代に売り出したらどうでしょう」と萬平に提言する。

「まんぷくヌードルは歩きながらでも食べられる。せやけどお母さんたちはそんな行儀の悪いことはしません。まんぷくヌードルの価値を本当に分かるのは頭の柔らかい人たちです

福子の思いを聞く萬平の手元には歩行者天国の新聞記事があった。

「歩行者天国は自由の象徴、まんぷくヌードルも自由の象徴なんだ。街で歩きながらまんぷくヌードルを食べてくれるのは若者なんだ」

幸の反抗が、福子の提言が、ひとつのチャレンジに辿り着く。立花萬平は決してあきらめないのだ。そして歩行者天国で『まんぷくヌードル』は完売し、街で食べ歩きをしながらテレビに映し出される若者たちが社会現象となり、『まんぷくヌードル』は空前の大ヒット商品となっていく。立花萬平の発明は、時代の境界線を越えたのだ。

「僕は萬平くんに出会わせてくれた縁に、心からありがたいと思ってるんや」
「萬平さんに出会えたことは僕の人生の宝です」

真一、神部との抱擁、「大好きや」と荒々しく肩を抱く世良の言葉が今作の紆余曲折を物語る。

「ありがとう福子」
「そやけどこれで終わりじゃないんでしょ」
「ああ、福子が一緒にいてくれるかぎりはな」
「私はずっと萬平さんと一緒です」

ラストシーンが終わった瞬間に、すべては想い出となる。『まんぷくロス』なるものが込み上げてくるとしたら、それはまぎれもなく視聴者の心がまんぷくになった証である。

<「まんぷく編⑪」

朝ドラに恋して「なつぞら編」 第1回はコチラから

  • 栗山圭介

    1962年、岐阜県関市生まれ。国士舘大学体育学部卒。広告制作、イベントプロデュース、フリーマガジン発行などをしながら、2015年に、第1作目となる『居酒屋ふじ』を書き上げた。同作は2017年7月テレビドラマ化。2作目の『国士舘物語』、3作目の『フリーランスぶるーす』も好評発売中

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