終盤戦の『まんぷく』を見て感じた、瀬戸康史の圧倒的な成長

作家・栗山圭介の『朝ドラ』に恋して 第11話

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『居酒屋ふじ』『国士舘物語』の著者として知られる作家・栗山圭介。人生の酸いも甘いも噛み分けてきた男が、長年こよなく愛するのが「朝ドラ」だ。毎朝必ず、BSプレミアム・総合テレビを2連続で視聴するほどの大ファンが、週ごとに内容を振り返る。今回は大人気放送中の『まんぷく』第23~24週から。

NHK連続テレビ小説「まんぷく」公式サイトより

新商品開発チームが発足!

朝ドラのほとんどは心温まる家族の物語だ。子どもが苦しいときには親が寄り添い、そっと肩を抱き、髪を撫でる。愛してくれる人の体温を感じながら涙をぬぐい、子どもは、“ひとりじゃない”と立ち上がり大人の階段を上りはじめる。

ときに親はやさしく背中を押してやりたい気持ちに鍵をかけて、距離を縮めず這い上がれと鬼になる。今や萬平(長谷川博己)と福子(安藤サクラ)は家族のみならず『まんぷく食品』の父母であり、日本の食卓を豊かにするという夢に向かって社員たちを叱咤激励しながらひた走る。視聴者は感じはじめている。成功は遠くにあるほど素晴らしいものになる、と。

23週。まんぷくラーメン発売から11年。即席ラーメンが国民食となり、新商品開発に悩む萬平は、何気ない福子の言葉からカップ麺を思いつき新商品開発チームを発足させた。リーダーは神部(瀬戸康史)、萬平の長男・源(西村元貴)を抜擢したのは、源を育てたいという神部の願いからだった。

開発効率を考え、チームをスープづくり班、麺づくり班、容器づくり班に分けたものの研究はなかなか捗らない。そんな折、萬平は新商品を世界市場に向けて『まんぷくヌードル』と名付けるが、開発チームからは萬平についていけないと不満が募り、源もつい福子に弱音を吐いた。

「つくづくすごいと思うよ、お父さんは。でも天才の考えることについてくなんて僕には無理や」
「あなたの言うてることは言い訳にしか聞こえません」

福子は源に叱責し、萬平には源の心の内を伝える。

「源はやっと自分の甘さに気づいたんやと思います。あなたの期待に応えたいけれど、それに追いつかない自分に腹が立ってるんです。私はあなたが足を止めてあげるべきやと思います」

福子の言葉が山びこのように萬平の心にこだまする。見えなかった、いや、見ようとしなかったものを見つめ直した萬平が、はやる気持ちを抑えながらチームに言った。

「急がなくてもいい。じっくり考えてくれ。迷ったら相談してくれ。一緒にまんぷくヌードルをつくろう!」

萬平にとって福子の言葉は、どんな研究や発見よりも尊いものとなる。歪みかけていたチームが、またひとつ強く逞しくなった。

神部もまた敏腕プロデューサーに成長していた

24週。福子のアドバイスを受け容器は発砲スチロールに決定した。異臭や耐熱問題などの解決に奔走する源だったが、萬平からヒントを与えられ無事カップ問題を解決すると、難題だったスープの溶解度も解決した。

「よくやった。みんな本当によくやった」

厳格な父親から褒められたように喜ぶチームの面々。素朴な言葉が各々を鼓舞し、皆の心が強くなる。

「これを100円で売るんですか? 私やったら買いません」

発明の価値と市場価値は違うとでも言いたげな福子の言葉が、またも萬平の心を砕く。福子は課題を与えるだけではなく、土産を添えることも忘れない。過去の記憶を呼び戻し、さりげない鈴(松坂慶子)の独り言を萬平に伝えた。

「お湯をかけるだけで戻るネギやシナチクやチャーシューがないと」

萬平はヌードルを100円で売るために、3分で戻る具材を入れることを課題とした。研究は未知の領域へと入ったが、具材はなかなか見つからず、「まったく話にならん、もっと探せ!」と萬平がチームに檄を飛ばす。ピリピリした空気の中、うな垂れるチームに神部が言った。

「申し訳ない。俺のせいや。君たちが責任を感じることはない。せやけどあれだけ怒るということは社長は本気なんや。社長は俺たちを信じてくれている。君たちは期待されてるんや」

神部の成長もまた、この物語には欠かせないエッセンス。福子同様、神部も仲間をやる気にさせる腕利きプロデューサーに成長していた。しかしカップ素材は見つからず、自宅で胸の内をぶつける源に萬平がピシャリ。

「諦めるのが早過ぎる。俺はあきらめなかったからまんぷくラーメンができたんだぞ」
「絶対諦めるなと言われたかて、親父の言うことがみんな理解できへんのや」
「絶対に作ってやると言う執念、それが人をあっと言わせるものを作るんだ。僕は絶対に見つかると思ってる。もし見つからなかったら作ればいい」

そのひと言が目を覚まし、ついに源はフリーズドライ製法にたどりつく。

萬平と福子がたどり着いた夫婦の一つの理想像

一方、妹の幸(小川紗良)は、思いを寄せるレオナルド(ハリー杉山)のことで悩み、元気をなくしていた。

「何かあったの?」
「何もない」

強がる幸の心をほぐすように、福子は幸への思いを口にした。

「助けてほしいときは、“助けて”って言って。ひとりで抱え込まないで、幸っちゃん」

幸がレオナルドにフィアンセがいることを福子に伝えると、福子は幸の肩を抱き寄せて涙を流した。

男の見せ場が闘いならば女の見せ場は涙の共演だ。母娘の関係を飛び越え、女としての人生の先輩後輩として幸に寄り添う福子。髪を撫で、肩を叩き、額をつけて、愛を伝える。

「思いっきり泣きなさい。私はあなたのお母さんなんやから」

家族の問題に、ひとつひとつ丁寧に対峙する福子。あえて萬平はそこへ踏み込もうとはしない。それこそが夫婦の信頼の証であり、数十年連れ添ったふたりの阿吽の呼吸なのだ。

辛い夜が明けた朝、食卓のスクランブルエッグに源はひらめき、幸は久しぶりにお腹をまんぷくにして元気に出かけて行った。晴れやかな週のはじまりにひとつだけ気がかりなのは、予告編でみた鈴さんである。個性ある演技、愛されるキャラクターで、その存在をアイドルへと変えた鈴さんを、我々はまんぷくヌードル完成への進捗状況とともに、慎重に見守らねばならない。

<「まんぷく編⑩」 「まんぷく編⑫」>

朝ドラに恋して「なつぞら編」 第1回はコチラから

  • 栗山圭介

    1962年、岐阜県関市生まれ。国士舘大学体育学部卒。広告制作、イベントプロデュース、フリーマガジン発行などをしながら、2015年に、第1作目となる『居酒屋ふじ』を書き上げた。同作は2017年7月テレビドラマ化。2作目の『国士舘物語』、3作目の『フリーランスぶるーす』も好評発売中

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