<figure id="attachment_45838" aria-describedby="caption-attachment-45838" style="width: 1125px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="598029c2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/c8e8844e38d46f46763cb781c51341a7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45838" class="wp-caption-text">GUNDAM / Mobile FLAT / Diana Counter『∀ガンダム』　© Syd Mead, Inc. © 創通・サンライズ　「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」　2019年4月27日（土） ～　5月19日（日）　アーツ千代田 3331 / 1Fメインギャラリーにて開催</figcaption></figure>
<h2>■『ブレードランナー』も『エイリアン2』も　未来を描く巨匠シド・ミード</h2>
「シド・ミード展　PROGRESSIONS TYO 2019」が始まった。4月27日（土）〜5月19日（日）までおよそ3週間、世界的なインダストリアルデザイナーであるシド・ミードの業績を振り返る企画展だ（会場：アーツ千代田 3331）。
シド・ミードの名前を知らない人も多いかもしれないが、その活躍は数々のSF映画でお馴染みだ。『ブレードランナー』『エイリアン2』『トロン』といった傑作映画でミードのデザインを目にしているはずだ。これらの作品に共通するのは、未来を創造するビジュアル。これこそがシド・ミードである。
会場にはシド・ミードが在住する米国・パサデナから持ち込まれた数々のデザイン原画、イラストが並べられている。日本では34年ぶりの本格的な個展となるが、約150点もの量と質、そしてイラストレーションの素材のもろさもあり、今後は2度と実現しないという。
<figure id="attachment_45840" aria-describedby="caption-attachment-45840" style="width: 2400px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6c4aa15c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/b87105b2cec9fe41d3a6bdd6199394c7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45840" class="wp-caption-text">Downtown City Scape 『ブレードランナー』 © Syd Mead, Inc. © 1982 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45841" aria-describedby="caption-attachment-45841" style="width: 2988px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ea8636b7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/2f934efc8f26ce662f4c76ab2bddf869.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45841" class="wp-caption-text">Spinner Side Shot 『ブレードランナー』 © Syd Mead, Inc. © 1982 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.</figcaption></figure>
<h2> ■「ガンダム」「ヤマト」からホンダ、未来の東京湾まで　ミードが描いた日本</h2>
シド・ミードは世界的な巨匠である一方で、日本との関わりも大きい。60年以上におよぶキャリアのなかで手がけたプロジェクトの3割以上は、日本のためのプロジェクトだったとされる。
その題材はホンダの車やカメラ、スポーツフェア、東京や神戸の未来を描いたものなど様々だ。80、90年代にこうした仕事が集中するのは、当時の日本の未来志向が、シド・ミードがこだわる「未来のビジュアル」とマッチしたのだろう。展覧会の一角には「TYO SPECIAL」とタイトルして、日本関連の作品を多数展示する。
そして未来と言えば「SF」だ。「TYO SPECIAL」でとりわけスペースが大きいのは、『YAMATO 2520』と『∀（ターンエー）ガンダム』である。シド・ミードは、日本SFアニメの二大アイコンである『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』にも深く関わっている。
『YAMATO 2520』は「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの続編として、1995年にOVAとしてスタートしたが第3話で製作を中断、その後は映像ソフト化もなく幻の作品となっている。しかしミードはトータル6年間もデザインに関わった。数百枚ものスケッチを描き、思い入れの大きな作品だった。曲線が強調された威圧感もあるヤマトはミードなら。展示されたイラストからは、圧倒的な情熱と共にその威容を確認することができる。
<figure id="attachment_45845" aria-describedby="caption-attachment-45845" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="30bfd917"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/5c1d3a5374fbf7cb4534f26f9e9b5641.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45845" class="wp-caption-text">「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」内覧会より『YAMATO2520』のヤマトの威容（撮影：数土直志） 　2019年4月27日（土）～5月19日（日）アーツ千代田 3331 / 1Fメインギャラリーにて開催</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45849" aria-describedby="caption-attachment-45849" style="width: 5940px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c04b1e38"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/fe8f2d90e40fedc6f181b01632192127.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45849" class="wp-caption-text">YAMATO LOWER VIEW 『YAMATO2520』 © Syd Mead, Inc. © 東北新社／監修　西﨑彰司</figcaption></figure>
『∀ガンダム』もミードの業績、そして日本のメカデザイン史においても欠かせない。1999年のガンダムのデザインにシド・ミードの起用はかなりのサプライズであった。
20年前の∀ガンダムのメカデザインの評価はどうだっただろう。筆者の記憶では、正直あまり芳しいものではなかった。「これはガンダムではない」という反応も多かった。
ファーストガンダム誕生から20年経ち、当時ガンダムのメカニックデザインのイメージはかなり強固になっていたからだ。『機動戦士ガンダム』から直接つながる『機動戦士Ζガンダム』（1985年）、『機動戦士ガンダム　逆襲のシャア』（1988年）のガンダムデザインは、勿論、初代ガンダムRX-78の延長線上にあった。さらに宇宙世紀を舞台にしないガンダムシリーズである『機動武闘伝Gガンダム』（1985年）のシャイニングガンダム、『新機動戦記ガンダムW（ウイング）』（1995年）のウイングガンダムでも、RX-78のデザインは色濃く反映されていた。
ミードの描いた流線型のボディ、丸みを帯びた頭部は、あまりにも異質だ。それでも初期に∀ガンダムに想定されていたのはスモーと呼ばれるさらに丸く、凹凸の少ないメカだったとされている。そもそもが、従来のガンダムのデザインに対して挑戦的であった。
<figure id="attachment_45853" aria-describedby="caption-attachment-45853" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7fea6454"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/2cfb1ce659ce99445121d05735692b5f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45853" class="wp-caption-text">「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」内覧会より　『∀ガンダム』の威容（撮影：数土直志）</figcaption></figure>
<h2>■　「『∀ガンダム』をシド・ミードで」は富野由悠季監督のアイディア</h2>
「∀ガンダム」にシド・ミードを起用するアイディアは、実はガンダムの生みの親である富野由悠季監督からのものだ。
今回の企画展の実行委員会の代表で、20年前に『∀ガンダム』のプロデューサーでもあった植田益郎さんは、「『∀ガンダム』ではガンダムシリーズ20周年企画とされるなかで柱となる新しいものを求めていた」と話す。その流れのなかでモビルスーツのデザインを考えた時に、富野監督から「シド・ミードにガンダムのデザインをお願いできないか」と提案があったという。
シド・ミードは当時すでにメカニックデザインの大御所。ところがミード側につながりのあるバンダイビジュアル（当時）の渡辺繁さんが打診したところあっという間に快諾、トントン拍子に話が進んだ。苦労したのはその後で、「その先が大変だった」と渡辺繁さんは苦笑いする。
<figure id="attachment_45854" aria-describedby="caption-attachment-45854" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0d92ffd0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/f8caa469bfc74c7eb0b2ae3dbd91c7e8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45854" class="wp-caption-text">「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」内覧会にて会見するキュレイターの松井博司氏（写真左から）、植田益朗実行委員長、渡辺繁企画総合プロデューサー　（撮影：数土直志）</figcaption></figure>
「ガンダム」を「ガンダム」として成り立たせるデザインについて、”目があること“　”アンテナがあること“ ”赤・青・黄のトリコロール“と聞いたことがある。そうであれば、一見はヒゲのように見えるアンテナも含めて、∀ガンダムは間違いなくガンダムだ。
逆に言えば、それが揃ってさえ∀ガンダムはシド・ミードの強烈な個性を感じさせる。むしろそうした異質感こそを、富野監督は当時のガンダムに求めていたのである。
ガンダム20周年からさらに20年がたち、ガンダムは今年40周年を迎える。そのなかでミードガンダムは、際立った個性としてむしろ愛され、強烈な個性を発揮し、輝きを増すようになった。シド・ミードのデザインの真骨頂である。
見どころの多い「シド・ミード展　PROGRESSIONS TYO 2019」だが、『∀ガンダム』はとりわけ押さえておきたいセクションだ。
<figure id="attachment_45855" aria-describedby="caption-attachment-45855" style="width: 2888px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a6c511be"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/21cc4d44b98de60e279acce6304a2551.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45855" class="wp-caption-text">Johnny Five Robot 『ショート・サーキット』 © Syd Mead, Inc. © 2007 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45856" aria-describedby="caption-attachment-45856" style="width: 3167px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d5cdf532"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/44366d50160e611b0a8243a434fc0cf7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45856" class="wp-caption-text">Enterprise &amp; V&#8217;ger entity『スタートレック』© Syd Mead, Inc. © Paramount Pictures. All Rights Reserved.</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45861" aria-describedby="caption-attachment-45861" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a36119b6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/741a86ffa9123144dfcae14a0dc4908c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45861" class="wp-caption-text">Grand Hotel 『ブレードランナー2049』 © Syd Mead, Inc. © 2017 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45864" aria-describedby="caption-attachment-45864" style="width: 1200px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="52a1521b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/d169587a71fd4ae0c4b71e594ac852b5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45864" class="wp-caption-text">City On The Magabeam© Syd Mead, Inc</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45865" aria-describedby="caption-attachment-45865" style="width: 2160px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0ae06329"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/04/d78339b8ca36de9e384a13790f2226d1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45865" class="wp-caption-text">Running of the Six Drgxx © Syd Mead, Inc</figcaption></figure>
<figure id="attachment_45866" aria-describedby="caption-attachment-45866" style="width: 525px" class="wp-caption aligncenter"><a href="#" data-ident_hash="4486cc4e"><img src="https://res.cloudinary.com/gsjebzejhjubm/image/private/s--S68SrW8o--/t_article_image/h_525,w_525/v1556375238/SydMeadHeadshot_dkslmq.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-45866" class="wp-caption-text">シド・ミード　Photo: Jenny Risher</figcaption></figure>
<h3>シド・ミード ｜ビジュアル・フューチャリスト </h3>
Sydney Jay Mead, Visual Futurist　
1933年7月18日、アメリカ合衆国ミネソタ州生まれ。フォードのカーデザイナーとしてキャリアを出発させるが、1970年に独立。未来志向でリアルなビジョンの数々は、彼を瞬く間に世界的なインダストリアルデザイナーへと押し上げる。その活躍はプロダクトデザインの領域に留まらず、1979年から始めた映画美術の仕事でも優れた成果を上げた。『スタートレック』（79）『トロン』（82）『ブレードランナー』（82）『2010』（84）『エイリアン２』（86）など、いまや誰もが知るSF映画の名作を手がけるレジェンド的存在である。近年も『ブレードランナー2049』（17）への参加が話題を呼ぶ。2016年、アメリカの視覚効果協会が主催するVES賞特別功労賞「ビジョナリー賞」受賞。

（すど　ただし）アニメジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ！アニメ！」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」（星海社新書）。

数土直志

「シド・ミード展　PROGRESSIONS TYO 2019」。天才デザイナー、シド・ミードの業績。映画『ブレードランナー』『エイリアン2』『トロン』、アニメ「ガンダム」「ヤマト」など。

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