初心者でも分かるラグビーのポジション 屈強な男たちフォワード編
スクラムの柱「プロップ」、セットプレーの要「フッカー」、強い男の象徴「ロック」、万能選手「フランカー」、花形「ナンバー8」
フォワードは「縁の下の力持ち」的な存在
ラグビーのポジションは大きく分けてフォワード(FW)とバックス(BK)の2つ。フォワードは、背番号1番から8番までの8人を指し、スクラムやラインアウト、ラックなどの密集戦でボールを獲得することが主な仕事になる。
相手と激しく接触する機会が多いため、体が大きくがっしりとした選手が務めるポジションだ。サッカーなどのイメージから、フォワードと聞くと「前線で攻撃する人」と想像しがちだが、ラグビーでは地味な場面でひたむきに体を張る「縁の下の力持ち」的な存在である。

スクラムを支える柱「プロップ」(1番&3番)

プロップ(PR)は「支柱」という意味で、柱となってスクラムを支えるポジションだ。何よりスクラムで相手を押し込む推進力が重要で、体重が重く、がっしりとしたパワーのある選手が務める。
最前線でスクラムを組む3人のうち両サイドの2人がプロップで、通常左に位置する1番が左プロップ、右に位置する3番は右プロップと呼ばれる。
スクラムでは両チームの一番前の3人が右肩を合わせて組むので、左プロップは自分の右側にしか相手がいないが、右プロップは両側を相手に挟まれる形になり、同じプロップでも1番と3番では体の使い方が大きく異なる。
また、スクラムはフォワード8人の結集させることが大切で、プロップが強ければスクラムを押せるというほど単純なものではない。「スクラムは別の競技」といわれるように、非常に奥が深いポジションなのだ。
セットプレーの要「フッカー」(2番)

スクラムでプロップの間に入るフッカー(HO)の重要な役割のひとつは、スクラムに投入されたボールを足で味方側へかき入れる(フッキングする)こと。フッカーの呼称はそこからつけられた。スクラムの強さだけでなく、片足で味方側にボールをかき入れるスキルも求められるポジションだ。
また、フッカーはラインアウトのスローワーを務めることも多い。ルール上は誰が投げてもいいが、4番から8番までの長身の選手をジャンパーにし、器用なプレーヤーが多いフッカーに投入役を任せるのが、もっともバランスがいいというのがその理由。
スクラムとラインアウトという大切な攻撃起点の要になることから、リーダーシップに優れた選手が多いのも特徴。世界的にも、フッカーがキャプテンを務めるケースは多い。
強い男の象徴「ロック」(4番&5番)

ラグビーにおいてもっとも頑健で勇敢な選手が務めるポジション、それがロック(LO)だ。
語源は「スクラムに鍵(Lock)をかけてしっかりと固定する人」。4番の左ロックと5番の右ロックが肩を組んでプロップとフッカーを押し、推進力を生み出すことが役割となる。
一般的にロックは長身選手が入ることが多く、世界の強豪国では身長2メートルオーバーの選手も少なくない。そのため、ラインアウトなどの空中戦は大きな見せ場のひとつ。
また、体格を生かしてラックやモールなどの密集戦で核になり、小競り合いが起これば真っ先に駆けつけて睨みをきかせるのも、ロックの大切な仕事だ。
誰よりも体を張ることが求められるロックは、強い選手の象徴。ラグビー王国ニュージーランドでは、男の子が最初に憧れるポジションといわれている。
プレーに絡む機会が多い万能選手「フランカー」(6番&7番)

フランカー(FL)は、ラグビーでもっとも多くの能力が必要なポジションのひとつ。
ボールを持って走る仲間を常にサポートし、いち早くラックに入って押し込んだり、パスを受けてさらに前進したりする走力に加え、密集戦で体を張るパワー、一発で相手を倒すタックルの強さ、さらにはチャンスとピンチを察知するゲームセンスも重要になる。
フランカーとは「側面を守る人」という意味で、スクラムでは左右の両サイドにつき、真っ先に次のプレーに参加するのが主な役割。
日本でフランカーといえば、代表キャプテンのリーチ マイケル選手が有名。プレー、メンタルの両面でタフさが求められるポジションだけに、フランカーがキャプテンを務めるケースは多く、世界最多のキャップ数148(国代表同士の正式な国際試合に出場した数)を誇るニュージーランドの国民的英雄、リッチー・マコウもフランカーだった。
フォワードの花形「ナンバー8」(8番)

ナンバー8(NO8)は文字通り8番を背負う選手。スクラムの最後尾からボールを持ち出して突破を図ったり、バックスに加わって走ったり、時にはキックも蹴ったりと、フォワードの中で一番自由度が高く、攻撃に参加することも多い花形ポジションだ。
フランカーとナンバー8の3人はスクラムの後方に位置することから「バックロー」と呼ばれるが、黙々と仕事をするタイプが多いフランカーに対し、ナンバー8はバックローの中でもっとも総合力が要求されるポジションになる。
ワールドクラスのナンバー8は身長190cm、体重110kgが標準的なサイズ。それでいてスピードがあり、パスなどでボールをつなぐスキルも巧みなのだから、ほとんど「スーパーマン」といっていい。
チームを象徴する存在だけに、ナンバー8の出来がゲームを左右することも少なくない。実際に試合でその奮闘ぶりを目にすれば、影響力の大きさを実感できるはずだ。
文:直江光信
1975年熊本市生まれ。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)
写真:アフロ