<figure id="attachment_82796" aria-describedby="caption-attachment-82796" style="width: 2272px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="42471091"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/9717bdf3f0217ac454d7b3bd5d21cc7b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-82796" class="wp-caption-text">浦和高校のグラウンドに集合したラグビー部の選手たち。公立の男子校のため女子はいない。スローガンは「謙虚に、ひたむきに」</figcaption></figure>
「早く、ボール出せ！　早く！」 
「低くタックルしろよ！」
夕陽のさすグラウンドに、ラガーマンたちの声が響く。今年６年ぶり３回目の全国大会（大阪府・花園ラグビー場）出場を決めた、埼玉県立浦和高校ラグビー部の選手たちだ。
浦和高は埼玉県随一の超進学校だ。今年の東大合格者数は41人を数え県内最多。京大、一橋、東工大など難関国公立大にも、２ケタの合格者を出している。スポーツ推薦はない。ラグビー部には51人の生徒が在籍するが、中学までにラグビー経験のある選手は各学年に１人ずついるだけ。なぜエリートばかりの秀才校が、経験者を多く集める強豪校を押しのけ花園出場を果たせたのか。監督の三宅邦隆氏（38）が話す。
「確かにウチの生徒たちは頭がいい。ある程度の努力をすれば、ソコソコの成功が得られるということがわかっています。しかし全国大会を目ざすなら、限界を超えなければなりません。入部してきた選手には、まずムリを強います。例えば毎年７月と８月に菅平高原（長野県）で夏合宿を行いますが、１時間近くひたすらランパス（数人一組が全力で走りながらパスする練習）を繰り返させる。キツイ練習で、中には泣き出す選手もいます。非効率的かもしれませんが、『この程度でイイや』という考えを捨てさせ優等生意識を壊すんです。限界を超えれば精神的に強くなれる。ツラい状況にも耐えるタフさが身に着くんです」
練習中、三宅監督が口を出すことは少ない。基本的に選手任せだ。
「選手から『どうしたらいいでしょう』と聞かれても、『それは自分で考えなさい』とあえてつき放しています。アドバイスしたい気持ちをガマンしてね。『勝つためにこうしろ』と指示するのは簡単です。しかし監督主導になると、選手は指示待ち人間になり成長しない。だから練習中から５～６人一組の“チームトーク”をさせ、常に自分たちで状況判断をさせるようにしています。あえて失敗させ、解決策を自分たちで考えさせているんです。自分で考えることに慣れれば、どんな状況でも的確な判断ができるようになります」
<figure id="attachment_82799" aria-describedby="caption-attachment-82799" style="width: 2378px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="38565ef7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/be00c9e0fdafe8fc1f2c2d7e3d002365.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-82799" class="wp-caption-text">取材に応える三宅監督。母校のラグビー部監督に就任して２年目。筑波大学卒業。教師としては地理歴史を教えている</figcaption></figure>
フィジカル面でのサポートも欠かさない。
「中には、中学まであまりスポーツをやったことのない生徒もいますからね。女子栄養大の先生と組んで、定期的に食事調査や栄養指導を受けています。効率的な食事のおかげで、３年間で20㎏も体重が増えて選手もいるんです。とは言え、強豪校との体格の差はあらがえません。実力が上の相手に気持ちよくプレーされれば、簡単にディフェンスラインを突破されるのは当たり前。だから考える時間を与えず、速くタックルする。一歩でも前でコンタクトして、攻撃態勢をとらせないようにしています」
浦和高のモットーは勉強、部活、学校行事の「三兎を追う」こと。平日の練習は夕方６時までの２時間半ほどで終え、選手たちは夜９時まで解放されている教室や図書館で勉強に励む。
「部活のために、勉強が疎かになっては困りますからね。選手たちには、練習と勉強の時間配分も自分で考えるように指導しています」
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今春はラグビー部から浪人の末、東大２人、京大２人、一橋１人、東工大１人の合格者が出た。現役の部員も難関大志望だ。ＳＨ（スクラムハーフ）の宮崎隆之介君（３年）が話す。
「ボクは東大に行きたいです。ラグビーと勉強以外していません」
京大工学部を志望するのは、ＬＯ（ロック）の阿讃坊元（あさんぼう・げん、３年）だ。
「練習後はずっと学校で勉強しています。家に帰ったら寝るだけですよ」
参考書持参で花園に乗り込む“ウラコー”。全国有数の進学校が、12月27日から始まる全国大会で初勝利を目指す。
<figure id="attachment_82802" aria-describedby="caption-attachment-82802" style="width: 2327px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ead37560"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/ac9513dea5facc61a1be8a5fb8837921.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-82802" class="wp-caption-text">浦和高ラグビー部が大切にする速く低いタックル。自分たちより身体の大きな相手を倒すには重要となるプレーだ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_82804" aria-describedby="caption-attachment-82804" style="width: 2464px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="63db17b0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/55275fbede0d12e434498551da27c360.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-82804" class="wp-caption-text">練習はしばしば中断され数人のグループにわかれ“チームトーク”が行われる。選手自身で問題が生じた時の解決策を考えるのだ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_82806" aria-describedby="caption-attachment-82806" style="width: 2419px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d5942824"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/8c5a3a4e9f746387067599cabab2858c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-82806" class="wp-caption-text">部室には初めて花園に出場した&#8217;59年当時の写真が掲げられていた。選手はみな明るく笑顔が絶えない</figcaption></figure>
<figure id="attachment_82808" aria-describedby="caption-attachment-82808" style="width: 2348px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0e85c8c3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/055804bb354ec6a58d7dc57200d23714.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-82808" class="wp-caption-text">部室の壁には練習やミーティングで指摘されたポイントが書き出され、選手全員の目にとまるようになっている</figcaption></figure>

西崎進也

東大合格者41人の埼玉県髄一の進学校・県立浦和高ラグビー部が全国大会・花園に臨む。スポーツ推薦もないエリート校はどうやって強豪校を倒すのか。そこには秀才たちならではの秘策があった

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