「鉄板」とは言われていたが、サプライズが絶対にないとは限らない…。しかし第92回アカデミー賞で主演男優賞を獲得したのは、やはりこの男、ホアキン・フェニックスだった。
ホアキンは「悪もしてきた、利己主義だった、残酷だった、仕事のしにくい人間だった。そんな自分にセカンドチャンスをくれてありがとう」と謝意を示した。
思い返せば、ホアキンが“ジョーカー”役の交渉に入ったと報じられたころから、「ハマり役」の呼び声も高かった。
<figure id="attachment_95215" aria-describedby="caption-attachment-95215" style="width: 1764px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="82a8d7b3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/02/77bbee04ba54d5868b1d36ac01c4b759.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-95215" class="wp-caption-text">『ジョーカー』撮影中のホアキン・フェニックス（18年10月7日）　　写真：Backgrid/アフロ</figcaption></figure>
ご存知の通り、「バットマン」の宿敵であるジョーカーは、最凶・最強の悪役でありながら、ぶっちぎりの人気を誇るキャラクターだ。実写映画ではホアキン以前に、３人の俳優たちが怪演を見せたことで知られる。
『バットマン』（1989年）のジャック・ニコルソン、『ダークナイト』（08年）でヒース・レジャー、『スーサイド・スクワッド』（16年）のジャレッド・レト。とくに『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーは、ヒースの熱演と作品公開前の急逝とが相まって、非常に高い評価を受けることになった。
そんなわけで、大人気のキャラクターだからこそファンの期待も高く、ジョーカー主体の作品となればなおさら、“ベン・アフレックによるバットマン”であってはならなかった。
<figure id="attachment_95220" aria-describedby="caption-attachment-95220" style="width: 2082px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="255fdb01"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/02/daab4c0c2d039deaf8e17fb44e4482e2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-95220" class="wp-caption-text">「第26回全米映画俳優組合賞」で主演男優賞受賞コメントをするホアキン・フェニックス（20年１月19日）。　写真：ロイター/アフロ</figcaption></figure>
ここで、ホアキンの素顔に触れておきたいと思う。
新興宗教にはまったヒッピーの両親に育てられ、幼いころから筋金入りのヴィーガンとして生活している。食事にとどまらず、身に着けるものまで、動物由来の素材は使わない。
環境活動家でもあり、つい先日、現地時間の１月10日に、気候変動デモに参加して逮捕されたばかりだ。
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若くしてこの世を去った俳優リヴァー・フェニックスの実弟であり、その最愛の兄を目の前で亡くすという強烈な体験から、一時は引きこもり状態になった。
ドン底の状態から抜け出せたのは、俳優業のおかげだ。兄の死後、ブランクを経て映画の仕事を再開すると、その高い演技力で爪痕を残していく。
『グラディエーター』（2000年）の若き皇帝コモドゥス役や『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』（2005年）のカントリー・ミュージシャン、ジョニー・キャッシュ役、『ザ・マスター』（2012年）の青年フレディ・クエル役、さらには『ビューティフル・デイ』（2017年）の元FBI捜査官ジョー役はとくに高評価を得て、権威ある映画賞の俳優賞を授かっている。
こうして正統派な作品で確かな演技力を認められる一方で、本人役で主演した『容疑者、ホアキン・フェニックス』（2010年）のため、映画の撮影であることを伏せて２年にわたり奇行を繰り返すなど、実験的な作品にも積極的だ。
役作りのためなら、風貌を大きく変えることも厭わず、『ジョーカー』でもわずかな期間で23キロの減量を達成したことが大きな話題になった。厳しい食事制限による飢餓状態で「気が狂いそうだった」そう。
<figure id="attachment_95214" aria-describedby="caption-attachment-95214" style="width: 1806px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="57f183bc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/02/87c6009fe6f82367f9d4612fb61f0528.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-95214" class="wp-caption-text">『ジョーカー』ニューヨークロケ。トッド・フィリップス監督の演出を聞くホアキン・フェニックス　　写真：Splash/アフロ</figcaption></figure>
とはいえ、役にのめりすぎたり、引きずったりすることはないのだという。『ジョーカー』の撮影中も、「カメラがまわっていないときはアーサー（ジョーカー）から素顔のホアキンに戻っていた」と、監督のトッド・フィリップスは語る。
ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞（SAGアワード）、英国アカデミー賞（BAFTA）、放送映画批評家協会賞（クリティクス・チョイス・アワード）、全米製作者組合賞（PGAアワード）でも、主演男優賞に輝いたホアキンのアーサー。
“ジョーカー”役とホアキンが演じる役柄、その両方のハードルが、ますます上がった。
<figure id="attachment_95218" aria-describedby="caption-attachment-95218" style="width: 2792px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="31e8d417"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/02/a9f3d552e2f03b2a3b2e985c6e5488d6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-95218" class="wp-caption-text">ロスアンゼルスでの『ジョーカー』プレミア上映に出席したホアキン・フェニックス　　写真：REX/アフロ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_95216" aria-describedby="caption-attachment-95216" style="width: 3543px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dafa9663"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2020/02/078594c09970dcfc6e3d006fe27ecafd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-95216" class="wp-caption-text">「第76回ヴェネチア国際映画祭」でのホアキン・フェニックス。ファンに気さくにサインする（19年８月31日）。写真：Splash/アフロ</figcaption></figure>
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（はら　あきか）海外セレブ情報誌を10年ほど編集・執筆。休刊後、フリーランスライターとして、セレブまわりなどを執筆中

原西香

第92回アカデミー賞は大本命のホアキン・フェニックスが『ジョーカー』で主演男優賞を獲得。若手演技派から現代を代表する怪優へと成長したホアキンのユニークな半生を振り返る。

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