『パラサイト』にハマった人がいま見るべき「韓国映画10」

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ついにアジアの映画が米国アカデミー賞において作品賞を受賞する時代がやってきた。

世界中の予想に反して韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞、監督賞、長編国際映画賞、脚本賞の4冠に輝くと、日本でも異変が起きる。興行成績は3週連続で1位となり、興行収入は累計で40億円を突破。韓国映画の日本での歴代興収1位だった『私の頭の中の消しゴム』(2005年)の30億円を大幅に更新している。今後は新型コロナウイルスの影響次第、というところはあるが、興収50億円に達する可能性も出てきた。

そして『パラサイト』体験をした観客が急増したために、本作を生み出したポン・ジュノ監督の過去の作品も注目され始めているのだ。

息のあったコンビ。ポン・ジュノ監督(右)と名優ソン・ガンホ。アカデミー書受賞で急遽来日。日本記者クラブ(東京・内幸町)で記者会見を行った  写真:アフロ

良くも悪くも韓国はドラマチックな国といえる。ある日突然、朝鮮戦争が勃発して国が分断したかと思えば、長く続いた軍事政権や、“漢江の奇跡”と称される経済成長。国が著しく発展し、民主化が実現するが、政権交代するたびに大統領経験者が投獄されたり自殺したり。朴槿惠(パク・クネ)前大統領が民衆のデモによってその座から引きずり降ろされたのは記憶に新しい。

話題に事欠かないお国柄のせいか、生み出される映画もいちいち刺激的で面白い。一度ハマるとヤミツキになる中毒性をはらんでいるのが韓国映画の強みだ。

これまで韓国映画に興味のなかった人も今からでも遅くない。『パラサイト』以外にも楽しめる作品は数え切れないほどある。ここでは秀作よりも、韓国映画に馴染みのない日本人が見ても楽しめるであろう映画10作品を紹介する。そして、『パラサイト』を生んだ両雄、監督ポン・ジュノと“興行俳優”ソン・ガンホの代表作も併せて紹介する。Amazon Prime VideoやNetflix、Huluで視聴可能な作品もあるので、ぜひ激アツの韓国映画に触れてみてほしい。

1.『新感染 ファイナル・エクスプレス』

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【あらすじ】釜山行きの特急列車KTXにソグ(コン・ユ)と娘が乗り込んだ。列車には挙動不審な女も乗車。女は人間を凶暴化させる謎のウイルスに感染していた。やがて女が乗務員を襲撃し、その場にいる乗客たちも次々と犠牲になっていく。

【見どころ】特急列車という密室で次々と人々がゾンビに襲われるというスリル満点のパニック映画だが、ラストは胸が熱くなる展開に。韓国では2016年に公開され、1,150万人もの観客を動員する大ヒット作となった。

2.『神と共に(第一章:罪と罰)』『神と共に(第二章:因と縁)』

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【あらすじ】火災で壮絶な死を遂げた消防士ジャホン(チャ・テヒョン)の前に冥界の使者(ハ・ジョンウ)たちが現れる。人は亡くなると49日間のうちに7つの地獄で裁判を受けなくてはならないという。ジャホンは7つの罪状すべてを晴らし、現世に生まれ変われるのだろうか。

【見どころ】大人気のウェブ漫画が原作。想像を超える壮大な物語でハリウッド映画並みのアクション大作。『第一章』は韓国映画史上第3位となる1,440万人もの観客を動員。『第二章』も1,220万人を動員して歴代10位に。

3.『猟奇的な彼女』

【あらすじ】キョヌ(チャ・テヒョン)は偶然見かけた酒に酔っている“彼女”(チョン・ジヒョン)を助けようとするが、犯罪者扱いされてしまう。ところが悪縁を切ることもできず、キョヌは再びタフな彼女と会い、振り回されることに。

【見どころ】ネット小説が原作で、2001年に韓国で公開。低予算映画だったが、この年に韓国で公開された映画の興行成績第3位にランクイン。チョン・ジヒョンが大ブレイクした。同じクァク・ジェヨン監督の『ラブストーリー』も見たくなる。

4.『インサイダーズ 内部者たち』

【あらすじ】大財閥のオ会長はチャン議員を大統領にして自らの政治支配を企む。「祖国日報」の主幹イ・ガンヒも裏でアン・サング(イ・ビョンホン)を利用しながら国民を扇動。ソウル地検のウ検事(チョ・スンウ)はチャン議員の不正を捜査するが―。

【見どころ】人気漫画家ユン・テホのウェブ漫画が原作。裏切りの連続で息をつく暇もなく、700万人もの観客を動員し大ヒットとなった。長いこと財閥が経済を支配してきた韓国の大統領選挙の裏側は意外とこんなものかもしれない。

5.『サニー 永遠の仲間たち』

【あらすじ】学生時代をともに過ごした7人の女子高生グループ“サニー”。転校生ナミ(シム・ウンギョン)もサニーのメンバーとなり、永遠の友情を誓い合うが、メンバーはある出来事からバラバラに。大人になったメンバーは再会できるだろうか。

【見どころ】エンドロールでは誰もが自分の青春時代をなつかしく思い、胸を熱くする。女性キャスト中心の映画がヒットしにくい韓国で珍しく736万人もの観客が足を運び、大絶賛された。日本やハリウッドでもリメイクされている。

6.『ベテラン』

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【あらすじ】ドチョル(ファン・ジョンミン)は警視庁の広域捜査隊に所属。ある日、財閥シンジングループの御曹司で問題児のチョ・テオ(ユ・アイン)を紹介される。その後、シンジン物産で運転手が自殺を図るが、ドチョルは不審を抱く。

【見どころ】奇しくも、大韓航空の副社長がナッツの出し方に激怒して飛行機を搭乗口に引き返させた“ナッツ・リターン事件”など、何かと財閥に批判が集まった時期に公開され、1,341万人もの観客を動員。韓国映画史上第5位の大ヒット作となる。

7. 『怪しい彼女』

【あらすじ】息子だけが自慢の毒舌おばあさんマルスンは家族との間に溝ができる。胸を痛めていたとき、偶然立ち寄った写真館で50歳も若返ってしまう。二十歳に戻ったマルスンは“オ・ドゥリ”(シム・ウンギョン)となり、人生を楽しむが―。

【見どころ】日本映画『新聞記者』で主演を努めたシム・ウンギョンが笑わせてくれる。コメディーだが、終盤で知ることになるマルスンの苦難の人生は涙なしでは見られない。韓国で866万人を動員した本作は、日本や中国でもリメイクされた。

8.『国際市場で逢いましょう』

【あらすじ】1950年の朝鮮戦争で父親や妹と生き別れたドクスは、釜山の国際市場で暮らすことに。やがてドクス(ファン・ジョンミン)は西ドイツでの出稼ぎ、ヨンジャ(キム・ユンジン)との結婚、ベトナム戦争への遠征などを経験していく。

【見どころ】人口5,000万人の国で1,426万人もの国民が見た映画。まさに韓国版“フォレストガンプ”で、一人の男の人生を通じて韓国の近代史を描いている。実在する著名人や歌手も登場。歌手のナム・ジン役を東方神起ユノが演じている。

9.『王になった男』

【あらすじ】王の光海(イ・ビョンホン)は命を狙われる恐怖心から、忠臣ホ・ギュン(リュ・スンリョン)に「自分の影武者を探せ」と命じる。ホ・ギュンが見つけたのは道化師のハソン(イ・ビョンホン一人二役)。ハソンは“偽の王”として宮中へ―。

【見どころ】朝鮮王朝時代に実在し、クーデターによって失脚した光海君の史実に残されていない空白の15日間にフィクションを加えた歴史大作。公開とほぼ同時に大統領選に突入し、人々が“真のリーダー像”を求めた結果か、観客数は1,230万人となった。

10.『建築学概論』

【あらすじ】建築学科に通うスンミン(イ・ジェフン)はソヨン(ペ・スジ)に恋するが、ある出来事がきっかけで遠ざかる。15年後、建築士になったスンミン(オム・テウン)の前にソヨン(ハン・ガイン)が突然現れ、家の建築を依頼するが―。

【見どころ】公開前はさほど話題にならなかったが、公開後に口コミが広がり、リピーター続出。410万人もの観客を動員した。アイドルグループmiss Aのスジが学生のソヨンを演じ、“国民の妹”と称されるように。劇中歌は90年代の大ヒット曲『記憶の習作』。

 

以上の10作品は、韓国内で秀作とされる作品群とは少し違ったラインナップだが、韓国の歴史や文化に特別の興味のない日本人が観ても分かりやすい作品ばかりだ。韓国映画ならではの情緒や力強さを感じてほしい。

政府作成のブラックリストに載った、鬼才ポン・ジュノ監督と名優ソン・ガンホ

『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞4冠は韓国人にとって感慨深いものだった。ポン・ジュノ監督と主演俳優ソン・ガンホは、李明博(イ・ミョンバク)政権から朴槿惠政権にかけて「政府にとって不都合な文化人」としてブラックリストに掲載されていたからだ。
だが韓国映画を語る上で、ポン・ジュノ監督作品と“興行俳優”ソン・ガンホを外すことはできない。

ポン・ジュノ監督は韓国でいう“386世代”だ。1990年代に30代(3)で、1980年代(8)に民主化運動に関わった1960年代(6)生まれの世代をいう。初の長編作品は『ほえる犬は噛まない』だが、早くも2作目の『殺人の追憶』が韓国内で大ヒット。ポン・ジュノ監督ならではの細かいディテールは“ポンテール”と呼ばれ、国内外から絶賛されている。

ポン・ジュノ監督の代表作

『殺人の追憶』

【あらすじ/見どころ】1986年から1991年にかけて韓国の京畿道・華城(ファソン)市で実際に起きた連続殺人事件を描いた作品。10名の女性の変死体が発見された事件をポン・ジュノ監督が映画化し、2003年に韓国で公開。未解決事件にも関わらず観客動員数525万人のヒット作となった。
所轄のパク刑事を演じたのはソン・ガンホだが、保守系の政権からは「警察を不正集団のように描写し、国民に誤ったイメージを与えた」と評価されたようだ。たしかに警察の体たらくぶりがコミカルに描かれている。

『グエムル-漢江の怪物-』

【あらすじ/見どころ】ソウルを流れる漢江(ハンガン)に突然、怪物が現れるというパニックアクション大作。漢江の河川敷で売店を営むパク一家の娘が巨大な怪物に連れ去られてしまう。ソン・ガンホがポン・ジュノ監督と二度目のタッグを組み、一家の主ガンドゥ役を演じている。怪物映画と思われがちだが、ガンドゥの成長物語でもある。

1,390万人もの観客を動員する大ヒット作となったが、米軍基地から流れた汚染水が漢江に流れたという設定。「反米感情を助長した」と保守政党から批判された。

『母なる証明』

【あらすじ/見どころ】2009年に韓国で公開された『母なる証明』はこれまでのポン・ジュノ監督の作風とは少し違っている。殺人事件の容疑者となった息子の汚名を晴らそうと孤軍奮闘する母親の姿を描いたサスペンスだ。知的障害のある息子トジュンをウォンビンが演じ、観客は母親と一緒に事件を追うが、やがてとんでもない展開になっていく。

国際映画祭では絶賛されたが、韓国内の観客動員数は298万人にとどまる。盧武鉉元大統領が自殺した直後の公開となり、少なからず興行に影響したのではないか。

ポン・ジュノ監督と何度もタッグを組んできたソン・ガンホは韓国で誰もが認める“興行俳優”だ。90年代に演劇界からスクリーンに活躍の場を移し、1999年に出演した『シュリ』が大ヒット。以後、『JSA』『殺人の追憶』など主演作が毎年のようにヒットし、“国民的俳優”と呼ばれるように。実際、ソン・ガンホほど観客を呼べる俳優は他にはいない。

ソン・ガンホの出演作

『JSA』

【あらすじ/見どころ】2000年に韓国で公開されたパク・チャヌク監督の『JSA』は韓国映画界のタブーを破った作品といえる。南北分断の象徴である38度線上の共同警備区域(JSA)で起こった射殺事件の謎を追っているが、生き残った南北の兵士たちはなぜか異なる陳述を繰り返す。

イ・ビョンホンが韓国軍の兵長で、ソン・ガンホは北朝鮮の中士(軍曹クラス)役。共産主義者を人間的に描くことを想像すらできなかった当時、本作は韓国社会に衝撃を与え、251万人を動員。この年の興行第1位となった。

『弁護人』

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【あらすじ/見どころ】盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が若き弁護士だった頃、人権派の弁護士に転身するきっかけとなった“釜林事件”をモチーフにしたヒューマンドラマ。1981年に釜山で大学生や社会活動家たちが拘留され、尋問される事件が起こった。当時の全斗煥政権が民主化運動を弾圧するために捏造したといわれている。

ソン・ガンホは若き盧武鉉氏をモデルにした弁護士役を熱演し、1,137万人もの観客を動員することに成功。だが、この作品により保守政権下でブラックリスト入りされたといわれる。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』

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【あらすじ/見どころ】1980年5月、多くの国民が血を流した光州事件を実話に基づいて描いている。軍と民衆の闘いを取材しようとドイツ人記者がタクシーに乗車。検問を抜けて光州にたどり着くと、そこでは多くの民衆が命を落としていた。ソン・ガンホが演じたのはタクシー運転手のマンソプ。実在のドイツ人記者は韓国を再訪したが、マンソプとの再会は果たせていない。

当初は出演を躊躇したというソン・ガンホは、ここでも好演。作品は1,218万人を動員する大ヒット作となった。

ポン・ジュノ監督や俳優ソン・ガンホ自身も映画さながらの経験や困難を経て、アカデミー賞4冠という栄光を手にしたといえる。

第92回アカデミー賞 「パラサイト」が作品賞など4冠獲得。歓喜に沸くポン・ジュノ監督、ソン・ガンホら。非映画作品が作品賞を獲ったのはアカデミー賞史上初の壮挙(2020年2月9日)  提供:MATT PETIT/A.M.P.A.S/AFP/アフロ

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  • 児玉愛子

    (ライター)韓流エンタメ誌、ガイドブック等の企画、取材、執筆を行う韓国ウォッチャー。
    新聞や韓国旅行サイトで韓国映画を紹介するほか、日韓関係についてのコラムも寄稿。

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