ロンバケのあのセリフが蘇る…!コロナ危機は「再放送」で乗り切れ

指南役のエンタメのミカタ 第29回

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「何をやってもうまくいかないときは、神様がくれた長いお休みだと思って、無理に走らない、焦らない、頑張らない。」

――これは、今から24年前に放送されたドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)の第2話で、木村拓哉演ずるピアニストの瀬名秀俊が、仕事も干され、婚約も破棄されて落ち込む葉山南(山口智子)にかけた言葉である。タイトルの元ネタにもなっている。

撮影:香川貴宏

なぜ、突然この台詞を持ち出したかと言うと、昨今の新型コロナ騒動に揺れるテレビ業界である。本来、4月は年度替わりの華々しい改編期なのに、もはや「緊急事態宣言」の発令に至り、各局とも感染リスクのあるロケやスタジオ収録を休止せざるを得ず――軒並み新番組のスタートが延期されているのだ。

TBSは、『半沢直樹』など3つのプライムタイムの連続ドラマと、『有田プレビュールーム』など7つのバラエティの新番組の初回放送を延期すると発表。テレビ朝日も、奇しくも先に名前の出た木村拓哉主演の連ドラ『BG~身辺警護人~』の放送延期を表明した。日本テレビの『ハケンの品格』フジテレビの石原さとみ主演の連ドラ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』も同様である。

民放ばかりじゃない。NHKも、2大看板枠の大河ドラマと朝ドラ(連続テレビ小説)の収録を一時見合わせるという。今のところ、『麒麟がくる』『エール』もかなり先の回まで収録されており、放送には支障はないが、撮影休止が長引くようなことになると、この先どうなるかは分からない。

海外に目を向けても、アメリカでは動画配信大手の「Netflix」が、既に3月中旬から北米大陸における番組制作を休止している。

特筆すべきは、同社は仕事を失った俳優や制作スタッフらを支援するために、1億ドル(約110億円)の基金を立ち上げたこと。CCO(最高コンテンツ責任者)のテッド・サランドス曰く「電気技師や大道具、運転手、ヘアメイクアーティストなどの多くは時給制でプロジェクトごとに働いている」――この辺り、“持てる者”が率先して社会的義務を果たそうとする「ノブレス・オブリージュ」の国・アメリカを彷彿とさせる。

そんな次第で、今や日本だけでなく、世界的に番組制作が止まっていて、テレビ業界もまたピンチである。終息の時期が見えないだけに、まるで出口のないトンネルを歩いているよう。

動画配信はまだいいとして、テレビというメディアは放送法上、報道の公共性などの点から毎日、放送する決まりになっている。このままだと、そのうちテレビは生放送のワイドショーとニュースばかりになりそうだ。

では、どうしたらいいか。

ここで冒頭の言葉に戻る。「神様がくれた長いお休みだと思って、無理に走らない、焦らない、頑張らない」――そう、ロングバケーション。休むのだ。

これまでテレビ業界の人たちは忙しすぎた。特にドラマの制作チームなんて、早朝から深夜まで働き通し。1クール終わったら、すぐに次のクールの準備が始まったりして、なかなか一息つけなかった。

ここらで、ちょっと長い休みをもらうのも悪くないだろう。丁度、働き方改革が問われ、改善しつつあるとはいえ、まだまだ不十分と言われているし、厚労省の新型コロナウイルスの「雇用調整助成金」制度の利用で、現状6月30日までは休業手当ての助成がある。

提案。

既に同様の意見がSNS界隈でも散見されるが――テレビの編成に“プライムタイムの再放送枠”を導入したらどうだろう。普通、再放送と言うと、夕方前の午後帯にやることが多いが、これをプライムタイム(19時~23時)に編成するのだ。

実際、アメリカのテレビ業界は毎年6月から9月の4ヵ月間は夏休みシーズンで、基本的にはドラマの再放送期間としている。つまり、プライムタイムに普通にドラマの再放送が流れる。この間、番組の制作チームは英気を養い、新しい企画を練り、その準備をする。そして、晴れて10月からの新シーズンを迎えるのだ。

日本も、これをマネたらどうだろう。番組スタッフは、いっそ6月いっぱいまで丸々休む。そう、ロングバケーション

どのみち、今年は東京オリンピック・パラリンピックで、7月クールは通常編成を考えていなかっただろうし。ならば、オリパラが延期された今、その空いた7月クールに、4月クールのドラマをずらすのだ。そして――その空いた4月クールを「再放送枠」に当てるのだ。

俗に、エンタテインメントにおけるクリエイティブとは、優れた旧作をオマージュして、これを現代風にアップデートする作業とされる。それ即ち「温故知新」と。誤解されがちだが、ゼロから1を生み出すのがエンタメ作りの王道じゃない。1を、2や3や5にアップデートするのが正しいエンタメの作り方。世の傑作とは、大抵そのようにして生まれる。

そこで、だ。

この際、再放送するドラマは、比較的近場の作品ではなく、ドラマが高視聴率を取っていた70~90年代の名作をピックアップするのはどうだろう。

最近の若い人たちは、案外、古いドラマを見たことがない。僕らアラフィフ世代の若い時は、ドラマの再放送が結構あって、『時間ですよ』(TBS系)や『傷らだけの天使』(日本テレビ系)といった、リアルタイムでは子どもすぎて視聴できなかった良作にも数多く出会え、大いに刺激を受けたもの。それ即ち、セレンディピティ(幸運をつかむ偶然の出会い)だったと実感する。

え?  今なら、動画配信サービスで古いドラマも見られるだろうって?

いやいや、“テレビ放送”で見ることに意味があるんです。

例えば、先日、アニメ映画『魔女の宅急便』が日本テレビ系で放送されたけど、みんな、大概何度も見ているはずなのに、なんと視聴率が12.9%(関東地区)もあった。ちなみに、通算15回目のテレビ放送で、前回はわずか2年前。しかも、その時(12.5%)より上がっているのだ。

これ、やっぱり今の時期は、“みんな”で同じコンテンツを見たいんですね。そして、SNSなどで感想を共有したい。今や自粛、自粛の毎日で、友人らと会う機会も減り、みんな孤独を感じている。だからこそ他人と繋がりたいんです。それには、同じ番組を見るのが手っ取り早い。

ジブリ作品がいいのは、単純に物語のクオリティが高く、多くの人が「面白い」を共有できるから。それに、語れる要素も沢山ある。例えば、僕もその日、『魔女宅』を見ていて、以下のツイートをしたところ、瞬く間に3000を超える「いいね」が付いた。

“魔女の宅急便のキキの腕が太い話が好き。米国版ビデオを売り出す際、パッケージをディズニー社が描いたらキキの腕が細かった。鈴木敏夫サン「こんな腕じゃホウキは操れない」「魔法だろ?」「魔法はホウキにかかってるのであって、キキはその上に乗って必死で握ってる。だから腕が太い」これがジブリ。”

そんな次第で、プライムタイムに連ドラの再放送を流すなら、誰もが「面白い」と共感できる、日本の誇る“名作”連ドラに限ると思います。

では、具体的にどんな作品なら、ジブリ作品のようにお茶の間の共感を集められるか?  近々予定の次回記事では、その具体例と、思わず人に話したくなる「うんちく」の例を示したいと思います。

と言いつつ、すでに読者の皆さんの脳裏には、あの傑作、この快作、様々なドラマたちが浮かんでいるかもしれませんね。

  • 取材・文草場滋

    メディアプランナー。「指南役」代表。1998年「フジテレビ・バラエティプランナー大賞」グランプリ。現在、日経エンタテインメント!に「テレビ証券」、日経MJに「CM裏表」ほか連載多数。ホイチョイ・プロダクションズのブレーンも務める。代表作に、テレビ番組「逃走中」(フジテレビ)の企画原案、映画「バブルへGO!」(馬場康夫監督)の原作協力など。主な著書に、『テレビは余命7年』(大和書房)、『「朝ドラ」一人勝ちの法則』(光文社)、『情報は集めるな!」(マガジンハウス)、『「考え方」の考え方』(大和書房)、『キミがこの本を買ったワケ』(扶桑社)、『タイムウォーカー~時間旅行代理店』(ダイヤモンド社)、『幻の1940年計画』(アスペクト)、『買う5秒前』(宣伝会議)、『絶滅企業に学べ!』(大和書房)などがある

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