川口春奈、門脇麦、二階堂ふみ…NHKを支えた若手女優の演技力
『麒麟がくる』『エール』好調の陰にキャスティングあり~川口春奈・門脇麦・二階堂ふみ~
コロナ禍の影響で、春ドラマは波乱が続いている。
初回から延期となったのは『ハケンの品格』『半沢直樹』『BG~身辺警護人~』など。予定通りに放送しながら途中で放送を続けられなくなったのが『SUITS/スーツ』。
そんな中、NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』と、朝ドラ『エール』はなんとか放送を続けてきたが、ついに『麒麟がくる』は6月7日の第21回(全44回予定)まで、『エール』は6月27日までそれぞれ放送し、翌週から中断、とNHKから発表された。
直近は盛り返してきていた両番組。視聴者からは「当初の放送期間を越えてでもしっかり完結させて欲しい」との声が出るほどだ。
好調・好評の原因はいろいろ考えられるが、演技のうまい旬な女優の起用も大きいようだ。両番組の収録・放送の再開と素晴らしいゴールの実現を祈りつつ、ここでは女優たちの演技について考察する。
▼【写真8点】〔川口春奈、門脇麦、二階堂ふみ 「FRIDAY」秘蔵フォトギャラリー〕が、本コラムの最後にあります。ご覧ください▼
『麒麟がくる』『エール』 好調なNHKドラマ
NHKの大河ドラマは、去年の『いだてん~東京オリムピック噺~』が低調だった。年間平均8.2%・最低回3.7%と、大河ドラマ史上最悪を記録してしまった。
そして迎えた今年の『麒麟がくる』(長谷川博己主演)。出演者の問題で2週間遅れて始まったり、序盤の5話で世帯視聴率が3割下落するなど、当初は不安要素を抱えていた。ところがその後は15%前後まで持ち直し、安定した見られ方をしている。
朝ドラ『エール』(窪田正孝主演)も、出だしで躓いた。初回冒頭4分ほどで新手の演出をし、初回の視聴率は右肩下がりとなってしまった。その後3週まで、平均視聴率が20%を切った。
コロナ禍で在宅者が増え、テレビのHUT(総世帯視聴率)が上がっている中での大台切れだ。例年と比べ低調な序盤と言わざるを得ない。ところが4~6週は平均を20%台に戻し、第7週以降で21%超を狙う勢いとなっている。
両ドラマの好調ぶりは、もちろんストーリー展開の面白さが大前提だ。
会話の切れ、演出の上手さもあろう。そしてもう一つ、若手女優のキャスティングも関係している気がする。
『麒麟がくる』 芸達者2人が演じる帰蝶と駒
インターネット調査のパイルアップ社は、テレビを一定以上見る1200人を抽出し、「春ドラマ出演者の中で、演技がうまいと思う若手女優」を聞いた。対象は20歳代までの旬な人だ。

ランキング上位を見ると、ベスト5は門脇麦。
「演技がうまいと思う女優をすべてお答えください」という問いで26.0%と4分の1以上が挙げた。さらに「最も演技がうまい」という一人だけを挙げる質問では8.1%だった。
次にベスト4は川口春奈。複数回答が29.8%と約3割。そして「最もうまい」で7.8%となった。
二人とも『麒麟がくる』で、重要な役を演じている。川口春奈が、齊藤道三の娘で織田信長の正室・帰蝶。門脇麦の駒は、明智光秀に“麒麟”の存在を教えるなど、最後まで彼を陰で支える役どころのようだ。
アンケートの選択肢には19人が挙げられたが、その中のベスト5から2人が好演する『麒麟がくる』。キャスティングは、確かに冴えている。
川口春奈と門脇麦の存在感
例えば第13話「帰蝶のはかりごと」。
風雲急を告げる夫・信長(染谷将太)のピンチに際し、“美濃のマムシ”と恐れられた父・斎藤道三(本木雅弘)譲りの胆力を、川口春奈は“凛々しく” “怖く”そして“愛らしく”演じ切り、SNSも大いに沸いた。視聴率も15.7%と、直近5話で最高を記録している。
調査を実施したパイルアップ社の高木章圭メディア研究員は、男女年層別の評価の表れ方こそ、同ドラマ好調の一つと見ている。
「男性では全世代が3割前後と安定していたのに対し、女性では若年層で高い支持となりました。最近見た目が垢抜けたとも言われています。プロのメイクさんに、川口さん本人が質問しながらメイクを紹介するYouTube動画も話題となっています。若い女性をドラマに惹きつけるのに貢献していると言えるでしょう」
若年層に強い川口春奈に加え、門脇麦の存在も欠かせない。川口がやや弱い女性40歳代以上に、大いに支持されているからだ。
これまで朝ドラ『まれ』や今回の『麒麟がくる』以外にも、映画『愛の鍋』で性欲の強い女子大生、ドラマ『トドメの接吻』で「キスで殺す女」を演ずるなど、ふり幅の広い演技力を見せて来ており、幅広い層に評価されている。
ある意味、相互に補完関係にある二人。とかく高齢者に傾きがちな大河ドラマだが、二人が視聴者層の拡大に貢献していると言えそうだ。
『エール』×「感性のバケモノ」
朝ドラ『エール』で、主人公・古山裕一(窪田正孝)の妻・関内音を演ずるのが二階堂ふみ。
今回の調査では、複数回答で47.2%と、半分近くの人が評価した。さらに「最も演技がうまい」でも、25.4%と四分の一を超える支持を集めて堂々の1位。2位以下に大差をつけた。
「二階堂ふみさんは数多くの映画やドラマで主要キャストを務めてきました。調査で最も支持が高かったのは30代女性でしたが、全世代で半数近い方が“うまい”と回答するなど、圧倒的な結果となりました。これまでの実績がものを言ったのでしょう」(同研究員)
確かに25歳にして、既に大河ドラマ3作で重要な役を演じたキャリアを持つ。
民放の連続ドラマでも、3度も主人公やヒロインを担ってきた。特に『この世界の片隅に』で演じた遊女・白木リンでは、儚い美しさと救いがたい絶望感が高く評価された。
大河ドラマ『西郷どん』では主人公の二番目の妻・愛加那を演じたが、西郷隆盛を演じた鈴木亮平は「感性のバケモノ」と絶賛した。今回の男女年層別の回答で、10代女性のみ西野七瀬に僅差で2位に甘んじたものの、他全層でぶっちぎりのトップとなった理由がよくわかる。

今回の『エール』でも、第4週「君はるか」で、窪田正孝と二階堂ふみの付き合いが始まって、ようやく視聴率は20%台に戻した。
そして第5週「愛の協奏曲」・第6週「ふたりの決意」で見せる二人の怪演で、物語はどんどん面白くなった。さらに第7週「新生活」は、新婚生活の甘さと現実の厳しさを描いているが、視聴率は遂に21%を超えそうな勢いだ。
気弱な主人公の才能を信じ、ぐいぐい引っ張っていく二階堂ふみの怪演をみていると、どちらが主人公かわからなくなるほどの存在感と言わざるを得ない。
絶対的に求められる「演技力」
今回の調査では、2位が志田未来、3位に波留がランクインした。
志田未来は12歳で出た『女王の教室』で高く評価された。その後も『14歳の母』など、多くのドラマで若くして主人公を演じて来た。
一方、波留は、23歳で主人公を演じた『あさが来た』でブレイクし、その後いままで毎年、連続ドラマの主人公を演じている。
どうやら視聴者の評価は、どんなドラマに出演してきたのかにも大きく左右される。そして高評価を得るには、若くとも演技力が必須だ。
こうした実力と実績が、出演するドラマの見られ方にも影響が及ぶ。その意味で今回の大河ドラマと朝ドラは、俳優の持つ実力と実績を、ドラマの評価にうまくつなげているように見える。
こうした実力派の若手女優が、ドラマをどう面白くしていくのか。今後の『麒麟がくる』と『エール』の展開に期待しつつ、再開を待ちたい。
川口春奈、門脇麦、二階堂ふみ 「FRIDAY」秘蔵フォトギャラリー
川口春奈

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→川口春奈“今もっとも忙しい女優”が貴重なオフに向かった先(『FRIDAY』2020年4月10日号より)を読む
門脇麦

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→門脇麦 大河ヒロインが見せた初「豆まき」での艶姿(『FRIDAY』2020年2月21日号より) を読む
二階堂ふみ

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文:鈴木祐司
(すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。