市販薬・アセトアミノフェンの品不足は「零売」で解決可能だ
病院の薬が直接買える「零売(れいばい)」薬局を知ってる? 話題の「オンライン診療」も、この機会に積極的に活用!
ドラッグストアなどで、解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」市販薬の品不足が続いている。しかし、医療用医薬品の方は十分に在庫があるという。だったら、そちらの入手を考えてみよう。暫定的に規制が緩和され、現在は初診から受診できる「オンライン診療」。処方箋なしで病院の薬が購入できる「零売(れいばい)」薬局。ウィズコロナで、今後さらに身近に、我々の生活に当たり前となるだろう2つのシステム。メリット、デメリットを知って賢く活用したい。
なぜ、品不足に? 「アセトアミノフェン」とは
3月半ば、フランス保健相が発信した「新型コロナウイルスに感染している場合に服用すると、症状悪化への影響が懸念される」というツイートを発端に、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に関して情報が錯綜した。
その際に、推奨する代替薬として挙げられたアセトアミノフェンが注目され、日本でも市販薬が品不足になっている。
イブプロフェン、ロキソニン、アスピリン、ボルタレンなどの名前が並ぶ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンは、どちらも解熱鎮痛薬として多くの市販薬に使われている。違いは、アセトアミノフェンは抗炎症作用は殆どなく、NSAIDsに比べて効果は穏やかだが、副作用が少なく安全性が高いとされ、妊婦や小児も服用できる点だ。
市販されているアセトアミノフェン含有の解熱鎮痛剤や風邪薬は数多くあるが、有効成分として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も同時に含まれていることがある。そのため、解熱鎮痛成分が“アセトアミノフェンのみ”の市販薬が、頭痛や急な発熱のときのために購入されているというのだ。
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医師の処方なしで、病院の薬が購入できる「零売」とは?
まだ全国的に数が少ないが、今、注目されている薬局がある。病院に行けないときなどに、処方箋がなくても病院で出される薬が直接買えるという「零売(れいばい)」薬局だ。
零売とは、病院などで使用される医療用医薬品のうち、薬局での販売が認められたものを処方箋なしで販売すること。日本初の零売薬局チェーンとして現在7店舗を展開しているセルフケア薬局に話を聞くと、
「零売のメリットは、忙しくて病院に行くことができない方、保険証をお持ちでない方などでも、病院と同じお薬を買うことができる点です。原則として、服用するご本人が薬局にいらして、問診や薬剤師との相談の上で、医療用医薬品を販売します。10分程度でお薬を買えることが特徴です」
医療用医薬品は、『処方箋医薬品』と『処方箋医薬品以外の医薬品』に分類されていて、零売では後者の薬が販売できる。医療用医薬品約15,000種類のうち、処方箋なしで購入できる薬は約7,300種類もあるという。
「たとえば、風邪薬や痛み止め、胃薬、ビタミン剤、湿布薬、漢方などは販売できるものが数多くあり、高血圧や糖尿病の治療薬、睡眠導入剤などの多くは販売ができない『処方箋医薬品』に分類されています」
アセトアミノフェンの医療用医薬品のひとつ「カロナール」や「コカール」も、零売で購入できる「処方箋医薬品以外の医薬品」だ。
「基本的には一度医師から処方されたことがある薬が望ましいですが、市販薬のアセトアミノフェンが手に入りにくい現状もあるので、薬剤師との相談の上で販売することも可能です」
零売は、医師の診断を伴わないので健康保険は利かない。購入の際に健康保険証は提示せず、薬代は“10割負担”になる。
「価格は自費になりますが、診察料や技術料などの料金がかからないので、病院などの3割負担の合計額とさほど変わらないことが多いです。アセトアミノフェン薬『カロナール』は10錠500円程度で購入できるので、市販薬とも大差ない価格になっています」
最近は、新型コロナウイルスの影響で、「薬が必要だけど感染が心配で病院の受診を我慢していた」、「ドラッグストアでの買い占めで市販の薬が手に入らなくなってしまった」などの理由から、問い合わせや来店もかなり増えているという。
近くにあったら大いに助かるが、まだ零売を行える薬局が全国でも十数店舗と少ないため、利用できるエリアが限られるのが難点だ。コロナ感染防止への対策が必要な今、注目度も高まっている。今後の展開に期待したい。
「オンライン診療」活用のメリット、デメリット
市販薬が品切れならば、医療機関で処方してもらう事も考えたい。4月から暫定的にオンライン診療の規制が緩和され、初診からの受診が可能になった。
医療機関と患者、双方の感染リスクが防止できて、患者は待ち時間や通院にかかる時間も省ける。なにより、不安を感じながら自己判断で薬を服用するより、医師の診断により処方してもらえるのは安心感が違う。
オンライン診療の活用について、内科医の山本佳奈氏に話を聞いた。
「オンライン診療の場合は遠方からの受診希望もありますが、症状によっては来院していただいて対面で診なくてはいけなくなるケースもあります。初診でオンライン診療自体はできますが、遠方からとなると難しいこともありますね」(山本佳奈氏 以下同)
そう考えると、まず、通院が可能な近隣の医療機関を選ぶのが基本となる。医療機関のホームページや電話窓口で、初診のオンライン診療が可能かどうかを確認。かかりつけ医がある場合は、そちらが電話での診療やオンライン診療を行っているか確認する。
「『かかりつけ医がオンライン診療をしていないため、オンライン診療が可能なクリニックを検索した』という方がいらっしゃいました。その場合、継続している薬の処方を希望されても、初診のオンライン診療では、1週間分しか薬を処方できません」
初回のオンライン診療で処方できる薬の日数は、厚生労働省の規定により最長で7日分となっている。かかりつけ医から継続して薬の処方をしてもらっている場合は、電話診療でいつもの日数分を処方してもらえる場合も多いので、かかりつけ医に確認したほうがいい。
頭痛があり、アセトアミノフェンを処方してほしい場合はどうだろう。
「アセトアミノフェンは、発熱時、頭痛や月経痛、腰痛や捻挫痛などの疼痛時に処方される解熱鎮痛薬です。頭痛が慢性的にある方で、コロナ感染が心配で来院できないという場合は、ひとまずオンライン診療をお勧めします。
ただしオンライン診療では、対面でしか得られない情報が得にくいということがあるので、病院に来て直接診察させていただかないと、診断したり薬を処方することができないと判断することもあります。オンライン診療と対面診療を使い分ける必要がありますね」
日頃から頭痛に悩んでいる場合は、オンライン診療を行っている頭痛外来も増えている。偏頭痛などに悩むのは女性が多いと言われるが、近頃はパソコンやスマホの長時間の使用で、男性の頭痛持ちも増えているという。
市販薬を常飲している人などは、自己判断で漫然と薬を服用するより、この機会に頭痛外来をオンライン受診してみることもおすすめだ。
薬をスムーズに受け取るには
オンライン診療の場合、処方箋は自宅へ郵送か、受け取り希望の薬局を医療機関に伝えるとそこへファクシミリで送られ、薬を薬局に取りに行く。または自宅へ薬を配送してもらえる場合もある。
「土・日・祝日で最寄りの薬局が開いていなくて、薬が手に入るまで時間がかかってしまったという患者さんもいらっしゃいました」
薬をスムーズに受け取るためには、土・日・祝日の営業をしている最寄りの薬局を探し、事前にファックス番号とファクシミリでの処方箋受け取りが可能かの確認をしておくといい。またドラッグストアなどでは、営業していても薬剤師がいない時間などは薬を受け取れない場合があるので、注意が必要だ。
オンライン診療に対応している医療機関はどうやって探す?
厚生労働省ではオンライン診療に対応できる医療機関のリストを都道府県ごとにまとめて公表しているが、PDF形式のリストで正直言って見づらい。
この厚生労働省の1万件以上のリストを、ジャッグジャパンが「全国オンライン診療・電話診療対応医療機関マップ」としてオンライン地図化。地図上でかんたんに近隣の医療機関が探せるようになっている。
Yahoo!でも同リストをもとに医療機関を検索できるようサービスを拡充。たとえばYahoo!検索の場合、“地名+オンライン診療”で検索すると、エリアの医療機関が一覧で表示され、個々の詳細が確認できる。
また、病院の検索から予約、診療、支払い、薬の処方まで、すべて行えるオンライン診療サービスのアプリを提供している会社も複数ある。今夏から、LINEもオンライン診療サービスをスタートさせる予定だ。
山本佳奈 医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、ときわ会常磐病院(福島県いわき市)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
- 取材・文:藤岡佳世
- 写真:アフロ