山田邦子×あいざき進也 「あの頃、アイドルに自由はなかった」
短期集中連載 いまだから話せるアブナイエピソード満載! やまだかつてない対談 第3回
「生涯、一番好きな人。出会ったのは中学生のとき。歌ってるだけで素敵なのに、運動神経抜群でトンボを切ったりバック転をしたり……目がクギ付けになった」
日本経済もテレビもお笑いも輝いていた’80年代。そのド真ん中を駆け抜けた山田邦子(60)がバラエティ黄金時代の仲間に逢いに行くという連載企画。第3回のゲストは昭和のスーパーアイドル、あいざき進也(63)だ。
邦子「初めて好きになったアイドルは西城秀樹さん。ワイルドでビックリしちゃってね。そこに渡辺プロダクションのイチオシとして出てきたのがあいざきさん」
あいざき「僕らにとっても秀樹さん、郷ひろみさん、野口五郎さんたち『新御三家』はデカい存在でした。昭和のアイドルって意外に少ないんです。いまみたいに40過ぎても現役でいられる時代じゃなかった。ファンがだいたい中高生でしょ。彼らは大学生になると洋楽にシフトしたりして、卒業していく。〝限られた全国の中高生何百万人の取り合い〟なわけですよ。そんな中、『新御三家』ら〝本物〟の牙城はなかなか崩せなくて……」
邦子「でもね、チョコレートのCMをやれるかどうかが昭和のアイドルの基準なんだけど、あいざき進也はそれをやっているわけですよ」
あいざき「取材で『好物は?』って聞かれて『数の子』と答えて怒られたことがあります(笑)」
邦子「そう考えたらいまのアイドルって図々しいよね。『焼肉』とか平気で言うし」
あいざき「アイドルって短命で儚(はかな)い感じがあって、だからこそいまと熱中度が違うというか。『テレビという箱の中の人』だって僕も思っていた」
邦子「でも、こうやって歳を重ねてもプッチ(あいざきの愛称)はアイドル。何年経ってもこうして心の中で生き続けている。ただ、これだけ大好きなのに、コンサートには1回しか行ってないの。学校で禁止されていて、コンサートに行くと不良扱い。会場の前で並んでると全員、先生につかまっちゃう」
あいざき「チケットは売れ切れているのに、お客さんが3列しか入ってないことがありました(笑)。僕はオーディション番組で優勝してこの世界に入ったんだけど、『決勝に出るなら学校を辞めてくれ』って言われました。優勝できたからよかったものの……」
邦子「テレビに出る=退学。信じられないでしょ? だから、皆、真面目だったよね、あのころのアイドルは」
あいざき「マネージャーは24時間体制で監視ですもん。だから、女の子と仲良くなるとしたら学校でしたね」
邦子「携帯がないから手紙を渡したり、同級生に仲を取り持ってもらったりね。ぜんぶアイドル雑誌情報ですけど(笑)」
あいざき「ただ、僕は忙しくてほとんど学校に行けなかったんです。同期もいなかった。上には野口五郎さんと郷ひろみさんがいて、下が『イルカにのった少年』の城みちるだから」
邦子「そういえば城みちるは一回逃げたね。『ひまわり娘』の伊藤咲子と。イルカとひまわりが一緒に逃げたのよ(笑)」
あいざき「当時は『他のタレントさんと口をきいちゃいけない』と言われていました。要するに純粋培養したいわけですよ。誰々が給料いくらとか、あの事務所の待遇はどうだとか、そういう情報をシャットアウトしたかったんです」
邦子「『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のメンバーで給料の話をしたとき、吉本興業勢がひっくり返っちゃったからね。自分たちのギャラがあまりに安くて。ビートたけしさんに『それ、日銭か?』って笑われてた(笑)」
あいざき「まあ、デビューから3年間は『あいざき進也』をこなすのに精一杯でプライベートどころじゃなかったですけどね。『This is a pen』レベルの英語力なのに、コンサートで洋楽を歌わされるんです。忘れもしないのはデビュー1年目。スティーヴィー・ワンダーの『悪夢』を、バンド付きで歌わされました」
邦子「当時のナベプロの社長、渡辺晋さんは元ジャズマン。音楽はマジでした」
あいざき「英語の歌詞をカタカナにして、ホテルに缶詰めになって暗記して……」
邦子「皆、そうですよ。グッチ裕三もそうでしたから(笑)」
あいざき「当時の僕のマネージャー、大里洋吉さん(後の大手事務所『アミューズ』創業者)の持論が『これからアイドルが自分の言葉でメッセージを伝える時代が来る』で、僕は作詞や洋楽の訳詞もしていたんです。その作業がコンサート当日の朝までかかることもあった。で、全国ツアーの合間に開催されるフェス用にまた別の曲を覚えて……。自分の意見なんて言える時代じゃなかったからね。シングルのA面、B面を決めるのも渡辺社長でしたし」
邦子「きびし~!」
あいざき「それでも『ピンク・レディー』よりはマシでしたよ。歌番組は事前に音合わせをするんですが、彼女たちは代役がやる。本番だけ来て、またすぐ別の局に移動。オープニングにもエンディングにもいない。僕らは『ピンク・レディー』のケツしか見てないですよ(笑)」
令和になっても、あいざき人気は衰えず、近年は昭和のスターが集う『夢コンサート』で全国を回っている。山田邦子が司会を務めたこともあった。
あいざき「元『フォーリーブス』の江木俊夫さん、『狩人』の高道さん、元『フィンガー5』の晃さんと4人で『TASTE4(テイストフォー)』というユニットを組んでいます」
邦子「ビックリしたのは皆、歳を取ってないこと。スーパーアイドルは老けない」
あいざき「高道にも『お前、ほうれい線出てきたな。いいのがあるぞ』って」
邦子「いらねー(笑)。晃くん、こないだクイズ番組に出ていたんだけど、スーパーアイドルのままなの。おもしろくてかっこよくて、ピュア」
あいざき「晃は天然ですね」
邦子「『お菓子がなかったから、きゅうりに砂糖かけて食べた』って聞いたときは笑い転げましたよ(笑)。それにしても、私がコンサートの司会をして『あいざき進也さんです!』って言えるなんて、中学生のころの自分に教えてあげたい」
あいざき「邦子さんとは釣りという共通の趣味があって『ぜひ今度行こうね』って話をしてるんだけど……最近は体力なくて、日帰りは難しいかな」
邦子「そうしたら、泊まることになりますね……」
あいざき「FRIDAYの別のページに載ってたりして(笑)」
■本対談のフルバージョンはYouTube『山田邦子 クニチャンネル』にて、8月14日以降に順次公開されます!!
『FRIDAY』2020年8月21・28日号より
撮影:小松寛之取材・文:細田昌志