『半沢直樹』で注目!江口のりこ「成功までの平坦じゃない道のり」
ドラマ界に欠かせない存在に

香川照之(54)や片岡愛之助(48)ら助演者陣の熱演も見逃せないTBSの連続ドラマ『半沢直樹』(日曜午後9時)に、第4話(8月9日放送)から新たな登場人物が加わった。
その1人は国土交通相・白井亜希子で、演じているのは江口のりこ(40)。誰もが認める演技巧者であり、どんな役もリアルに演じられるため、このところ連ドラからの出演依頼が絶えない。
過去に演じた役柄の一部を振り返りたい。
・2010年 NHKワンセグ『野田ともうします。』 大学のロシア語学科に在籍し、手影絵サークルに所属する1年生役。19歳という設定だったが、本人は30歳だった。この作品は主演
・2016年 日本テレビ『校閲ガール』 東大卒の敏腕校閲者
・2018年 日本テレビ『anone』 小学生の子供がいるシングルマザー。ちなみに江口自身は独身
・2019年 TBS『わたし、定時で帰ります。』 中国人役。中華居酒屋のおかみさん
・同年 NHK『これは経費で落ちません』 転職を繰り返してきたコミュ力ゼロのOL。配属先の経理部をかき回す
『半沢直樹』で演じている白井亜希子は、支持率低下中の的場内閣が改造された際、サプライズ人事として国交相として初入閣した若手議員。外国人まで演じてきた江口だが、大臣役は初めてだ。
白井は政治家としてのキャリアは浅いものの、元キャスターで知名度と人気は高く、やり手という設定。大臣就任の会見では、記者との間でこんなやり取りがあった。
白井「このたび国土交通大臣を拝命いたしました白井亜紀子です」
記者「毎朝の高田です。白井大臣の抜擢は、次の選挙に向けた票集めという見方もあります」
白井「選挙? それは、い・ま・じゃ・な・い。私は帝国航空を改革します」
巨額債務を抱える帝国航空の改革を白井が表明したことから、半沢直樹(堺雅人、46)との接点が生じた。出向先の東京セントラル証券から東京中央銀行に復帰した半沢は、帝国航空の再建に着手したばかりだった。
東京中央銀行は帝国航空に700億円以上も融資している。これを半沢は回収するはずだったが、白井は「各銀行には7割の債権カットをお願いしたい」と一方的に宣言。実現すると、東京中央銀行は500億円以上の損を被る。第5話以降、半沢と白井は激突することになるだろう。
ドラマ界に欠かせない存在となった江口のりこは1980年4月、兵庫県明石市で生まれた。家族は両親と兄2人、双子の姉、妹。その後、加古川市を経て、小学生の時に姫路市へ転居した。
中学時代は陸上部で活躍する一方、せっせと映画館通い。成績は良かったようだが、本人によると、「勉強が面白いと思えなかった」(①)ため、あえて高校には進学しなかった。
中学卒業後はうどん店などでアルバイトをしながら、映画館通いを続けた。姫路市内のみならず、大阪にまで足を伸ばした。
そして19歳だった1999年、「演じたい一心で上京」(②)し、劇団東京乾電池に入る。座長の柄本明(71)を尊敬していたからである。柄本が映画『カンゾー先生』(今村昌平監督)で日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を獲った翌年だった。
以来、柄本は江口の師となる。その柄本も『半沢直樹』に出演しているのはご存じのとおり。白井を国交相に推した大物議員・箕部啓治役だ。2人はストーリー上も政界の師弟という関係に。粋で面白い設定と言えるだろう。
柄本はTBSを通じ、こうコメントしている。
「劇団の後輩の江口のりことはドラマ初共演になりますので、楽しみにしています」
第4話では2人が絡むシーンはなかったものの、第5話以降は見られるはず。師弟がどんなやり取りをするのかーー。これからの見どころだ。
新聞配達生活
さて、現在は確固たる評価と人気を得ている江口だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。東京乾電池に入団した当初は生活のため、新聞販売店に住み込み、配達をしていた。朝日新聞だ。
なので、2008年に朝日のインタビューを受けた時には「朝日の取材はすっごいうれしいです」と素直に喜んだ(②)。インテリから怪しい人、外国人まで演じられるが、その素顔は純粋な人なのだろう。
趣味はウォーキングと車の運転くらいで、酒もたしなむ程度。なにより好きなのは演じること。芝居が面白い理由は「スポーツのように得点が出ることもなく、人によって評価が異なる点にある」(➂)と語る。夢は海外で舞台に立つことなのだという。
『半沢直樹』の白井役も楽しく演じている。
「お話を頂いたときは『えっ、私が?』という驚きでした。ここまでのエリート役は初めてなので、ワクワクしています。毎週楽しんで見ていただけるように、こちらも楽しみながら頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします」(TBSを通じて発表したコメント)
ちなみに師匠の柄本の長男である柄本佑(33)の妻・安藤サクラ(34)と江口が似ていると評判になっている。これを江口はどう思っているのか。
「しようがないなと思います。自分でも、ふと似ているなと思うときがある」(①)
淡々と受け止めている。小さなことは気にしないタイプらしい。それも魅力のひとつなのだろう。
【参照元】
①サンケイスポーツ2018年3月17日付
②朝日新聞夕刊2012年12月8日付
③毎日新聞夕刊2016年10月27日
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取材・文:高堀冬彦
ライター、エディター。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部記者、同専門委員、毎日新聞出版社サンデー毎日記者、同編集次長などを経て独立。スポニチ時代は放送記者クラブに所属