人気ユーチューバーシェフが伝授「料理はセンスではなく科学だ!」 | FRIDAYデジタル

人気ユーチューバーシェフが伝授「料理はセンスではなく科学だ!」

登録者数30万人のYouTuber料理人・大西哲也氏に聞く、ゼッタイ失敗しない「ドヤ飯」の極意

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「美味しくなる理由」を理解する。それがドヤ飯への第一歩

リモートワークで在宅時間が長くなり、「料理でもやってみるか」とキッチンに立つ人も多いのでは? そこでぶちあたるのが「俺って料理のセンスねぇな」問題だが、そんなアナタに朗報が。

「料理にセンスや腕は必要ありません。料理は科学。美味しいものには美味しくなるだけの理由があり、それを理解すれば誰でも絶品が作れます」 

そう豪語するのはYouTubeで料理動画総再生回数4500万回越えの料理人、大西哲也さんだ。大西理論を把握して、家族や友達にドヤれる〝ドヤ飯〟を作ってみよう。

数々のサラリーマン経験を経て料理家へ。「昔から探究心が異常で、料理の行程にしても〝なぜそれをするのか〟が気になって仕方がない。根拠がわかれば必ずやるようになります」
数々のサラリーマン経験を経て料理家へ。「昔から探究心が異常で、料理の行程にしても〝なぜそれをするのか〟が気になって仕方がない。根拠がわかれば必ずやるようになります」

156度以上で発生!「メイラード反応」を利用した〝予想以上の目玉焼き〟

食材を156度以上で加熱すると糖とアミノ酸が反応し、茶色くて美味しい物質が生まれる。それがメイラード反応だ。

「卵の黄身は60度で固まってきます。黄身は固まりすぎず、白身の裏にメイラード反応があるのが、僕の思う目玉焼きの一番美味しい状態です」(大西さん 以下同)」 

それを実現させるために不可欠なのは、鉄のフライパンだという。

「鉄のフライパンは、熱伝導率と蓄熱性が高いからです。同じ156度で焼いても、フッ素加工のフライパンでは焼き目はつきません」

ちなみに卵が固まる温度さえ知っていれば〝カルボナーラ卵ぼそぼそ事件〟も起こらない。

「冷えたフライパンに卵液とパスタを入れ、それから火にかけて徐々に70度以上まで温めていけば、絶対に失敗しません」

卵を常温に戻しておくことと、油を入れる前にフライパンを強火にかけ、軽く煙が出る直前まで熱することも大事
卵を常温に戻しておくことと、油を入れる前にフライパンを強火にかけ、軽く煙が出る直前まで熱することも大事

パスタを茹でるにはお湯に対して1〜1.4%の塩が必須

このパーセンテージでいくと5ℓのお湯に対して塩70gが必要だ。…え、70g? めっちゃ多くないか?

「〝こんなに入れるわけがない〟と自己判断せず、騙されたと思ってきっちり計ってください。料理本に答えは書いてあるのに計量をさぼって適当に入れると、味は決まりません」

1〜1,4%の塩を入れるとパスタに塩味がついて美味しくなり、食感も違ってくるという。

「塩を入れることでデンプンの糊化を遅らせて、歯切れのよい食感になります」

パスタはなるべくたっぷりのお湯で茹でよう。お湯が少ないとパスタを入れた時に温度が下がるし、水分が蒸発すると塩分濃度が濃くなってしまう
パスタはなるべくたっぷりのお湯で茹でよう。お湯が少ないとパスタを入れた時に温度が下がるし、水分が蒸発すると塩分濃度が濃くなってしまう

ステーキを焼くときはタンパク質の「アクチン」と「ミオシン」に着目!

アクチンは肉の水分を抱え込んでいる細胞。66度以上で細胞が壊れ、水分が外に出ると肉が堅くなる。ミオシンは50度以上で変性し、これがグニグニのお肉をプリッとした食感に変えてくれる。

「ミオシンが変性しながらも、アクチンが壊れない温度に肉の内部を仕上げること、つまり50度以上、66度以下の状態に肉を温めつつ、外側は156度以上でメイラード反応をつけるのが理想。そのためには調理の前に、肉を常温に戻しておくことが大事です」

冷蔵庫から直行のお肉だと、外側にメイラード反応がついても中心温度が50度に達しないのだ。

「焼いた肉を休ませるのも大事です。中の分子が激しく動いているのを落ち着かせるために、焼いた時間と同時間アルミホイルで包んであげる。すると切った時に肉汁が出ません」

鉄のフライパンを200度まで温めて牛脂をなじませ、強火で1分、裏返したら蓋をして弱火で1分半。焼き上がったらアルミホイルに包んで2分半休ませよう
鉄のフライパンを200度まで温めて牛脂をなじませ、強火で1分、裏返したら蓋をして弱火で1分半。焼き上がったらアルミホイルに包んで2分半休ませよう

昆布60度、鰹節80度。出汁の旨味を最大限に引き出す温度を知ろう

昆布の旨味はグルタミン酸ナトリウム。これがお湯に抽出される温度が60度付近なので、沸騰したお湯に入れても〝まず味〟(大西さんの造語)が出るだけだという。

「昆布は水から入れ、ゆっくり温度を上げて旨味成分を抽出し、80度になったら取り出します。鰹節の旨味はイノシン酸で、こちらは80度くらいで出てきますので、沸騰してきたら火を止め、そこから入れます」

火を止めて鰹節を入れたら、そのまま2分じっと待ち、ざるとボウルを使って漉す。さらしを使うと、より澄んだ出汁がとれる
火を止めて鰹節を入れたら、そのまま2分じっと待ち、ざるとボウルを使って漉す。さらしを使うと、より澄んだ出汁がとれる

「いつもの米」を信じるな!チャーハンのご飯は必ずレンチンを!

誰もが作るチャーハンにも、目からウロコの美味しい法則がある。

「鍋の温度を下げないことが大事。炊飯器の保温は70度なので、レンジで90度くらいに温めてください。炊く時に少量の塩・お酒・油を入れると甘みが出るし、お米の糊化も変化してパラッとした仕上がりになります」 

手軽にできそうで、意外に難しいのがチャーハン。高温&スピード勝負なので、材料は全部切って手元に置いておくのも大切なポイント!
手軽にできそうで、意外に難しいのがチャーハン。高温&スピード勝負なので、材料は全部切って手元に置いておくのも大切なポイント!

実はこのチャーハン、大西さんは米を選ぶところから始める。

「適した品種を選ぶことが大事。コシヒカリを使ってる時点で〝負け確〟です。ひと口に米といっても数百種類あり、農家の人は細胞レベルまでめちゃくちゃがんばって品種改良し、それぞれに特徴があります。僕がチャーハンに合うと思うのは、ほぼ富山県内でしか流通していない〝てんたかく〟、同じく富山産の〝富富富(ふふふ)〟、そして北海道産の〝ななつぼし〟です」

毎日食べるお米も「実家がこのブランドだったから」と選ぶのではなく、一度食べ比べてみると好みの逸品に出合えそうだ。

炊飯は「総重量=生米の重量×2,4」目安で水を入れる

炊飯器なら合数に合わせて目盛りがある。それに「水は人差し指の第一関節まで」とおばあちゃんは言ってたが?

「炊飯器の線も、炊飯器自体が斜めになっていたら誤差が出るし、指の長さなんて人によって違いますよね。計量することで毎回同じ仕上がりになりますし、自分のお茶碗1杯分のグラム数がわかれば、逆算して必要量だけ炊くことができる。冷蔵庫の中にラップで固めたちっちゃいご飯がいっぱい、なんてこともなくなります」

米は鍋で炊いてみよう。「米が炊けるとは米のでんぷん質がα化(糊化)した状態になること。90〜100度で20分以上加熱すればα化しますので、それさえ達成すれば火加減は自由でOK」
米は鍋で炊いてみよう。「米が炊けるとは米のでんぷん質がα化(糊化)した状態になること。90〜100度で20分以上加熱すればα化しますので、それさえ達成すれば火加減は自由でOK」

いかがだっただろうか。しっかり計って食材の特質を知り、適切な調理をすれば、誰にでもドヤ飯は作れるのだ。

「僕は調理学校にも通っていないし、料理はネットと本から情報を精査し、独学で研究しました。料理を始めるなら、まず〝考える〟ということをしてほしいんです。なぜこれが必要なのかと疑問をもって調べることで、美味しさの秘密がわかるはずです」

その上で、「最終目標は自分好みの味が作れるようになることだ」と、大西さんは言う。

「そもそもなぜ美味しいものを作るかというと、幸せになるためだと思うんです。だから〝楽しみながら自由に頑張りましょう〟と言いたいですね」

最後に、大西さんの数ある人気動画の中から再生回数第1位のペペロンチーノを。この楽しさ、料理への愛情こそが〝隠れた調味料〟といえるだろう。

【決定版】プロが超詳しく教える100万再生超えのペペロンチーノの作り方!

大西哲也(おおにし・てつや) クッキングエンターテイナー、「料理うまいBAR COCOCORO(コココロ)オーナーシェフ。さまざまな社会人経験を経て、独学で学んだ料理で「人に喜んでもらう」をテーマに起業。店舗とYouTubeにて、料理とエンターテインメントを届ける活動を続けている。YouTube『COCOCOROチャンネル』は登録者数30万人を突破。連載『俺のコラボカフェ(4Gamer.net)』のほか、調理器具や調味料の開発・プロデュースも手掛けるなど、幅広く活躍中。著書に『誰がつくってもプロの味!!!  COCOCORO大西哲也のドヤ飯』(大和書房)がある。

  • 取材・文井出千昌

    フリーライター。「ナニコレ面白そう〜」だけでウン十年もライターを続けている。ファッション誌・情報誌・音楽雑誌・ウェブなどジャンルはさまざま。料理雑誌の経験はないが、取材後さっそく青椒肉絲にて大西理論にトライ。すべてをしっかり計量し、豚肉は繊維と並行に切って下味をつけ、肉は肉、野菜は野菜と分けて炒め、香味野菜は低温で旨味を出してみたところ、「今まで作ってきた青椒肉絲は一体なんだったのか!」と、その仕上がりに愕然。急きょゴーヤチャンプルーにも理論を応用し、今に至る。

  • 撮影片桐圭

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