人気ドラマがリメイク!『東京ラブストーリー』やっぱりスゴい | FRIDAYデジタル

人気ドラマがリメイク!『東京ラブストーリー』やっぱりスゴい

新旧ドラマを徹底分析。これは人間関係の「反面教師」だった!

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最近『東京ラブストーリー』(フジテレビ系・1991年)のテレビ放送版と、2020年に『FOD』で放送済みの再制作版をAmazon Primeで一気に観た。29年前に放送されたドラマがリバイバルされるのは稀有なこと。それだけの実力、そして伝説を誇る作品なのだと思う。

新旧ともにキャラクターや物語の大幅な変革はない。変わったのは、見ている自分である。テレビ放送当時は飲みに行くことさえ知らない、純度100%の10代だったので、大人の恋愛を描く本作のすべてがファンタジックに見えていた記憶がある。

でも様々な経験を経て、出演者よりも年上になって見た『東京ラブストーリー』は“人間関係の戦場”という印象。私の白目はもう澄んでいない……。

そんな戦場っぷりから見た主要4人の濃すぎるキャラクターを、新作・旧作を並べ、前後編にわけて、改めて振り返ってみようと思う。まずは前編から。

1991年版の『東京ラブストーリー』「カンチ」で人気沸騰した織田裕二。1995年撮影 写真:共同通信
1991年版の『東京ラブストーリー』「カンチ」で人気沸騰した織田裕二。1995年撮影 写真:共同通信

カンチは平成~令和を駆け抜ける、いい感じのクズ男

およそ30年前に見た、長尾完治=カンチ(新:伊藤健太郎、旧:織田裕二)は“優しい男”だった。女ったらしの三上健一(新:清原翔、旧:江口洋介)より、自分はカンチを選ぶ。そう思っていたのだけど、令和になって改めて見直すとカンチは人が良さそうなオーラを纏った“クズ男”だった。

そう思ったのは私だけではない。先日、飲み屋のカウンターでO Lさんと話していたら「あの4人の中で一番悪いのはカンチですよね!!」と断言していた。もう彼の優柔不断ぶりは一般にも確実に浸透している。まずそのことを心得て、この先を読み進めてほしい。

幼なじみに自分から告白をせずに、ワンチャンを信じながら関口さとみ(新:石井杏奈、旧:有森也実)の周囲をウロつく。恋愛をしていれば必ず訪れてしまう、ケンカや浮気で弱る時期。そこを狙って突いてくる港区女子のようだ。

その間に、ちょっと気の強そうな赤名リカ(新:石橋静河、旧:鈴木保奈美)から好かれると、まるで招かれたかのようにそちらへロックオン。でも自分の誕生日に愛するリカがあれこれと用意してくれていると知りながら、さとみに人生相談を持ちかけられると、ついついそちらを優先してしまう、不埒ぶり……と、画面を見ながら、若干イライラしてくるではないか。

たった二人の女性の間をはっきりしない態度で行き来するということは、将来的に浮気をする可能性は十分にある。この状況に対して輪を掛けるかのように、リカとの遠距離恋愛で「悩んでいる」と、さとみの前で泣いたうえにキスをしたシーンにはドン引きしてしまった。さらに最終話で「お、カンチ!?」と思うシーンもあるけれど、最終的には「ああ、そうなったか~」と見ている側もジェットコースターのようにアップダウンさせられる。普通の会社員と見せかけて、危険な男なのよ、カンチ。

ボロクソ発言ばかりで恐縮だけど、2020年版のカンチで良かったことといえば伊藤健太郎というキャスティングが、最高だった。ベビーフェイスで高身長というアンバランス感は、カンチのクズっぷりを和らげてくれたように思う。R15指定のラブシーンも、伊藤くん(敢えてこう呼ぶ)だからこそ、良かった! ありがとう、伊藤くん!!  あなたが演じてくれなかったら、解せぬまま最終話を迎えるところでした。

30年前は前衛的でも、今はこじらせ女の一歩手前?なリカ

「セックスしよう!」

この強烈なセリフで1991年を一世風靡した赤名リカ。女性側からベッドに誘うという(当時は)大胆な言動。男女雇用機会均等法がほぼ浸透していない日本では「ハレンチ!」「させ子?」という印象を残していたはず。あの皇后・雅子様もこのドラマをビデオレンタルしていたと話題になったけれど、リカの一言をどんな風に受け止めていたのだろう……?

ただ2020年、このセリフは世間を揺るがすほどの大きな事件ではない。恋愛の価値観も変わった。昔は時代の最先端だったリカの行動は、令和の女性像には“普通”に映っているかもしれない。これが2020年版のリカに対する初見だ。

そして作品を改めて見直すと、カンチとリカは行動に類似点がある。

リカは自分の「好きだ」という気持ちを率直にカンチへ伝えた。そしてストレートに愛したけれど、ちょっとでも彼の言動に引っかかる部分があると、元彼へ緊急避難を開始している。二人の男性と行き来するとは「あれ、これって……?」とカンチの行動を彷彿させるのだ。1991年版では、まるで性格の違う二人がくっついたように言われたけれど、そうでもない。

ただ最終的には、誰かに寄りかかるのではなくて、リカは自分の意思を貫く。そこがカンチとの決定的な違いと、潔さなのである。

そんなリカにどんなタイプの男性が似合うのだろう? と考えてみたものの、インドの僧侶とか、ほぼ自宅に帰ってこないマグロ漁船の乗組員しか思い浮かばず。自分の想像力の乏しさを呪いたい。

ただ恋愛方法はさておき、リカの働き方は見習うべきものがある。曖昧にしないで、おかしなことには自分の意見を提示する。ドラマ中でもよく

「ワクワクしたい」

こんなことを言っていたし、働き方も自分の意志に忠実で、納得のできないことはやらない姿勢だった。これは働き方が多様化している今だからこそ、推奨したいマインド。リカの恋愛は反面教師であることを忘れず、この働き方をぜひ、令和女子の目指す女性像として見てもらえたら…。

*後編に続く!

  • 小林久乃

    エッセイスト/ライター/編集者/クリエイティブディレクター
    エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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