20世紀の人気ドラマ&新作『東京ラブストーリー』ここがスゴい

「さとみ」が令和に蘇る

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1991年テレビ放送版と、2020年に『Amazon Prime』で放送された最新版のドラマ『東京ラブストーリー』。20代の男女4人による人間模様が描かれている、普及の名作である。なんせ、約30年後に再キャストで製作されるほどの影響力があるのだから。

ただ30年も経つと、文化はだいぶ変わる。主要キャラクター4人の人間像も、元号をひとつ超えると捉え方が全く違ってくるので、そのギャップを中心にキャラクターを掘り出してみたい。前回はリカ&カンチを。今回は三上&さとみのカップルにフォーカスを当てる。

プレイボーイ「三上」を演じた江口洋介。当時はロン毛のイケメン(という言葉はなかったけど)だった 写真:ロイター/アフロ

じつは夫として「お買い得」な天然男子だった三上

いわゆるプレイボーイと目されていた三上健一(新:清原翔、旧:江口洋介)。女性からは敬遠されがちなポジションにいたけれど、よーく見直すと夫にするにはもってこいの扱いやすいタイプだったと、2020年に気づいた。

ジャイアンのように強気な面ばかりを見せているけれど、じつは喜怒哀楽を隠しきれない素直なタイプ。第五話でさとみに「行ってきます」とキスをして出ていく瞬間、三上がちょっと照れながらも、嬉しそうな満面の笑みだったことを見逃してはいけない。もうあんな様子を見せられたら恋である。無理をして女性を口説かなくても、彼はそのままで十分に可愛い。

それから2020年版を通して、じつはクズ男だったとわかってしまった、長尾完治=カンチ(新:伊藤健太郎、旧:織田裕二)とは、圧倒的に違う部分がある。それは、相手が三上なら次の行動が読めるということだ。カンチは目標が定まっていないので、赤名リカ(新:石橋静河、旧:鈴木保奈美)と、関口さとみ(新:石井杏奈、旧:有森也実)の間をフラフラ。カンチが握っているオールはどこへ漕ぎ出すのか、予測不能。

一方、三上は感情を包み隠せず表に出ているので、わかりやすい。三上とさとみが別れる原因は、このわかりやすさ=天然ぶりがアダになってしまったため。でもトータルをして考えると、三上のほうが「あんた! またどっかの女に惚れているでしょ!!」と突っ込みやすいし、結婚物件として考えると非常にお買い得だと思う。しかも今なら医者という志を持った職業付き。

最近、バラエティ番組でも「天然」のアイドルや、タレントを取り上げることが多くちょっとしたブームでもある。その様子を見ていたおかげで、三上は”天然”という魅力に着地ができた。これには時代の流れを感じずにはいられない。

「あざとい女」の代表といえばさとみだった

最近、男性を射止めるために姑息な手段を使う女たちを“あざと女”と呼ぶ。パッと想像すると、ヘアスタイルはひし形シルエットか、ふんわり巻き髪。パステルカラーのワンピースを着て、カラオケでは一曲目に『タッチ』を歌う女を想像するだろう。

でも私が思う究極のあざとい女は、一見、地味そうなタイプだ。口数少なく、軽くはにかみながら、男の斜め後ろをキープ。でもいざというときは前に出る。秒速で男の前に出てくる。そういう女の典型例がさとみなのだ。

高校時代から男2人、女1人のドリカム状態で愛媛県の片田舎で過ごしていたという歴史からしてあざとい。「……女友達、いないの?」と質問をしたくなる。しかも、カンチも三上もさとみに片思いという状態を知りながら、制服を着ていたわけだから、あざといを超えて、もうこれはサスペンスの香りがしてくるではないか。ああ、怖い。

それから気づいている人も多いと思うが、新旧ともに、さとみはカンチにやたら相談を持ちかけている。2020年版ではイライラして帰宅した三上に「押し倒されたの」と泣きながら話すシーン、あれにはドン引きだった。自分の性生活までさらけ出すことに、なんの意味があるのだろうか……? 私の思考回路は迷宮入りをしてしまった。そこで真剣に悩みに共感するカンチもカンチだけど。

そして2020年版でさとみは、一度カンチに捨てられてしまう瞬間がある。自分のことを無下に扱ったわけだから、そこで恋を終わらせればいい。でもさとみはまさかの逆転劇で蘇ってくるシーンがあるので、背筋をゾクゾクとさせながら、見逃さないでほしい。

残念だったのは、1991年版の「有森:さとみ」があまりにも強烈すぎて、令和版が追いつかなかったこと。カンチに恋の一撃を喰らわせるためにおでんを持参する衝撃。微かに震える声に、三つ編みツインテール。すべてがカンチをモノにするための伏線。このインパクトを超えて演じられる女優さんは、令和の間に誕生するのだろうか。

とはいえ、恋の戦線を勝ち抜きたい女性にとって、さとみは最上級のモデル…かもしれない。すべてのあざとさを見逃さずに勉強をして、実戦に生かしてほしい。以上!

文:小林久乃

  • 取材・文小林久乃

    エッセイスト/ライター/編集者/クリエイティブディレクター
    エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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