「今は悲しすぎて聴けない」心にしみる筒美京平メロディー10曲

J-POPの神様・筒美京平の世界。Vol.4

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音楽通が抱いていた〝ロック>歌謡曲〟という図式を覆した人

本当に〝ありがとう〟という言葉しかみつからない。僕の音楽人生を豊かにしてくれた偉大なるヒットメーカー、筒美京平。その京平さんが星になってしまった。今回、そんな京平さんに感謝と尊敬の念を込めて自分の想いを書き綴ってみました。

筒美京平という名前を初めて意識したのは’82〜’83年ぐらいに中古レコード屋で偶然手にした『季刊リメンバー』というミニコミ誌でした。もちろん曲は子どもの頃から知っていたけれど、当時はパンク〜ニュー・ウェイヴ一辺倒だった僕は、ロック>歌謡曲という図式で、ジュリー(沢田研二)以外の歌謡曲には、あまり関心がありませんでした。

唯一近田春夫さんが筒美京平の啓蒙活動をしていたものの、それも東京ローカルな部分があり、作曲家を意識して歌謡曲のレコードを買うことはなかったのです。ゴールデン・カップスやカーナビーツなどのGSのレコードは買い漁っていましたが、やはりパンクやロックという認識でした。

そんな時代に歌謡曲をジャパニーズポップスとして考察した『季刊リメンバー』は画期的で、同世代の小西康陽さんやサエキけんぞうさんなど、このテの音楽が好きな人はみんな読んでいて、寄稿もしていました。そこに頻繁に登場していたのが筒美京平で、「あれもこれも、みんな筒美京平だ。そういうことだったのか!」と。

その後、縁あって『季刊リメンバー』の編集・発行をしていた高護さん(現ウルトラ・ヴァイヴ代表)とお仕事をするようになっていろいろと教わり、さらに筒美京平サウンドにのめりこんでいきました。

歌詞は歌謡曲、でもサウンドだけ聴いたらアップトゥデイトな洋楽。しかも刺激的なのにクールでお洒落。そして何よりも斬新だったのはリズムセクションを際立たせたグルーヴのある曲づくりでした。

それから四半世紀後に、まさか京平さんと一緒に仕事ができるとは思っていませんでした。打ち合わせは、旧ホテルオークラのラウンジで。緊張して待っているとニコニコしながら京平さんが現れました。仕事の話自体は10分で終わって、残りの1時間ぐらいは雑談含みいろいろとお話しさせていただき、なんとも贅沢なファン・ミーティングとなりました(笑)。

そんな京平さんの、大好きだけど今はつらくて聴けない、切ないメロディーの曲を、あえて独断と偏見でご紹介したいと思います。

ベスト10は選べない。でも、今聴きたいのはこんなメロディー

  • 「さらば恋人」堺正章(’71年5月)
  • 作詞:北山修 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平

京平さんの訃報を知った時にまっさきに頭に流れたメロディーが、この美しい大ヒット曲でした。昭和の若いカップル、さよならと書いた手紙には、その後どんなドラマがあったのでしょうか。この時代、みんなが一緒の曲を聴いて好きになり、みんなが一緒に口ずさみ、幸せになれましたね。心に染みます。マチャアキ(堺正章)がザ・スパイダーズ解散後、ソロで出した初めての曲でした。

  • 「いつか何処かで」平山三紀(’72年6月)
  • 作詞:橋本淳 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平

洋楽を感じさせるお洒落なメロディーとアレンジはソフトロック風で、和モノDJ の定番ナンバー。’70年代、京平さんは平山三紀さんの唯一無二の歌声に魅了され、たくさんの名曲が生まれました。「いつか何処かで」もそんな中の一曲で「希望の旅」のカップリング曲です。そして信じています、またあなたに会える日を。

  • 「初恋のメロディー」小林麻美(’72年8月)
  • 作詞:橋本淳 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平

カーラジオから流れてきそうなドライブ・ソング、なんて可憐なメロディーなのでしょうか。そして、同時にとても悲しい歌。アイドル・ソングの原型ともいえる橋本淳の歌詞には誰もが感情移入できます。当時、小林麻美はあこがれのお姉さまでした。

  • 「赤い風船」浅田美代子(’73年4月)
  • 作詞:安井かずみ 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平

TBSドラマ「時間ですよ」の劇中歌。プロデューサーの久世光彦が〝現代の童謡〟が欲しいとリクエストして生まれた曲です。あえて今、この大ヒット曲をじっくり聴いてみたら、誰もが歌える優しいメロディ・ラインに改めて涙しました。京平さんの温かい人柄を感じます。

  • 「色づく街」南沙織(’73年8月)
  • 作詞:有馬三恵子 作曲:筒美京平 編曲:筒美京平

後に森高千里がカバーした「17才」でデビューした南沙織。シングル9作目の「色づく街」は哀愁のあるメロディーで、秀逸なのはサビの4ビート風なグルーヴ感、続く二泊三連の〝さよならは〜〟で胸が熱くなります。いつもこのサビがくるたびに、ノリノリの南沙織がとても愛くるしく見えたものでした。

  • 「卒業」斉藤由貴(’85年2月)
  • 作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:武部聡志

この曲、意外と歌うのが難しいと思われるのですが、斉藤由貴の歌唱がとても魅力的で、京平さんのメロディーと相まって歌謡史に残る最高傑作のひとつとなったと言えるでしょう。そして、〝もっと哀しい瞬間の涙〟とはどんな涙なのでしょうか。あ、でもこれ、今一番、つらいやつですよね。

  • 「あなたを・もっと・知りたくて」薬師丸ひろ子(’85年7月)
  • 作詞:松本隆 作曲:筒美京平 編曲:武部聡志

明るいコード進行なのに憂いのあるメロディーは今聴いても色あせず、本当に切ないです。セリフの後のサビにくると自然に涙が出そうになります。アレンジは「卒業」と同じく、当時、松任谷由実コンサートツアーの音楽監督だった武部聡志。どちらの曲も打ち込みサウンドと生楽器の組み合わせが絶妙です。

  • 「君だけに」少年隊(’87年6月)
  • 作詞:康珍化 作曲:筒美京平 編曲:馬飼野康二

洗練されたフィリーソウルなバラードは、とっても都会的でロマンティック。やっぱり京平さんは洋楽の人だなぁ〜と再認識させられた思い出の曲です。当時TVで見たとたん、すぐにレコード屋に買いに行きました。今頃、空の向こうでジャニー喜多川さんとニコニコとお話しされているのでしょうか。

  • 「八月の恋」森高千里(’91年6月)
  • 作詞:森高千里 作曲:筒美京平 編曲:斉藤英夫

実は森高千里の数ある名曲の中で一番好きな曲です。やはり京平さんのポピュラリティあるエバーグリーンなメロディーは涙ものです。続けて’60年代のミーナの「砂に消えた涙」も聴きたくなるのは、森高さんの歌詞も含めイタリアン・ポップスの匂いがするからかな。それにしてもこの透明感のある世界観はステキすぎます。AMラジオで聴いてみたい。

  • 「泣いてないってば」裕木奈江(’92年11月)
  • 作詞:秋元康 作曲:筒美京平 編曲:萩田光雄

裕木奈江の儚い雰囲気の歌声にはとっても癒されます。京平さんのメロディーは、そんな彼女の歌声を際立たせ、胸キュンなナンバーに。薬師丸ひろ子もそうだけど女優さんが歌う京平ワールドは、セリフも込みで実にいいですね。萩田光雄のアレンジもさすがのエレガントさです。でも、泣いてないってば…。

そしてそして、本当の最後。

いつまでも心に残るあなたの作品はいつの時代も大衆に愛され、洋楽しか聴かない音楽通たちもうならせました。偉大すぎる音楽家〝筒美京平〟。謹んでご冥福をお祈り致します。

Vol.3『松本伊代 デビュー曲大ヒットの理由は「ヘン声」だったから…?』はコチラ

『MAGICAL CONNECTION 2020』の詳しい情報はコチラ

 

  • 文・イラストサリー久保田

    アートディレクター、グラフィックデザイナー、ミュージシャン。ミュージシャンとしてはザ・ファントムギフト(ミディ)、les 5-4-3-2-1(コロムビア)、SOLEIL(ビクター)でデビュー。11月、12月に自身の還暦を記念して7インチ・シングルをVIVID SOUNDより連続リリース! 参加アーティストは平山みき、RYUTist、野宮真貴、MANON。
    また、自身が監修・選曲した渋谷系サウンド第三世代のコンピレーションアルバム『MAGICAL CONNECTION 2020』が11/25にビクターから発売。

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