DJ松永 爆発的人気の秘密は「ズルくないズルさ」にあり

「芸人よりもバラエティに呼ばれるDJ」のロングインタビュー!

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DJ松永(撮影:島村緑)

11月11・12日には自らのHIPHOPユニットCreepyNutsで武道館単独ライブを行い、俳優・菅田将暉とはコラボレーション楽曲を制作。日本の5大文芸誌のひとつ『文學界』で連載を持ち、ラジオ『オールナイトニッポン0』ではレギュラーを担当。しかも、バラエティ番組の制作者からは「芸人よりも番組に呼びたい」といわれている男、DJ松永。

全方向のメディアからお呼びがかかり、しかも、2019年にはDJの世界一を決める大会で優勝した彼。肩書きだけ見ればどれだけイカつい輩なのかと思いきや、おしゃれで穏やかな見た目の草食系男子だ。

そんな彼が、『任意同行願えますか?』(毎木曜/夜11:59〜/読売テレビ・日テレ系)で初地上波レギュラー&MCを務める。プロファイリングをもとに、スルーできないと感じた人をスタジオに呼び出し、深掘りをするこの番組で、劇団ひとりとファーストサマーウイカという手練れのふたりと共に、破天荒な人々に突っ込んだ質問をしながら笑いをとっている。

「MCを務めているなんて大それた思いもないですし、その役割をまっとうできているかも自分では不安で……。ただただ劇団ひとりさんとファーストサマーウイカさんについていって、なんとか成り立っている状態です」

自信なさげに語る彼に「それでも自分がバラエティ番組に引っ張りだこな理由はなぜだと思うか」と尋ねると「全然わからないです。番組出演が決まったとマネージャーから聞かされる度に、毎回驚いているのはオレですよ(笑)」と話す。

「本当に不器用なんです。制作側から過去の番組で辛辣なことをいっていたり、オレが吠えていたのを“もう一度聞かせてほしい”というリクエストもあるんですけど応えられなくて。考えて話すというより、思わず言葉が出るタイプだから、その時の熱量がないとうまく話せなくて、再現性がないんですよ。

番組に出演するからには、与えられた役割があるのに、オレは脊髄反射系だからその“役”をまっとうできなくて。だからバラエティに呼んで頂けるのは本当にありがたいのですが、どれだけ力になれてるのか不安です」

DJ松永は何度も「自分は不器用だ」と言葉にする。

でも、意地悪な見方をすると、“自分は不器用”と最初から人に伝えることで“自分に保険をかけている”のではないかと思ってしまうのだ。

例えば彼が連載を持つ『文學界』の連載第1回目の中で、“脚光を浴びているタレントDJが実力もないのにクラブを盛り上げている”ことに毒を吐きまくっていた過去を書いている。でも、そのくだりのすぐ後に、かつて放ったその悪口の矢が自分に返ってきているということも正直に書いている。

つまり、“DJで世界一を取ったことで脚光を浴びた俺が、実力もないのにテレビで研鑽を積んできた人たちとタレントDJとして共演している“というパラドックスに苛まれていることを吐露しているのだ。

「確かにズルく見えますよね。かつての悪口と、今いる自分のポジションに対して許しを乞うているようにも読めると思います。でも、そういう下心があって書いたわけではなくて、本当に連載の話をもらった時に“ヤバイ”って怖くなって、その時に思わず友人に送ったLINEの文面を膨らませたような内容なんです。

過去の自分をいったん原稿化して整理しないと、気持ちよく執筆したりテレビ出演したりできないなと思ったんです。でも、テレビの仕事をする度に“結局、オレには音楽しかないな”と痛感しています」

DJ松永(撮影:島村緑)

表参道や青山を歩いているようなこなれた感のある見た目についだまされそうになるが、偽らない言葉を矢継ぎ早に繰り出す彼は、心底HIPHOPの人間だ。

「HIPHOPではリアルでいるというのがひとつの正義だったりします。CreepyNutsはハードコアじゃないし、ステレオタイプなスタイルではありませんが、平凡な自分がありふれた社会で感じている劣等感や葛藤を等身大に表現する行為は、間違いなく本質的な意味においてリアルなHIPHOPだと思っています」

数あるバラエティに出演し、反射的に自分の感想や恋愛観を語る様子から、DJ松永をついテレビの中の“そういった役割の人”という色メガネで見てしまいがちだが、話を聞けば聞くほど自分の身を切って言葉を伝える人なのだということが伝わってくる。だからこそオードリーの若林正恭にも“血の通った関係”といわれるほどの関係が築けたのだろう。

「テレビの中の人で一番リスペクトしているのが若林さん。俺は彼の存在に生かされたと言っても過言ではないです。当時若林さんは『M-1グランプリ』で脚光を浴びて以降、芸能生活において直面する悩みや葛藤をラジオでリアルに伝えていました。その話で、自分と芸能人を重ね合わせて共感するという体験を初めて味わいました。

どんなにしんどい現実に苛まれてもオードリーのラジオを聴いている時だけは救われましたし、生きる力をもらえました。今、そんな自分を救ってくれた若林さんの本の解説も書かせていただけるようになりましたが、この喜びをどう表現したら良いかもわからないです」

若林のみならず、DJ松永がHIPHOPに目覚めたきっかけでもある日本のヒップホップシーンを牽引するRHYMESTERにもかわいがってもらっているようだ。

「HIPHOPとラジオ好きになったきっかけはRHYMESTERの存在です。今も多大な影響を受け続けているし、リスペクトは日々増すばかりです。RHYMESTERを初めて知ったあの頃から、背中の大きさは変わっていません。当時のラジオも全てMDに録音して大切にとってありますよ。そんな尊敬しかない宇多丸さんから、以前“俺たちがせっせと手で植えてきたものを、お前らがコンバインで刈り取っている”って言われたことがありました(笑)」

社会に揉まれてもがき、怒っていたDJ松永が、今やお茶の間を沸かせている。憧れを現実にして、完全なヒップホップ的文脈回収をしつつある今、あとは女性経験を積めば、ナードたちの完全な希望の星になるのかもしれない。

その暁にはぜひ、写真を撮らせてもらいたいものだ。

DJ松永(撮影:島村緑)

<プロフィール>
DJ松永
新潟県出身、東京都在住。DJ、トラックメイカー、ターンテーブリスト。MCバトル日本一のラッパー「R-指定」とDJバトル世界一のDJ、「DJ 松永」による1MC1DJのHIP HOPユニット「CreepyNuts」としてこれまで3枚のアルバムをリリース。現在、「任意同行願えますか?」(読売テレビ)ほか「イグナッツ‼︎」(テレビ朝日)などに出演中。毎週火曜日深夜3時からは「CreepyNutsのオールナイトニッポン0」も担当。

DJ松永(撮影:島村緑)
DJ松永(撮影:島村緑)
DJ松永(撮影:島村緑)

取材・文:知野美紀子
写真:島村緑

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