rice water Groove「カオス感ある音楽作りたい」
Next Generation Star 第8回
自主レーベルを設立し、レコーディングから
MV撮影まですべてを自分たちでこなすヒップホップクルー
「ヒップホップは他の音楽を吸収して、好きなように解釈し、吐き出せるものだと思っています。”再解釈して、再構築する”。それが僕たちが掲げている音楽のテーマです」
そう信条を掲げるのは新進気鋭のヒップホップクルー『rice water Groove(ライスウォーターグルーヴ)』(’16年結成)である。
メンバーはTBS’93(28・以下、TBS)、Rex Recordings(28・以下、Rex)、chancylemon(24・以下、lemon)。’18年にビートメイカー兼ラッパーのIKE(29)と出会い、現在まで楽曲制作をともに行っている。’19年にはIKEとアルバム『YUPPIE』を発表し、一気に注目を集めた。今では毎週のようにライブハウスのステージに立っているという。
Profile
写真左からリーダーのTBS’93、Rex Recordings、chancylemon。ラッパーのIKE(一番右)と手を組み、『IKE&rice water Groove Production』としても活動している。’22年1月、1stアルバム『Discoveries』をリリースし、注目を集めた
TBS「僕たちはギャングスタ・ラップなど’90年代や’00年代に流行したヒップホップが好きなんです。昔、流行った楽曲に僕たちなりのフレッシュなエッセンスを加えて、オンリーワンの音楽を制作しています」
lemon「ヒップホップの強みである”なんでもあり感”を大事にしています。例えるなら、台湾の路地裏みたいな感じですかね。そこは日本のドラえもんやミッキーマウスを模した人形が並んでいるなど、東洋諸国のカルチャーがごっちゃになって共存している。そんなカオス感を音楽で表現していきたいんです」
’22年1月には最新アルバム『Discoveries』をリリース。「豪華客船で行く世界周遊」をテーマにメロディアスなリリックと旅情溢(あふ)れる楽曲が注目を集めている。そんな彼らもラップ一筋で生活をしているわけではない。
Rex「実は、僕たちは昼にそれぞれ別の仕事をしています。いつかはヒップホップだけで食べていけるようになりたいと思っています」
TBS「平日は営業で忙しいので、時間を作るために3人でシェアハウスに住んでいます。一曲作るのに1ヵ月以上かかるので、制作スピードを上げるために一緒に住みました」
ヒップホップに情熱を傾ける3人だが、普段聞く音楽は必ずしもラップだけではない。最重要視するのは「聞き手に響くか」ということだ。
lemon「同じジャンルばかり聞いていると似たような曲しか作れなくなってしまうんですよ。いろんなジャンルの音楽を聞いて、インプットしています。サザンオールスターズや星野源さんだって聞きます」
彼らは楽曲のレコーディングからMV撮影まですべて自前のクルーでこなしている。
TBS「僕たちは『Doggy G Central Records』という自主レーベルを主宰していて、すべてそのなかで完結させています。MVでも曲の世界観やメッセージを落とし込めるよう、レーベル所属の信頼している映像作家とともに制作しています。とにかく実力のあるクリエイターを身内に揃えていく方針ですね」
昼は社会人、夜はラッパーとして活動する彼らの目標は何なのか。
TBS「メジャーとインディーズから同日に楽曲を出したいです」
lemon「メジャーではみんなにウケそうなことをやって、インディーズでは本当にやりたいことをやる!」
Rex「どちらも僕らの音楽ですが、まったく違った良さと表情を見せられると思います」
彼らの航海はまだ始まったばかりだ。
『FRIDAY』2022年6月10日号より
- 取材・文:富士山博鶴
- 撮影:濱﨑慎治