スモーク、スアレス…優勝の行方を握るプロ野球「助っ人裏話」
【中日】R・マルティネス、【西武】Z・ニール 番記者が書かないウラ情報満載!
【阪神】J・マルテ
ゆったりスイングしているように見えて打球はピンポン球のように飛ぶ――これぞバリバリのメジャーリーガーという打撃を見せていた巨人のスモーク(34)がシーズン半ばで退団した。
「結局、最後までチームに馴染めませんでした。寂しそうに虚空を見つめる姿が印象的でしたね。不運だったのはテームズ(34)の離脱。二人は同い年で’12年にはマリナーズで一緒にプレーするなど、仲が良かった。球団はテームズにスモークのお守り役も期待していたのに、1試合目でケガして帰国したのは誤算だった」(スポーツライターの礒垣健輔氏)
報じられているように家族の不在も大きかった。球団関係者が打ち明ける。
「各球団とも、政府に『助っ人たちの家族の来日も許可してほしい』と働きかけているのですが、間に合わなかった。スモークは年俸の残りは返上すると申し出ており、引き留めようもなかった」
そのスモークの数少ない話し相手だったウィーラー(34)が.337と打ちまくっているのがG党には救いだろう(数字は6月21日現在。以下同)。
一方、マルテ(30)とサンズ(33)の大砲2門が好調を維持している阪神は交流戦も2位で終わるなど快進撃を続けている。なかでも「マルテが3番にハマったのが大きい」と岡田彰布(あきのぶ)氏は言う。
「大谷翔平を超える184㎞の打球速度が話題になっとったけど、左右に打ち分ける柔らかいバッティングが魅力よ。選球眼もエエから、出塁率も高い(.395でチーム1位)。聞くところによると『阪神に来て最高に楽しい』と言うとるらしい。’85年の優勝のときのバースと同じよ。マルテの後に大山悠輔(ゆうすけ)(26)、佐藤輝明(22)、サンズと続く打線は、’85年の猛虎打線と重なる。相手投手にしたらしんどいよ」
ホームランを打った際のパフォーマンス「ラパンパラ」もすっかり浸透した。
「チームを盛り上げようと、母国・ドミニカ共和国のコメディアンのポーズをマネて始めた。日本語がそんなにわかるわけではないですが、マルテはお笑い好きで移動中に吉本新喜劇のDVDを観ているそうです。乳首ドリルが好きなんだとか(笑)」(スポーツ紙デスク)
’18年&’19年と2年連続で本塁打王に輝いたDeNAのソト(32)は家族の”日本愛”で帰国を思いとどまったという。
「’20年オフにメッツからオファーが来ていたんですよ。ところが、ソトは残留した。奥さんが日本、とくに横浜の人や住環境をすっかり気に入っているからだそうです。ソト自身も日本食にハマっているんだとか。とくに寿司。故郷のプエルトリコにも寿司屋はありますが、外国のいわゆるインチキ寿司。札幌遠征の際、ロペスに連れられて行った店で『これが本物のSUSHIか!』と雷に打たれたように感動したそうです」(礒垣氏)
前年最下位からAクラスへヤクルトを押し上げたのも、オスナ(28)とサンタナ(28)の新助っ人コンビだ。
「バッティングもさることながら、二人ともラテン系でとにかくフレンドリー。サンタナはファーストネームのドミンゴから『ミンゴと呼んでくれ』と言うなど、普段から選手みんなに話しかけている。村上宗隆(21)も山田哲人(てつと)(28)も背中で語るタイプで、ヤクルトはおとなしい選手が多い。そこに底抜けに明るい二人が入ってきて、チームの雰囲気が明るくなった」(スポーツ紙ヤクルト担当記者)
数字には表れない貢献といえばオリックスのモヤ(29)も負けてはいない。
「試合前の円陣でのトークが評判ですね。先日も、毛利家の三本の矢の話を持ち出して来て『紙は1枚だったら破れるが、3枚なら破れない』とチーム一丸を強調。T‐岡田(33)に『破れるやろ』とツッコまれていました。皆で大笑いし、いい雰囲気で試合に臨めた。交流戦優勝の陰の立て役者ですよ」(スポーツ紙デスク)
ロッテの長距離砲、マーティン(33)も明るい性格でチームの盛り上げ役となっている。夕刊紙記者が言う。
「女優の広瀬アリスと顔が似ていると話題で、始球式に来てもらってご対面するというプランが持ち上がっていた。アリスも似ていると認めていて、オンラインでは共演したこともあるのですが……対面は実現しませんでした。というのも、広瀬がお菓子メーカーのCMに出ていて、親会社のロッテとバッティングしてしまったのです。ただ、妹のすずはロッテのCMに出ているから、いまはすずとの共演を画策しているんだとか(笑)」
バッティング以外でもチームを盛り上げる。それがいい助っ人の条件だ。
【巨人】E・テームズ J・スモーク
【オリックス】S・モヤ
【ヤクルト】J・オスナ
【ロッテ】L・マーティン
戦力外から2年連続のセーブ王へ!
直球は最速163㎞。チェンジアップでさえ140㎞超えというパワーピッチで早くも21セーブを挙げている阪神・スアレス(30)。絶対的守護神の誕生に”前守護神”が関わっていたことはあまり知られていない。スポーツ紙デスクが言う。
「スアレスはソフトバンク時代の’17年に右ヒジのトミー・ジョン手術を受けたのですが、実戦復帰後は思うような結果を残せなかった。防御率5点台に終わった’19年オフに戦力外となり、阪神に入団するのですが、このとき、獲得を後押ししたのが藤川球児氏(40)なのです。というのも彼自身が同じ手術を経験していて、術後3年目からヒジの状態が良くなることを知っていたから。スアレスは6月13日の楽天戦で12試合連続セーブをマークし、藤川の持つ球団記録を更新しましたが、これも何かの縁ですね」
スアレスと双璧をなすのが、中日のライデル・マルティネス(24)だ。こちらは”前SD”の森繁和氏が発掘したという。
「森さんが『自分の目で見たい』とドミニカ共和国などの中南米に飛び、人脈を築いて”金の卵”を次々と発掘したエピソードは有名ですが、ライデルはたまたまテレビで観たキューバ戦で見つけたそうです。他球団がセペダ(元巨人)やグリエル(元DeNA)ら、完成した選手を獲るなか、森さんは無名の若手だったライデルが欲しいとキューバ政府と交渉。年俸1000万円の育成契約を結び、日本で育て上げた。日本の育成選手の年俸相場は300万円前後ですから高い感じがしますが、普通に助っ人外国人を獲得することを考えれば破格の安さ。キューバ国内でプレーする選手の月給は4000円くらいなので、キューバ野球連盟からすれば、年俸1000万円でもかなり恵まれている。両者の思惑が一致したことで、中日はキューバの好素材を格安で連れて来られるようになった」(礒垣氏)
元ソフトバンクの斉藤和巳氏が「真っ直ぐが格段に速くなっていた」と目を丸くしたのは、キャンプイン直前にソフトバンクが獲得した元日本ハムのニック・マルティネス(30)である。
「日ハム時代の得意球はカットボール。緩急を使い、打たせて取るのが持ち味でしたから、最初は『なぜ獲ったのかな?』と思っていましたが、ホークスの先発陣ではいま一番、安定していますね」
国内の他球団で活躍した選手の獲得はソフトバンクが得意とする手法のひとつだ。礒垣氏が解説する。
「ポイントは最後に交渉すること。そこで『欲しい金額を言ってくれ』と告げ、他球団を上回る金額を出すんだとか。バレンティン(36・前ヤクルト)にデスパイネ(35・前ロッテ)と、根こそぎ持っていかれるわけですよ(笑)」
’18年には全米ドラフト1巡目で指名されたスチュワート(21)を獲得して話題となった。このとき活躍したのは球団OBの在米スカウト、スクルメタ氏だ。「たまたまスクルメタがスチュワートとご近所さんで、家族ぐるみの付き合いをしており、野球のコーチをしていたのが生きた」(球団関係者)という。
「最も重要なのが中南米ルート。ドミニカ共和国在住の萩原健太スカウトの存在が大きい。彼は『国交がなく、メジャーが手を出せないキューバにチャンスがある』と早くから目をつけ、グラシアル(35)やモイネロ(25)ら逸材を続々と送り込んだ。ここ数年、アンディ・ロドリゲスら若手選手の亡命が続いているので、キューバと萩原氏のラインに影響が出るかもしれませんが……」(礒垣氏)
交流戦の広島遠征で新型コロナ感染者の濃厚接触者となった西武・ニール(32)。
「広島で隔離されるのはイヤだ」とタクシーで帰京したが(タクシー代45万円は球団負担)、夕刊紙デスクは「球団の高待遇にニールへの恩義が見える」と言う。
「来日1年目の’19年、ニールは11連勝で優勝に貢献しましたが、実はこの年、流出の危機があった。他球団が水面下で獲得を打診する中、西武は契約延長のオファーを怠っていたのだそうです。代理人は年俸を吊(つ)り上げるチャンスだと進言しましたが、ニールは『バックの源田壮亮(そうすけ)(28)と外崎(とのさき)修汰(28)がしっかり守ってくれるし、チームの雰囲気もいい。西武に残りたい』と断った。今年はシーズン途中にチームへ合流し、投手陣が脆弱(ぜいじゃく)な西武で防御率3.04と安定したピッチングを見せている。タクシー代45万円で済むなら安いかもしれません(笑)」
助っ人それぞれに、人間ドラマがあるのである。
【阪神】R・スアレス
【ソフトバンク】L・モイネロ
【中日】R・マルティネス
【西武】Z・ニール
【ソフトバンク】N・マルティネス
『FRIDAY』2021年7月9日号より
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