プロ野球「トンデモ本」列伝

下半身の悩みまで赤裸々に…… ノムさんも落合も江川もみ~んなぶっちゃけた

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古今東西、星の数ほど刊行されているプロ野球関連本。しかし、粗製乱造じゃないけど、なかには「これ大丈夫?」という力作も混じっていて――奇書珍書を一挙紹介!

サッチーへの愛に満ちた一冊

『女房はドーベルマン』

野村克也・著 双葉社(’02年)

野村克也(83)がサッチーこと妻・沙知代(享年85)の脱税事件で阪神の監督を辞任に追い込まれた後に書いた手記。タイトルのインパクトがすごいが、ノムさん曰く、サッチーは「知らない家に行って、いきなりドーベルマンが飛び出してきた恐怖」を抱かせるような女なんだとか。脱税事件で保釈後、サッチーは「ごめんなさい」と謝ったそうだが、「三十数年間いっしょに暮らしてきて、沙知代の口から謝罪の言葉を聞くのはこれが初めての経験」というのだから、すさまじい夫婦関係だ。ドーベルマンぶりは外でも変わらず、知人の会社が暴力団に脅されていると聞けば乗り込んで助け出し、暴走族も怒鳴り散らす。「これまでの人生で彼女より強い女に出会ったことはない」とノムさんが感嘆するのも無理はないが、その強さの裏側に、神風特攻隊への異常な関心があったというノムさんの分析が興味深い。それにしても、ノムさんが「今回の事件を招いたのは金銭管理に対する私の鈍感さ」と一切サッチーに対する恨みごとを言っていないところがすごい。それどころか全編、妻への愛に満ちた一冊である。ちなみにサッチーの脱税を告発した実子のケニー野村が母への憎悪を詰め込んだ『グッバイ・マミー 母・野村沙知代の真実』という告発本を出版しており、2冊あわせて読むとより味わい深い。

「ソープランドごっこ」まで暴露

『悪妻だから夫はのびる』

落合信子・著 光文社(’86年)

三冠王・落合博満(64)の妻、信子夫人(73)による”夫操縦法”を記した一冊。本書はベストセラーになり、世に”悪妻”ブームを巻き起こした。あの落合を「ネクラで、自分の意思表示ができない人」と一刀両断する信子夫人だが、落合も「ブスは丈夫がとりえ!」と言い返すなど負けていない。本書にはさまざまな”夫操縦法”が記されているが、インパクト大なのが「女は夜の生活を制するべし」の項。夜の生活を盛り上げるため、スケスケのネグリジェを着た信子夫人を見た落合は「ど、どうしただ、おっかあ!」と後ずさりしたとか。リアリティ溢れる筆致が読者のイヤな想像力をかきたてる。また、セックスに関して「私が過去におつき合いした男性と比べてみても、”普通の”」と軽く暴露するのはいいとして、なぜか二人で「首の締めっこ」をして遊んでいることまで暴露。顔が真っ赤になるまでやっていたらしいが、危ないよ! そして白眉なのが「女はソープランドを研究すべし」の項。ソープ通いを「性処理ならいいじゃねえか」と開き直る落合に対して業を煮やした信子夫人は、家にあった男性週刊誌を読み込んでテクニックを勉強し、「ソープランドごっこしよう」と持ちかけたという。それ以来、落合はソープのことを口にしなくなったとか。こっそり行ってたと思うけどね!

プロ野球トンデモ本の最高峰

『戦国の長嶋巨人軍』

志茂田景樹 有楽出版社(’95年)

これぞプロ野球トンデモ本の最高峰。架空戦記ブームの最中、志茂田景樹センセイ(78)が世に放った珍作中の珍作だ。なぜか自衛隊で戦車を使った自主トレをしていた巨人の長嶋茂雄監督以下、落合、松井秀喜、斎藤雅樹、桑田真澄、槙原寛己、デーブ大久保、ジョーンズら一軍選手19人が、戦国時代にタイムスリップ! 桶狭間の合戦に巻き込まれるも、戦車や自動小銃を駆使して手柄を立て、織田信長の仲間になって合戦をしたり野球をしたり……というお話。戦車が大好きで楽天家の長嶋、歴史マニアの落合が中心になって長嶋巨人軍が戦国時代を生き抜いていく。ゴジラ松井は戦国時代でも子どもたちの人気者なのが微笑ましい。この本、巨人軍の承諾を得ていないところもすごいが(本のどこにもクレジットがない)、一番すごいのはこんなに面白そうな題材なのにちっとも面白くないところだ。ミリタリーや戦国時代の知識が淡々と列記されているだけで、あとはほとんど面白いことが起こらない。せいぜい桑田が饅頭屋を開くが失敗して借金まみれになったり、川相昌弘がお腹にバカボンのパパの絵を描いて裸踊りするぐらい。こうやって書くと面白そうなのだが……。エンディングは違う意味で「えっ」と驚かされるので、入手した人は途中で放り出さず、最後まで読み通すことをおすすめする。

覗き、盗み、下痢、暴言の大投手

『やったるで!』

金田正一・著 報知新聞社(’65年)

400勝投手の金田正一(85)が国鉄から巨人に移籍したタイミングで発表した初の自伝。発売当時はベストセラーになり、「やったるで!」は流行語になった。金田はとにかくやることすべてがエネルギッシュ。13歳で終戦を迎えると、焼け跡でまずやったことが進駐軍のセックスの覗き。アメリカ人のパワーに圧倒されて、荒れた生活が始まったという。まずはラジオの専門学校に入るがすぐにイヤになり、備品を盗んで売り飛ばして家宅捜索を受ける。その後、友人の紹介で享栄商の野球部に入ろうとするが、そもそも入学手続きをしていなかった。夏の甲子園大会では予選の前日に柿を16個も食べて猛烈な下痢で惨敗。国鉄と契約するも、招待された試合で国鉄が惨敗するや選手たちの前で「国鉄ってチームは弱いんですねえ。ワシがいる享栄とやったらウチのほうが勝ちまっせ」と言い放つ。入団後は新人時代から給料の前借りを重ね、ベンチでは監督に「うるせえなこのヤロー!」と暴言を浴びせたことも。それでも勝ち続け、スターの座を獲得するのだ。いい話もある。語り草となった長嶋茂雄のデビュー戦、球場には末期ガンに冒された金田の父が来ていた。朝、父はこう言ったという。「相手は学生さんだ。負けるなよ」。結果は4打席4三振。トンデモない人の話だからトンデモ本という一冊だ。

理論派広岡に影響を与えた導師

『中村天風 悲運に心悩ますな』

広岡達朗・著 幻冬舎(’17)

弱小球団だったヤクルトと西武を日本一に導いた広岡達朗(86)。彼が現役時代から信奉していたのが、実業家・思想家・自己啓発作家の中村天風だ。35歳のとき、ヨガの大哲学者カリアッパ師に出会って修行に打ち込んだ中村は、独自の心身統一法を編み出して「天風会」を創設する。すっかり中村に心酔した広岡は、自分の子どもたちの名前も中村につけてもらったほどである。この本は、彼の思想を自らの野球体験と絡めて広めようとしたものだ(うまく絡まってないところも多い)。西武の監督時代に玄米や自然食を取り入れたのも中村の影響。中村の教えは「健全な精神にこそ健全な肉体が宿る」「元気の元は積極的精神だ」というわかりやすいものから「消極的な感情は血液を酸化させる」「心を積極的にしさえすれば、健康も立ち直る」というあやしげなものまである。中村は50代の頃に喉頭ガンにかかったが、治療を一切拒否して92歳まで生きたという。本書の中では広岡もガン治療は一切受けないと宣言。また、プロ野球選手が肩やヒジの手術を受けることにも反対している。広岡は中村に言われるまま、いまでも上半身裸で顔を洗っているらしい。理論派・広岡の考えのベースにはいつも中村天風の教えがあったのだ。

本当にハチャメチャだった離婚劇

『ヘディング男のハチャメチャ人生』

宇野勝・著 海越出版社(’85年)

日本プロ野球界に「珍プレー」という概念を植えつけた世紀の大エラー「ヘディングキャッチ」で全国区のスターとなった中日ドラゴンズ・宇野勝(60)の著書。巨人の連続得点記録をストップさせると息巻いていた先発・星野仙一を激怒させたが、試合後、宇野を励まそうとした星野の車にもう一度ヘディング(追突)するというおまけつきだからすごい。その他にも遅刻の常習犯、ユニフォームを忘れる、重りのリングをバットにつけたまま打席に立つなど、数々のチョンボをしでかしてきた宇野だが、一番の大チョンボは「嫁選び」だった。離婚の経緯は詳しく書かれていないが、妻が知人に騙されて借金の保証人になり、債務を全部被ってしまったことが直接の原因になったらしい。宇野はスター選手ながら、離婚で借金を抱えてしまったのだ。しかし、当時は打席に立つたびに「ウノ。お前の奥さん、ホストクラブの○○にいるぞ」などとヤジが飛んでいたというから、真相は火を見るより明らかだったりする。

政治家・江本が書いたトンデモ本

『総理大臣 長嶋茂雄 明るい破壊者だけが日本を救う』

江本孟紀・著 飛鳥新社(’01年)

200万部を超えるベストセラーとなった『プロ野球を10倍楽しく見る方法』でセンセーションを巻き起こした江本孟紀(71)。’92年にスポーツ平和党から政界入りした江本は、’98年には参院選に民主党から出馬して再選。参議院内閣委員会委員長を務めていた’01年に出版したのが、この突き抜けたタイトルの本だ。日本の政治と森喜朗首相(当時)を徹底的に批判しながら、「リアルな夢 ナガシマ革命」として「ナガシマ新党」と「長嶋茂雄内閣総理大臣」を真剣にプッシュしているのだ……大丈夫? 江本は長嶋が実は成田空港建設の際に反対派の農民たちとの話し合いの仲介をしたという秘話を挙げて「政治ができる」としているが……本気? さらに「ナガシマ革命政権」の組閣として、菅直人、田中真紀子らとともに、村上春樹(なぜか経済財政・IT担当の特命大臣)、北野武(防衛省大臣!)、ラモス瑠偉(外国人の入国問題を担当する法務省大臣!)らの名を挙げているのだから、もはや飲み屋のヨタ話レベル。まぁ、真面目な気持ちでこの本を買った読者がいるとは思えないからいいんだけど……。

平成のプロ野球暴露本の金字塔

『球界の野良犬』

愛甲猛・著 宝島社(’09年)

「ケンカ、ドラッグ、ギャンブル、そしてドーピング。すべてが野球の肥やしになると信じて、やりたいことをやってきた」という、最初の一文から最高すぎる元ロッテ&中日の愛甲猛(たけし)(55)によるプロ野球暴露本の金字塔。何より自分のことを徹底的に暴露しているところが男らしい。横浜高校のエースとして全国的なスターになった愛甲だが、練習の最中の一服は当たり前。甲子園に出ればスタンドからシンナーを差し出しながら応援してくれる仲間がいるし、優勝パレードの後は友人とスナックで乾杯して、そのままソープへ直行。とても高校生のやることとは思えない。ヤクザの組長の誕生祝いに招待されたこともあったという。プロ入りしてから目の当たりにした大物たちの逸話も楽しい。「全員野球できへん身体にさすぞ!」の一言で乱闘を止めた張本勲、年上のコーチに麻雀牌を投げつける村田兆治、故意死球の指示を出しまくって自軍の捕手が主審に「お願いですから退場にしてください」と訴えた監督時代の金田正一などなど。スパイ野球、薬物汚染、野球賭博、ドーピングなどのダーティーな部分についても赤裸々に記されている。ハードボイルド小説のような読後感が味わえるが、これがノンフィクションだということにあらためて驚かされる。

巨人軍の裏金の歴史の一端

『オレは悪太郎』

堀内恒夫・著 ベースボール・マガジン社(’84年)

巨人軍のV9を支えた大エース・堀内恒夫(70)が現役引退時に書いた自伝。タイトルの「悪太郎」は奔放な性格だった堀内につけられたニックネームだが、サブタイトルが「わが投手人生のMEMOIR(メモワール)」と妙に気取っているのがおかしい。まえがきでは「門限があるから破るんだ」とうそぶいているが、本全体からどことなく田舎育ちの純朴さが漂っている。なにせ堀内が山梨の中学時代に野球より熱中していたのが「ウマ跳び」である。プロ入りのくだりであっさり書かれているのが裏金について。養蚕業を営んでいた家業が傾いており、堀内家は現金が必要だった。巨人から提示された契約金は1800万円だったが、父親はそのほかに球団から500万円を受け取っていた。巨人はその後、阿部慎之助、高橋由伸、上原浩治ら6選手に野球協約を大幅に超える契約金を払っていたとして問題になったり、〝栄養費〞を渡していたとして幹部が辞任する騒ぎになったが、堀内の時代から素地はあったのだろう。

なぜか急に巨人を褒めだす本

『星野仙一の巨人軍と面白く戦う本』

星野仙一・著 文藝春秋(’83年)

今年急逝した星野仙一(享年70)が現役引退して初めて出した一冊。とにかく巨人戦に闘志を燃やしていた星野のエピソードの連投。プロ入り初の巨人戦登板のときはベンチから「森(昌彦)にぶつけて来い!」と声が飛び、当然だと思った星野は初球を見事にぶつけて2週間も離脱させることに成功。プロ2年目のときは年上の土井正博を「ヘタクソの土井」呼ばわりし、ほかの選手ともマウンドで怒鳴り合ったという。そんな中、唯一、長嶋だけは「センちゃん、いらっしゃい!」と甲高い声で挑発していたというのだからさすが。星野も明大の先輩・高田繁には絶対に危険な球は投げなかったらしい。巨人戦登板前はコンディションに気を遣って3日間は女体を遠ざけ、「巨人戦に勝った後のヒーロー・インタビューは男のエクスタシーだ」と言ってのける星野だが、評論家デビューしたばかりの星野の意向なのか、終盤にかけてどんどん巨人の選手を褒めるという謎の展開に。中日の選手はほとんど出てこないのに、「星野仙一が選ぶ『巨人ベストナイン』」なんて企画まである。星野の如才なさも味わえる一冊だ。

極悪非道の桑田! 究極の暴露本

『さらば桑田真澄、さらばプロ野球』

中牧昭二・著 リム出版(’90年)

数あるプロ野球本の中で、もっとも代表的かつ衝撃的な暴露本。著者は弱小スポーツ用品メーカーの営業マン、中牧昭二(62)。後にプロレスに転向したことも話題となった。とにかく本書の中の桑田は冷酷無比の非人間として描かれている。中牧は営業マンとしてPL学園時代の桑田にアプローチをかけるが、ドラフト1ヵ月前に東京にやってきた桑田の最初の一言は「ソープランドへ連れて行ってほしい」。中牧は会社のために桑田を数えきれないほど(!)ソープへ連れていく。清原についても悪口ばかりで、ドラフトで泣いている顔を見れば「ザマアミロ」。名前では決して呼ばず、常に「あいつ」呼ばわりだったらしい。中牧の会社のグローブを使ってもいいと申し出たときは、裏金として毎月20万円を要求。ついに中牧の会社のグローブを使うも、すぐさま裏金の額を釣り上げてくる非道ぶり。また、桑田は一晩に3人の女性と寝たり、母ほど年の離れたホステスと寝ることもあったという。そして’88 年1月、六本木のディスコで照明装置が落下する惨事が発生する。悲鳴をあげる人々を尻目に、桑田は狙っていたアイドルの女性の手をとって一目散に外に逃げ出した。この一件で桑田の人間性に衝撃を受けた中牧は距離を取るようになったというが……気づくのが遅いよ! やがて桑田の裏金要求はエスカレートしていき、中牧の会社も耐えられなくなっていく。ついに中牧は退社し、告発を行うのであった。はたして、この本に書いてあることがすべて本当のことかはわからないが、桑田のダーティーなイメージが抜けきらない人も多いはず。桑田サイドと中牧サイド、両方の人間の業が溢れ出した一冊だ。

ガイジンが見た赤裸々な巨人の内幕

『さらばサムライ野球』

ウォーレン・クロマティ、ロバート・ホワイティング共著 講談社(’91年)

巨人軍の史上最強ガイジン助っ人の一人、ウォーレン・クロマティ(64)による衝撃ノンフィクション。『菊とバット』のロバート・ホワイティングが共著者なので、日米比較野球文化論としても読むことができる。それにしてもこのクロマティは本当に口が悪い。表現があけすけなのだ。たとえば、江川卓のことは「丸顔のクールな気取り屋」。西本聖は「ほかのナインのほとんどが彼を嫌っている」。王貞治監督についても容赦はない。「ジャイアンツの選手の中には、王の大ファンは一人もいない。江川も、西本も、中畑、原、篠塚も、みんな王のことをあまり好きではない」というのだ。ちなみにクロマティ自身は王のことを非常に慕っており、息子に”オー”の名前をつけているほど。しかし、巨人の選手はみんな長嶋元監督を慕っており、長嶋に育てられた中畑清が王監督のことを陰で「ワン公」と呼んでいたことも暴露。チーム内だけでなく、日本中で長嶋は王より人気が高いことについて、クロマティは王が「純粋な日本人」ではないからだと断言している。このようにガイジンの立場から巨人軍の内部と日本野球を観察すれば、日本人にとって不都合な真実も見えてくる。非常に示唆に富んだ一冊だ。

実は悲しいワインにハマった理由

『夢ワイン』

江川卓・著 講談社(’97年)

「なぜ江川がワイン?」と思わず微苦笑が漏れるが、本書を読むと印象は一変する。そもそも江川卓(63)は赤ワインが大の苦手だった。それがなぜ名誉ソムリエに就任し、ワイン遍歴と知識を語る本を出すほどワインにハマったのか? 実は江川のドラフト騒動と深い関係がある。江川のダーティーなイメージは日本全国津々浦々に広がり、試合後に食事に出ても周囲から心ない暴言を浴びせられることが多かった。知り合いや同僚の選手と一緒に食事に出かけても「ほとんどいい思い出がなかった」らしい。江川が安心して食事ができるのは、誰も絡んでこない静かなフランス料理の店だけ。本文にもある通り、江川にとってワインは「孤独を癒やす飲み物」だった。また、ワインを通して知り合った人々との交流もかけがえのないもの。エピローグは「最高の仲間、最高の笑顔」と題されているが、裏を返せば、ワインにハマる前は仲間と笑顔で食卓を囲むことができていなかったということ。実は悲しい本なのだ。

阪神の黒歴史「Vやねん!」

『Vやねん!タイガース 08激闘セ・リーグ優勝目前号』

日刊スポーツ出版社(’08年)

「勝った、勝った!ばく進Vロード」「胴上げ待ったなし!」……表紙に躍る景気の良い見出しの数々。だけどちょっと待って。’08年って阪神、優勝したっけ? この年の阪神は開幕から首位を爆走。7月にはなんと2位の中日と巨人に最大13.5ゲームもの差をつけていたのだからたまらない。もはや優勝間違いなし! と早くも9月頭に「優勝目前号」を刊行してしまった日刊スポーツの気持ちもわかる。しかし、実はこの年は北京五輪が開かれており、阪神は藤川球児、新井貴浩、矢野輝弘ら主力が戦線離脱(しかも、新井はケガ)。一方、小笠原道大、ラミレス、李承燁のクリンナップを丸ごと残していた巨人の猛追が始まり、9月に破竹の12連勝、そしてついに逆転優勝! これは最大ゲーム差逆転優勝のセ・リーグ記録である。CSでは中日に負け、岡田彰布監督はV逸の責任をとって退陣と、この年の阪神はさんざん。「Vやねん!」という言葉はネットで笑いものになった。本書は内容が充実しているところがさらに物悲しい。

(文中敬称略)

構成・文:大山くまお

アイドル選手の元祖は原辰徳!

『僕の汗、僕の愛。いまキミと語りたい』

原辰徳・著 学習研究社(’82年)

どこからどう見てもアイドル本として作られた原辰徳の本。折り込みポスター、直筆ポエムから始まり、カラーグラビア、写真満載の生い立ち、友人からのコメント、巨人1年目の記録、榊原郁恵との対談、愛車紹介、洗濯シーン(下写真1枚目)などなど、素の彼に肉迫した編集ぶりに感心してしまう

江本孟紀や小林繁など、原以前にも女性人気が高かった選手はいたが、彼らはネオンの雰囲気があった。一方、原は実にさわやか。グラビアはすべて角刈り!(下2枚目写真) Q&Aの「寝るときはいつも何を着て寝てるんですか?」「パジャマです」という死ぬほどどうでもいいやりとりもアイドルだから許される。前年に刊行されたミーハー雑誌『jamjam野球界』創刊号の表紙も原だった。原に会える場所として甲子園の「竹園旅館」が紹介されているが、後の1億円騒動を思うと味わい深い

 

Photo Gallary17

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