暴走する萬平に家族は?『まんぷく』から家庭円満の秘訣を教わった

作家・栗山圭介の『朝ドラ』に恋して 第4話

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『居酒屋ふじ』『国士舘物語』の著者として知られる作家・栗山圭介。人生の酸いも甘いも噛み分けてきた男が、長年こよなく愛するのが「朝ドラ」だ。毎朝必ず、BSプレミアム・総合テレビを2連続で視聴するほどの大ファンが、週ごとに内容を振り返る。今回は大人気放送中の『まんぷく』第8~9週から。

NHK連続テレビ小説「まんぷく」公式サイトより

まんぷくは家庭円満のためのバイブルだ

人間関係とは無数の問題を抱えることであり、これだけ社会でもまれてきたのだから、あんなに経験を積んだのだからと言ったところで、些細なことさえ解決できず、つまずいたり苦悩することも数知れず、ときにノイローゼのような精神状態に陥ることもある。

会社や仕事上のことならば仕方ない、そこで付き合うのは他人だ。利害関係さえ合致すれば、それ以上を望むのは理想である。しかし人は家に帰る。そこには家族がいる。そして家族なりの、些細で蚊のようにしつこくて煩わしい問題が常につきまとう。そんな日常に溜め込んだ不満はつい口に出る。

「チッ」。言葉ではなく、舌打ちされた短い音に、人がどれだけ自分勝手で未熟な生き物であるかということが露になる。この人を幸せにするために結婚すると誓ってからしばらく。いつしか、なんで結婚してしまったのかと自問する日々。被害妄想する中、『まんぷく』は外れかけた、たがを修復させるヒントをくれる、家庭円満のためのバイブルとも言える。

第8週、福子(安藤サクラ)が臨月を迎え、家事や仕事の負担が多くなった鈴(松坂慶子)の不満が募るが、萬平(長谷川博己)は、福子への気遣いと仕事の多忙さで鈴の小言が耳に入らなくなる。蚊帳の外に置かれた鈴は憤慨し家出を決行する。いつも愚痴を言っては人にかまって欲しくてたまらない鈴は、疎外感を感じるとあからさまに拗ねる困ったちゃんなのだ。

鈴を探すため福子を連れて大阪の街を歩く萬平の目に飛び込んだ光景は、物乞いをしたり、ひと目で栄養失調とわかる人たちだった。その光景がやがて栄養補助食品『ダネイホン』製造への伏線となっていく。

家に戻った福子が産気づくと、次女克子(松下奈緒)の家に身を寄せていた鈴が克子とともに駆けつけ、無事元気な男の子が誕生した。しかし福子は産後の肥立ちが悪く、栄養のあるものを食べさせるようにと産婆さんから忠告される。

これが萬平の栄養補助食品づくりにさらなる火を点けることに。試行錯誤の中で、ダネイホンの原料となる動物性たんぱく質確保のために捕獲したガマガエルを圧力釜で煮込むと、鍋蓋が吹き飛びカエルが爆発した。異臭付き爆発騒動の中、萬平は決意を語った。

「僕はやめない。世の中の栄養失調の人たちを助けるために、必ず新しい食品をつくる!」

こうしてたちばな塩業は新事業をスタートさせた。

仕事で家庭を省みない萬平に対して福子は…

第9週、神部(瀬戸康史)の大学時代の先輩で栄養学者の近江谷(小松利昌)の提案により、不可欠である栄養素が豊富な牛骨をダネイホンづくりに使用することになる。こうして物語はやがて誕生するインスタントラーメンづくりへの出汁を取り始めることに。

仕事に没頭する萬平は生まれたばかりの息子、源にかまうこともせず、子育ては福子に任せっきり。塩づくり班とダネイホンづくり班に分かれた社員たちにも歪みが生じはじめ、従業員たちのアイドル的存在だった福子の姪タカ(岸井ゆきの)と神部との間には、ほのかなロマンスの予感。

これにタカの父、忠彦(要潤)が憤慨するが、タカは理詰めで反論し忠彦の口を封じる。これまでクール路線担当だった忠彦が初めて見せる狼狽が実にコミカル&リアルで、年頃の娘を持つ父親たちの共感を得たことは言うまでもないだろう。

萬平の研究熱はエスカレートし、源が熱を出しても無関心なありさま。会社では過酷な労働を強いられる塩づくり班の不満がピークに達し、ダネイホンづくり班とは一触即発状態に。福子はついに我慢ならず源や従業員たちにも目を行き届かせてほしいと心の内を萬平にぶちまけるが、萬平は逆ギレで一蹴する。

「くだらん。そんなどうもいいことを僕にいちいち言うな」
「私たちは夫婦なんやから」
「もういい、仕事に集中させてくれ」

夫婦という近くて遠い人間関係。もっとも密接な距離にある他人同士。言葉にならない哀しみを口元と眉間で演ずる安藤サクラに胸の奥がツンとする。上手いなぁ、福ちゃん。

このやりとりに視聴者の多くが福子側についたことだろう。萬平の気持ちに一票を投じた少数派は、仕事で家庭を省みないエゴ男たちばかりだ(と思う)。萬平、一気にヒールの予感!

鈴が萬平に打ち込んだ渾身のストレート

ダネイホンづくりは進捗するが、不味くてとても口にすることができない。それを揶揄する塩づくり班、森本(毎熊克哉)とダネイホン班、岡(中尾明慶)が夜中に揉み合いとなり、双方入り乱れる騒ぎになるが、鈴が怒声を鳴らしバットを振り回して仲裁する。

「これは社長のせいですよ。福子も言ってやりなさい!」

鈴さん、やるときにはやる。騒ぎを起こした従業員にではなく、萬平に渾身のストレートを打ち込むところがただ者ではない。これぞ武士の娘全開という鈴の活躍により騒ぎはおさまり、萬平は自身を省みることに。実は騒ぎの前夜、福の夢枕に姉の咲(内田有紀)が立ち福子を諭すように言ったのだ。

「萬平さんが悪気のないことぐらい分かってるでしょ。お互いに足りないところを補い合うのが夫婦よ」

もはや咲は、ピンチのときに駆けつけてくれる『水戸黄門』の風車の弥七のよう。咲の前では、いきなり幼い妹に戻ってしまう福子との姉妹愛も見どころで、福子がそれを鈴に告げると、「どうして私の夢には出てくきてくれないのよ」と鈴がやきもちを妬いてしまう。

咲の可憐さは雲行きが怪しくなった心を希望へと誘い、壊れかけた家族の絆を修復へと導く。困ったときは夢で咲が助けてくれると信じる福子や鈴の思いもまた、これまでにはない朝ドラ家族愛の新しいカタチで、『まんぷく』の名物シーンになりつつある。

考えを改めた萬平は、従業員たちをもういちど結束させるために、不平等な労働条件を敷いた塩づくり班たちひとりひとりの名前を呼びかけながら謝罪し、今後は全員でダネイホンづくりをすることを宣言した。

萬平ふたたび牢獄へ どうなる第10週?

しかし商品化されたダネイホンはまったく売れず、その旨を投資家である大阪商工会長三田村(橋爪功)に報告することに。

「これを欲しがる客が誰なのか。どこにいるのかを考えないといかん」

三田村は冷静に言葉を選び、その足で立ち寄った克子の家で、萬平は忠彦にも同じようなことを言われる。

「僕はいい絵を描くことだけを考えていきたい。そやけど売るのは苦手や。萬平君もいい物をつくるが商売人やない」

そこで咲の夫、真一(大谷亮平)に白羽の矢が立ち、真一はたちばな塩業で働くことになりバックアップ体制は万全に。福子は、病床で忠彦の描いた絵を見つめる咲を思いだし、ダネイホンを病院に売ったらどうかと提案する。

「入院している人は誰よりも栄養が必要やし、病院食ならそんなに味にはこだわらないでしょう」

萬平の頭の中で、三田村と忠彦の言葉がループする。そしてダネイホンは厚生省の認可を得て、病院を皮切りに順調に注文が増え、塩づくりとともにたちばな塩業の事業は軌道にのる。

困難を乗り越え、何もかもが順調に行きはじめたと思ったのもつかの間、あらたな問題が勃発した。塩づくり班が、晩飯のおかずの魚を捕るために、床下にあった手榴弾を見つけ海に投げ込んだことが通報され、進駐軍が捜査に来たのだ。

「どこに武器を隠しているんだ?」

第10週は波乱の幕開けとなり、さらなる困難が福子と萬平たちに降りかかる。またしても牢獄に閉じ込められる萬平はどのようにして窮地を脱するのか。萬平の辣腕プロデューサー福子は、丸まってる背中をどうやって伸ばすのか。咲姉ちゃんは、誰の夢枕に立ってくれるのか。息が白くなった朝にヒートアップする15分。さまざまな人間関係でもつれた糸をほぐし、ぬくぬくのセーターを編みながら♬トゥラッタッタと鼻唄を歌う福子に期待したい。

『朝ドラに恋して』 第3話(第6~7週)

『朝ドラ』に恋して 第2話(第4~5週)

『朝ドラ』に恋して 第1話(第1~3週)

  • 栗山圭介

    1962年、岐阜県関市生まれ。国士舘大学体育学部卒。広告制作、イベントプロデュース、フリーマガジン発行などをしながら、2015年に、第1作目となる『居酒屋ふじ』を書き上げた。同作は2017年7月テレビドラマ化。2作目の『国士舘物語』、3作目の『フリーランスぶるーす』も好評発売中

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