代表争いを一歩リード 早田ひなの圧倒的ポテンシャルがついに覚醒 | FRIDAYデジタル

代表争いを一歩リード 早田ひなの圧倒的ポテンシャルがついに覚醒

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3月、優勝した「ライオンカップ」での早田。後陣からでも強打を放つことができるのが魅力の一つだ

今年1月30日に行われた、全日本卓球女子シングル決勝。相まみえたのは、日本のエースと東京五輪のサポートメンバーだった。伊藤美誠(21)と早田ひな(21)。ライバルであり、プライベートでは無二の親友でもある。ダブルスでもコンビを組む2人の顔合わせは、近年のシングルス上位争いで必ずぶつかる、全日本の名物カードだ。

全日本のシングルスは伊藤が制したが、早田は張本智和と組んだ混合ダブルス、伊藤とのダブルスで優勝とまさに大車輪の活躍を見せた。

団体・銀メダルという東京五輪での快挙から約8ヵ月。女子卓球界では早くも、2024年のパリ五輪をかけた熾烈な代表争いが繰り広げられている。

そのなかでひときわ強い存在感を放っているのは、早田ひなだ。

もともとポテンシャルは高く評価されてきたが、伊藤や平野美宇の「みゆみま」ほど注目を集めてきたわけではない。だが、その才能がここに来て一気に開花した感がある。

昨年9月のアジア選手権では、シングルス、団体、混合ダブルスの3冠という偉業を達成し、卓球界に衝撃が走った。昨年11月の世界選手権ではダブルス、混合ダブルスで銀メダルを獲得。そして今年3月、パリ五輪に向けた初の選考会となった「卓球・ライオンカップ・トップ32」では、五輪組が揃って準々決勝で姿を消すなか、見事優勝を飾っている。

早田の魅力の一つは、ダブルスでの圧倒的な適性の高さだ。

サウスポーというアドバンテージ、長いリーチにパワーを兼ね備え、後陣からでも強打を繰り返しポイントを奪う身体能力。前陣速攻型が主流の卓球界において、台から離れても強烈なドライブを武器に一気に攻撃に転じられる早田のスタイルは希少だ。加えて中国選手にもラリーで撃ち負けしないフィジカル面の強さは、代表の戦略的な幅を広げる存在といえるだろう。

現在の世界ランキング2位という数字が示すように、早田は伊藤とのダブルスで多くのメダルを獲得してきた。しかし、2人のスタイルは対象的だ。冷静に淡々と試合を運ぶ伊藤に対して、早田は1つ1つのポイントで感情を大きく表す。技術に裏付けされた独創的なスタイルを磨いてきた伊藤に、男子さながらのパワー卓球を基盤としたラリー戦に強い早田。不思議なもので、そんな2人がコンビを組むと、阿吽の呼吸で次々とポイントを重ねていく。

そして、近年シングルスでも急速な成長を見せた早田の覚醒もあり、その能力が一層ダブルスにうまく転換されているようにすら映るのだ。

筆者は、早田がここまでのブレイクをする前の’19年、幼少期から拠点としている福岡県の「石田卓球クラブ」で本人にインタビューをしている。当時の取材ノートを見返すと、武器である両ハンドドライブを活かすためにトレーニングを見直したこと、戦術面への意識が高まったことなどが記されていた。なかでも印象に残っているのは、その意識改革についてだ。早田は自身の変化について、こんなことを話していた。

「昔から私は悩みすぎるところがあって……。本当にこれでいいのか、と悩みながらプレーしすぎる癖があったんです。攻撃的なスタイルは当然リスクもあるので、大事な局面でも振り抜くのではなく、入れにいってしまうことが多々あり、それを後悔することがありました。中国選手に勝つためには、攻め続けないといけない。やっぱり私の卓球は攻める卓球なので。そういう悩みが吹っ切れて、『早田ひなはこのスタイルでいくんだ!』という信念が生まれた年でもありました」

事実、ここ2年間の早田はその言葉の通り、攻め抜く卓球で中国人選手からも金星を獲得し、地位を高めてきた。加えていうなら、早田の試合はダイナミックな展開力を駆使した大逆転劇も多く、単純に見ていて面白いのだ。

個人的に強く印象に残っているのが、今年の全日本の準決勝・加藤美優戦だ。ゲームカウント1対3の状況から3ゲームを連取する大逆転劇。第6ゲームでは2度のマッチポイントを耐えしのぐという劇的な試合展開となった。

以前の早田は、その恵まれた身体能力ゆえにラリー戦へのこだわりが強く、ミスにより自滅するケースも目立った。だが、この試合では随所に緩急も織り交ぜながら、勝負所では冷静に1ポイントを奪いに行く対応力を見せたことで、一層強打が活きた。パリを目指す上で、そして中国を倒すために確かな進化を感じさせた一戦だった。

現在の女子卓球界は、“史上最強”との呼び声があるほど選手層が厚い。長らく女子卓球界を牽引してきた石川佳純に加え、伊藤に平野、早田の同級生トリオ。加藤美優、佐藤瞳ら実力者も力をつけており、伊藤らの下の世代には長崎美柚(19)、木原美悠(17)の「Wみゆう」コンビ。更にその下の世代には張本智和の妹・張本美和(14)らも控える。

以前、石川はこう卓球界の若手の台頭を表現していた。

「私達の世代は、五輪に出てメダルを獲ることが目標でしたが、その下の世代は『中国を倒す』ことを目標に小さいころからやってきた子達なんです」

打倒・中国を当たり前に意識してきた、伊藤たちの世代がパリでは中心とはなるが、木原美悠らの成長も著しく、もはや誰が代表の座を掴んでも驚きはない。パリへと続く道は、史上最も過酷なマッチレースとなるだろう。

早田は、大きな挫折の後に必ず成果を残してきた。世界選手権の選考に漏れたあとのTリーグファイナルではMVPに輝き、東京五輪メンバー発表後の全日本でもシングルス優勝。そして、五輪のサポートメンバーという経験を経て、この活躍ぶりである。

リオ五輪後、同じくサポートメンバーとして悔しい思いをした平野が覚醒し、中国選手をなぎ倒してきたことは広く知られる事実だ。“遅れてきた大器”がパリ五輪の舞台で日本卓球界の主役となっても、サプライズではない。

  • 取材・文栗田シメイ写真共同通信

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