「松坂世代おじさん」は最新教育で野球の進化に追いつけるか | FRIDAYデジタル

「松坂世代おじさん」は最新教育で野球の進化に追いつけるか

松坂世代おじさんの野球《再》入門【バッティング編】

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ゴロを打つのはピッチャーの思うツボ!? アッパースイングでもOK?…

横浜高校時代に甲子園春夏連覇、夏の決勝戦でノーヒットノーランなど数々の伝説を作り、全国の野球ファンを熱狂させた松坂大輔。筆者含め、多くの同年代の元野球小僧は“松坂世代”と呼ばれることに誇りを持っている(写真〈1998年「かながわ・ゆめ国体」〉:アフロ)

プロ野球やメジャーリーグが開幕し、野球ファンにとっては楽しいシーズンが始まった。同時に、観戦だけでなく、大人は草野球などに興じたり、この春から野球を始める少年たちも多くいることだろう。

さて、プロ野球でも世代交代が進む中“松坂世代”と呼ばれ、野球界を席巻した昭和55年度(1980年度)生まれの選手たちもほとんどが現役を引退し、今では選手を指導する立場になっている。それは、プロ野球界だけでなく、40歳を過ぎたかつての野球小僧たちも同じく、自分の子どもやチームのちびっ子たちに教える立場になったということだ。

42歳を迎える歳で改めてバッティングを教えてもらう記者。いくつになってもバッティング練習は楽しい(撮影:杉山和行、取材協力:アメリカンスタジアム)

筆者もそんな松坂世代の一人で、年齢的には子どもたちに指導してもおかしくない世代。そこで思ったのが「いざ、ちびっ子たちに野球を教えようとしても、果たして自分が知っている技術で今の子どもたちを指導できるのだろうか?」という疑問だ。高校野球を見ていても我々のころと比べると球速や変化球の質も上がり、野球理論もさまざまな発展を遂げているのが一目瞭然。一方、私の技術論は昭和~平成で止まったまま。そんな自分の古臭い野球を教えられてしまっては、子どもたちもたまったもんじゃないし、なにより野球界の将来を担う子どもたちにとってはマイナスでしかない。

そこで、うっかり子どもたちに昭和・平成イズム漂う古い考えを押し付けてしまわないよう自戒の意味も込めて、取材と称して子ども向けの野球スクールへ入門。最新のスクールではどんな指導をしているのかを学ぶために、特別にレッスンを体験させてもらいました。

まず、最初に教えてもらうことにしたのはバッティング。やっぱり、野球は打たないと楽しくないですからね。今回“再入門”をお願いしたのは「EIGHT BASEBALL ACADEMY(エイトベースボールアカデミー)」。元ヤクルトスワローズの松井淳コーチや甲子園準優勝経験のあるコーチなど、多彩なコーチ陣が指導するスクールだ。今回、教えてくれたのは野球チーム「qoonis(クーニンズ)」でもプレーする緑川大陸コーチ。よろしくお願いします。

緑川大陸コーチ。本職のキャッチャー指導のほか、バッティング、ピッチングと幅広く指導しています
記者。1980年生まれ。元高校球児(公立高校で途中退部。唯一のベンチ入りはスコアラーとして)。草野球歴は20年以上。すっかり染み着いたダウンスイングは生まれ変わるのか?

ゴロを打たなくてもいい! 

まず、我々の世代のバッティングで叩きこまれていたのは「ゴロを打て!」だ。これは、フライだと捕られてアウトだが、ゴロの場合は捕球して、送球して、その送球を一塁手が捕球するというプレーが発生するため、どこかでエラーが期待できる、というなんとも消極的な考えに基づいている(そう教えられた)。その考えは今でも同じなのだろうか?

「スクールでは無理にゴロを打つような指導はしていません。もちろん、試合の流れや戦術的にゴロを打つ必要がある場面もありますが、子どもたちには、打球を遠くに飛ばす楽しさをまずは覚えてもらいたいですね。それにピッチャーはゴロを打たせることを意識して投げますから、そこで打者もゴロを打とうとするとピッチャーの思うツボになります」(緑川さん) 

確かにピッチャーはゴロを打たせようとするし、守備側もその練習をすごくしているのに、バッターがゴロを打とうとするのはおかしい。野球をはじめて30年以上経っているが、まったく疑問を持ったことがなかった……。では、どんな意識で打てばいいのだろうか?

「ゴロを打とうとすると、いわゆる“大根切り”のように、上から叩きつけるスイングになります。そうするとバットとボールが“点”でしか当たらず、ミートがかえって難しい。スクールで教えているのはバットの軌道上にボールを乗せるイメージです。そうするとバットとボールが接する時間が長くなって、より遠くへ飛ばすことができるのです」

そこで教わったのが、グリップエンドをボールにぶつけるようなイメージでスイングすること。昭和野球の薫陶を一身に受けた私としては「速くヘッドを返そう」という意識が強い。グリップエンドをボールにぶつけるようなイメージだとヘッドが返らないのでは?

「ヘッドを無理に返そうとするとひっかけてボテボテのゴロになってしまうことが多いんです。心当たりはありませんか?」 

あります。凡退の7割がひっかけたゴロです……。 

「この意識でスイングすれば、ヘッドも自然に返りますよ」

最初は違和感があったが、何度かスイングしているうちに、スムーズにヘッドが返るようになった気がする。

グリップエンドをボールにぶつけるイメージでスイング。頭も体も凝り固まった中年も、繰り返し練習すれば、どうにか形になる

フライを打つ意識で練習しよう! 

さて、すっかり体に染み着いた「ゴロ打ちマインド」を改善するため、次に取り組んだのが低めのボールをアッパースイングでフライを打つ意識でスイングする練習。

「低めのボールを上から叩こうとすると、かなり窮屈なスイングになってしまいますよね」 

たしかに、不細工なヒットエンドランの失敗みたいなスイングになっています。

「そこで、低めはフライになってもいいので、下から救い上げる意識で打ってみてください。フォロースルーも(右打ちの場合)右手を離して、左手一本になってもOKです」

「アッパースイングは絶対ダメ!」「とにかく叩け!」「フォロースルーも両手でしっかり!」と聞かされて育った身としては、なかなか上手くできない……。それでも続けているうちに、打球がいい感じで上がるようになってきた。あれ? これはいわゆる「打球に角度がついている」状態では? 実はこれまで柵越えホームランを打ったのは、極狭球場での出会い頭の偶然の一発だけで、あとはジャストミートしても低い弾道で、打球が上がらないと悩んでいたのだが、改善の兆しが……!

低めのボールをアッパースイングで打つ練習。アッパースイングをすると怒られていた世代からすると隔世の感が。打球も気持ちよく飛んでいきます

脇は開いてもOK 

いい感じで打球が上がるようになってきた私が、次に教えてもらったのは「スイングのとき(右打者の)左脇が開いてもよい」ということ。これも、私たちが子どもの頃は「脇を締める!」とキツく教えらていたのだが……。

「巨人の坂本勇人選手やオリックスの杉本裕太郎選手は特に顕著ですが、脇を開くことで内角をうまくさばけていますよね。この技術を子どもたちに教えるのは難しいので“開いてもいい”という教え方をしています。これを覚えると、ファールにしかならなかったコースもフェアゾーンに強い打球が飛ばせるようになります」

緑川コーチによる実演指導。内角球はこれくらい脇が開いてもOKだそう。記者はこの日のレッスンだけではモノにならず。さすがに難しい!

脇を締めて、上から叩いて、ヘッドを速く返すというスイングはすっかり過去のもの。今回1時間ほど教えてもらっただけで、真逆の意識でスイングできるようになった。最後に教えてもらったことを意識して打ってみたのだが、実感した効果は下記の3点。

  • 【1】打球に角度がつくようになった

  • 【2】ヘッドが自然に返るようになった

  • 【3】いつもなら差し込まれていた内角球がスムーズに打てるようになった

とくに【3】は、これまで窮屈になっていた内角球の打ち方が、グリップエンドを抜くようなイメージでスイングしてみると、なんとも自然にヘッドが走って、強い打球がフェアゾーンに飛ぶようになった。あと30年早く知っていれば、高校でもレギュラーを目指せていたかもしれないのに!

「私も子どもの頃に教えてもらいたかったですよ(笑)。今の子どもたちがうらやましいです。スクールには、オリックス・バファローズの杉本選手や東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手の自主トレにも参加したコーチもいますので、教える私たちも古くならないよう、日々勉強中です」

日々、進化している野球の技術。もはや“昔取った杵柄”では子どもたちに教えることができなくなっているようだ。2022年度で42歳になる松坂世代のおじさんたちも、まだまだ学ぶことが多いのも野球の大きな魅力のひとつ。同世代の野球好きおじさんたちも、今一度、最新理論を学んでみてはいかが?

若いころに比べて筋力はだいぶ落ちたが、スイングの改造で明らかに打球の質が上がったと実感。子どもの頃に覚えたかった!

■「EIGHT BASEBALL ACADEMY(エイト ベースボール アカデミー)」:小学1年生~中学3年生を対象にした野球スクール。世田谷校と横須賀校の2拠点で指導。

instaglam:@eight.baseball、@eightba.yokosuka

  • 取材・文高橋ダイスケ撮影杉山和行取材協力アメリカンスタジアム

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