元タカラジェンヌが退団後コーヒーチェーンでバイトを始めたワケ | FRIDAYデジタル

元タカラジェンヌが退団後コーヒーチェーンでバイトを始めたワケ

「東の東大、西の宝塚」 『アニー』の子役経験もある元男役、星月梨旺さんの決断

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昨年9月、退団公演の直後。中央の星月さんの両側にいるのは実弟。右はマジシャンをやっているTERUさん、左がお笑い芸人の電動スミス しらすさん(星月さんのtwitterより)

昨年6月~9月に行われた、宙組の本公演『シャーロック・ホームズ ―THE GAME Is Afoot!―』『『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』で退団したばかりの、星月梨旺さん。2008年の月組公演『ME AND MY GIRL』でタカラヅカの初舞台を踏んだ94期生の男役だ。退団後はしばらくゆっくり過ごすという人が多い中で、彼女は違っていた。退団後すぐに、なんと、大手コーヒーチェーンでアルバイトを始め、自分のやりたいことのために勉強をしているというのだ。

幼いころから〝現実的〟に夢を追いかけた

「新型コロナウイルスによって、この2年間でこれだけ世の中が変わるとは思いませんでした。思い返せば、子役から『アニー』に出演し、さらに宝塚歌劇団にも入れて、めざしてきた場所に到達でき、幸せを感じることができました。ただ、そこにいても、思い通りにいったことばかりではなかったんです。小さい頃から普通の感覚でいること、いつもニュートラルな気持ちでいることを心がけてきたおかげで乗り越えられた気がします」

千葉県柏市出身の星月さんは、3歳からクラシックバレエをはじめ、5歳からは地元のミュージカルスクールに通った。そして小学3年生9歳のときから、ミュージカル『アニー』のオーディションに挑戦。毎年1万人中20人程度の合格という狭き門だが、中学3年のときに合格を勝ち取り、7年越しに夢が叶ったのだ。

「周りの子どもたちはいつも褒められていて羨ましかったのですが、私は母からダメなときはダメ、とはっきり言われて鼻を折られ続けました。でも今考えるとそのことがよかったのかな、と」

中学3年生で『アニー』のオーディションに合格。7年ごしの夢がかなった(提供:星月梨旺さん)

子役時代は劇団四季に入りたかったが身長がどんどん高くなり、四季は難しいと判断。アニーで振付をしていたタップの先生が、宝塚歌劇団でも教えていると聞き、宝塚音楽学校への受験を決めた。高校2年生のとき、3回目の受験で念願がかなった。

星月さんには弟がふたりいて、これから学費がかかる……と気にかけながらも、悔いの残らぬようにタカラヅカ受験にチャレンジした。最後の一年間はこれ以上にがんばれないというほどのハードスケジュールで必死にがんばったそうだ。

「レッスン費用の足しになればと、朝5時半から7時半まで駅前のマクドナルドでバイトして、必死にがんばりました。バイトのあとはすぐ学校へ行って、学校が終われば東京まで片道1時間半かけてレッスンへ行って……という生活。歌やダンスのお稽古の時間も必要なので、宿題は電車の中でやっていました。ここまでがんばってダメだったら悔いはない!と思っていましたが、三度目の正直で合格できて良かったです」

在団中は毎日舞台に立てることがとにかく有難いことなんだということを実感していた。

「宝塚は劇場があって、衣裳もセットも素晴らしい。そして、毎日2,000人以上のお客様が来てくださって……という環境は舞台人としてはとても恵まれていますよね。これが普通ではないということを意識していました。他の劇団などで舞台に出ている友人は、アルバイトしながらでないと生活できないと言っていました。100年以上続く劇団で、舞台だけに集中できるのは幸せだと感謝していました」

和田裕美氏(左)が提唱する「陽転思考」を勉強中

タカラヅカに伝わる、「男役10年」という言葉がある。男役として完成されるまでには10年はかかるという意味なのだそうだ。10年目までは続けようと決めていた星月さんであったが、その年を迎えたときの自分の気持ちを大事にしたいと思って過ごした。

「2017年に、これまでの自分のキャパシティでは演じられないような役が来たんです。『神々の土地』という作品で、ガリツキー将軍という60代の軍部の重鎮を演じることに。大きな壁にぶちあたりましたね。その場面にいる誰よりも人生経験が豊富で、包容力のある男性を演じなければならない。この役をいただいたことで、まだまだやれることがあると感じました」

そして、12年目にあたる2019年、やってみたいと思っていた役がひと通り回ってきた。達成感が得られた星月さんは次に進もうと決意。2020年の8月に卒業を決めていたが、新型コロナウイルスの流行により、卒業を一年ほど延ばすことになった。

「退団というのは生半可な気持ちで決めるものではないので、直前でストップがかかり正直戸惑いもありました。しかしその後の一年はそれまで以上に、舞台に立てる幸せを感じることができました」

ネガティブからポジティブを見つけだす

宝塚では同じメンバーで長く生活を共にする為、どうしても価値観の違いや意見の食い違いが出てくる。何かしらのわだかまりがあるとそれが舞台上に表れてしまうのだ。どんなときも円滑なコミュニケーションがとれれば、自分も周りもより気持ちよくパフォーマンスが出来るのではないか……。星月さんはそう思うようになった。なにも舞台上だけのことではなく、人生のどのような場面でも、感情をコントロールできる方法をもっていれば、よりよい毎日が送れることだろう。

「どうしたら上手く感情をコントロールできるのかと。研8(8年目)になって新人公演がなくなり、それまで稽古にあてていた時間をより自分の為に使うことができるようになり、少し時間ができたので、心理学を学び始めました。今は和田裕美さんの陽転思考を学んでいます」

カリスマ営業ウーマンとして知られ、67冊もの著書がある和田さんが提唱する、陽転思考。これは、単なるポジティブシンキングとは違い、ネガティブありきの考え方だそうだ。まずは一日一回、マイナスの事柄から、プラスを見つけるという考え方。これを続けていくことで自分の考え方の傾向をプラスの方に変えやすくするという思考法だ。自分のためだけではなく、周りの人の役に立つよう、陽転カウンセラーの資格取得に向けて励んでいる。

「たとえば、ケガをしてお休みしなければいけないということになったとします。ケガはネガティブなことだけれど、そこからポジティブを見つけ出すんです。最近忙しくて時間がなかったけれど、ケガをしたことで立ち止まってゆっくり考える時間がもててよかったとか。そういうよかった探しを癖づけることで人生が好転していくという考え方なんです。私もこの思考を用いることで自分の良いところを認めてあげることが出来るようになりました。今の時代にもマッチしていると感じるので、このノウハウを広めたいと思っています」

撮影:長濱耕樹

アルバイトもして、社会の常識を学んでいる最中

星月さんはタカラヅカ退団1ヶ月後から社会勉強もかねて、大手コーヒーチェーンでアルバイトを始めた。ほかのOGは退団直後に充電期間を置くのとは対照的だ。

「宝塚は特殊な世界なので、現役中はある意味一般常識から遠ざかってしまいます。その為、退団後、宝塚では普通とされていたルールが、一般社会では必ずしも通じないことがあることに気が付いたんです」

現役中に差し入れにいただいた大好きなコーヒーチェーン店のコーヒー。そのコーヒーチェーンはどの店舗に行っても心地よく、働く人たちのモチベーションが高く、その環境に憧れた。働き始めてみると、たくさんの学びがあったという。

マスクをするお客さんとの間には、感染防止のためのパーテーションがあり、注文を取るときに聞こえづらいこともある。指差しで確認しないと、注文を間違えることがあるのだ。自分が「伝えた」つもりでも、「伝わっていない」ケースもあり、コミュニケーションを成立させる難しさを痛感する日々だ。やりがいを感じられるアルバイトに出会い、充実した毎日を送っている。

「上の弟はTERUといって、マジシャンなんです。下の弟は、お笑い芸人の電動スミス しらすとして活動しています。実はマジシャンの弟とは、4月に中目黒と銀座でトークライブをするんです。これまでそれぞれのファンの方同士が交流することがなかったのですが、いつか何か一緒にできたらと思っていたので楽しみです!まだまだこれから、新しいことを始められるんだなってワクワクしています」

ほかにも、都内のダンススタジオでキッズクラスの講師としても活動を開始。後進育成など、貪欲に新しいことにどんどん挑戦していく姿は、とてもキラキラしている。現役時代とはまた違った形で、多くの人に勇気と希望を与えていくのであろう。

星月梨旺×TERU トークライブ
2022年4月23日(土) お問合せ先(happy_time_together63@yahoo.co.jp)

ダンススタジオ アッシュ(Studio H)

退団後の昨年11月、都内で行われたトークショーにて(写真:星月さんのTwitterより)
撮影:長濱耕樹
撮影:長濱耕樹
撮影:長濱耕樹
撮影:長濱耕樹
  • 取材・文上紙夏歡

    (うえがみ なつか)ライター/ビューティープランナー。ルミネtheよしもとにて、吉本新喜劇の女優として出演していたという、異色の経歴をもつママライター。多くの雑誌やWEBで美容から旅行、インタビュー記事などを執筆している。また、化粧品などの商品開発を手掛けるほか、生放送のTV通販番組にも出演中。趣味は台湾ドラマ鑑賞で、特技は中国語(HSK5級)。台湾との二拠点生活を夢見ている。

  • 撮影長濵耕樹

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