TABLO単独インタビュー「言葉にすること」の大切さ | FRIDAYデジタル

TABLO単独インタビュー「言葉にすること」の大切さ

韓国の音楽シーンを牽引するスタンフォード卒の秀才

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EPIK HIGHのフロントマンを務めるTABLO

先進的なトラックと社会に切り込む歌詞で韓国の音楽シーンをリードしてきた3人組ヒップホップグループ『EPIK HIGH(エピック・ハイ)』。2014年リリースの『BORN HATER ft. Beenzino, Verbal Jint, B.I, MINO, BOBBY』はYouTubeのPV再生2100万回を超えるモンスターヒットになり、今年4月の米コーチェラ・フェスティバルにも出演。BTSにも影響を与えるなど、常にトップを走り続けるエピック・ハイのリーダーがTABLO(タブロ)である。

スタンフォード大卒の秀才で、プロデュース業も兼ねる彼が深夜ラジオで読み上げてきたメッセージ集が書籍『BLONOTE』としてまとめられた。本国でロングセラーの著者に、幸せや否定的な感情を言葉で表現することの意味を聞いた。

忘れられない「つぶやき」

――『BLONOTE』は、深夜ラジオ番組の最後のつぶやきを集めたものです。そもそも番組では、どういう意図でつぶやいていましたか?

このラジオ番組の放送時間は夜10時~12時で、多くのリスナーが番組で一日を締めくくるという時間帯でした。ですからその一言が、リスナーが眠る前にいろいろなことーー素敵なことや、自分の人生に関する考えを巡らせるきっかけになればいいなと思ってつぶやいていました。

当初は本にすることなんて全然考えていなかったんですが、何年か続けるうちに、いろんな方がいろんなところでその言葉に触れてくれたり手書きに文字にしてくれたりして。そういう中で「まとまった本として手元に置きたい」という要望も頂き、こういう形になりました。

――番組放送時に、TABLOさんのもとに届いた反響、リスナーの声など教えてください。例えば「上がる時は階段、降りる時は断崖絶壁。それが恋」なんて言葉を眠る前に聞いたら、逆に眠れなくなってしまう人もいそうです。

ラジオって、SNSなどを通じてリスナーの反応がすぐに得られます。おっしゃっていただいた「階段と断崖絶壁」などもそうですが、確かに「こんな時間にこんなこと言われたら眠れないじゃないか」といった反応もありましたね(笑)。

自分でもよく覚えているのは「中古楽器を買った。誰かの夢がこんなに安いなんて」という言葉です。それが放送された時、急にお金が必要になって自分の楽器を売ったリスナーがいて「そんな日に、そんな言葉が」というのはありました。

――『BLONOTE』の中でTABLOさん自身が一番気に入っている言葉は?

「空が教えてくれるのは、泣きたい気持ちはあなただけじゃない」という言葉は、僕がよく考えていることです。「今日は本当に泣きたい気持ちだ」と思っているときに、雨が降ってくることがあるんですよね。

韓国では雨が降ることを「空が泣いている」と表現することがあり、雨が降ると「泣きたいのは自分だけじゃないんだな」と感じる人も多いんですよね。雨が降ると鬱になる、寂しく感じるという人もいると思いますが、僕は慰められる気がします。

――本の中には著名な方や一般の学生など、様々な人の手書き文字もありますよね。

映画『オールドボーイ』のパク・チャヌク監督や、女優のコン・ヒョジンさん、BIGBANGのG-DRAGONさんなどにお願いして書いていただいたものや、一般の方がすでにどこかに書いていたものなどを、許可を得て掲載しています。僕自身について書いた僕の言葉ですが、この手書き文字によって「私のことなんじゃないか」という共感につながった部分もあったと思います。

気持ちをもっと表現するべき

――韓国で『BLONOTE』を買った方が本に書き込むという楽しみ方が流行ったのは、手書きの文字があったからかなと想像します。そういう展開を当初から期待していましたか?

半々です。そうなってほしいなとは思っていました。というのも、僕は「誰もが自分の気持ちを表現する世界にならなければいけない」と思っているし、そういう世界を夢見ています。いいことであれ悪いことであれ、話してみなければ始まらない。

発展もないし、何も生まれません。感じていることを口にできないなんて地獄です。僕自身、文字を書かないと苦しいし、何かを作らずにはいられない。病気になってしまうし、生きる理由を失うかもしれません。

テクノロジーで生活のさまざまな部分がまかなえる現代では、人々はもっと濃密に気持ちのやり取りをすべきだと思うのですが、逆にテクノロジーが発展するほど人は自分の中に閉じこもるようになっていると感じます。

今回の本だけでなく音楽でも、僕はずっと気持ちを口にし、表現してほしいと言い続けているんです。というのも、気持ちを表現しない人を助けることはできないからです。悲しい時は慰めてもらうことが必要だし、悲しいといえば誰かが助けてくれることだってあるかもしれません。

悲しみにまみれたまま人生を終える、そんな悪い結末にならないためには、表現するしかない。自分の気持ちを表現することをためらったり、恥ずかしがったり、悲しみに耐えたりすることが美徳だなんて言ってほしくありません。だから僕はすべての表現において、それを言い続けているんです。

――詩は文字の表現の中で最もそぎ落とされたもので、長い小説などと表現できるものが違うという気がするんです。今おっしゃったような部分では、もしかしたら一言で心の深い場所に切り込めるのかなと。そのあたりについて思うところはありますか?

完全に同意します。僕も長い文章よりも好きですね。

ネガティブな表現を恐れない

――TABLOさんご自身もネガティブな感情の表現を恐れていませんよね。そういったものを作品にするときに意識することはありますか?

僕も結局は誰かに話したいんですよね。でも、必ずしもいつも誰かと話せる環境にないから、作品によって表現しているところがあるんです。書き出すことによって癒されている部分もあります。作品においては「周りの人がして欲しくないと思うことはしないようにはしよう」とは思っていますが、あえてポジティブな方向に持っていくとか、美しいものに包むようなことはしないですね。

世の中には、いいこともいい人もいいものをたくさん存在しますが、そういう部分ばかりではないじゃないですか。ダークなものも、見たくない現実も存在しますよね。それを「世の中って素晴らしいよね」という形で作り込む事は、逆にしないというところですかね。

――日本の社会では、ネガティブな感情を表現することが好まれないところがあります。一方で、韓国はそういう表現も少なくありません。タブロさんが考える「ネガティブなものに触れること」の大切さとは?

その答えは一言で終わります。それがリアルだからです。実際にネガティブなものって存在するじゃないですか。本当にあるものを本当に感じたままに表現するというだけですよね。現実を隠してもいいことはひとつもないと僕は思うんです。否定的な感情は隠せば隠すほど闇になるだけです。

――ご自身の表現が目指すものは?

最終的には「みんなが幸せになってほしい」ということにつきます。ただ「答え」を見つけるためにはちゃんとした「問い」がないといけない。多くの人は「問い=求めているものが何なのか」がわからないまま、「答え」を探しているんじゃないかなと思うんです。自分の中にどういう感情があり、自分はどういうところにどんな闇を抱えていて、それをどうやって消化していくのかわからないままでは、空回りするだけ。

例えば病院に行って、検査もせずにただ「治療してください」と言っても、何も治りませんよね。どこが悪いのか、何の病気で、何が必要なのか。そのあたりを明確にして初めて、治療ができる。でも私たちは「とにかく幸せになりなさい」「とにかく我慢しなさい」「とにかく闇を隠しなさい」といった無理なことを強いられながら、答えを探そうとしているんだと思います。

――「正しい問い」を見つけるにはどうすればいいと思いますか?

何が自分の幸せか、何を求めているのかわからない人達の99.9%は、他人を気にしすぎているんだと思います。人間は常に他人に口を出すし、他人の反応を見てしまいますよね。でも「あなたはこうすべきだ」「これが正解だ」という誰かの言葉に惑わされ、従ってしまえば不幸になるし、 自分の答えは見つけられません。

面白いのは、人間って「幸せはこの世にひとつしかない」と思ってるふしがあるんですよ。「私の幸せ」と「他人の幸せ」は全くの別物なのに、まるで世の中に「幸せ」はひとつしかなくて、誰かが幸せだと自分の幸せが減ってしまうような感覚、誰かが幸せを見ると自分が不幸であるような気持ちになってしまう。その人にはその人の幸せがあり、自分には自分の幸せがあるのに。

まずは他人の様子をうかがわず、自分の人生のみに忠実に生きることです。そうすればもっと自由になれるし、心を痛めたり迷ったりすることも減って、表現できることや、やりたいことの選択肢が広がってゆくと思います。難しいことだと思うし、できないことと言う人もいるかもしれませんが、他人の目を気にせず、他人に口出しもしない。そうすれば世の中もっと良くなると思います。

TABLOの「つぶやき」をまとめた『BLONOTE』(世界文化社)が好評発売中
  • 取材・文渥美志保

    Vドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、コスモポリタン日本版、withオンラインなど、ネット媒体の連載多数。

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