山口組分裂抗争で激変する暴力団の「意外な事務所事情」 | FRIDAYデジタル

山口組分裂抗争で激変する暴力団の「意外な事務所事情」

名門・山健組事務所の使用差し止めの波紋が……

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渦中の山健組本部事務所

国内最大の暴力団、6代目山口組の有力傘下組織「山健組」の神戸市内の本部事務所が閉鎖される可能性が高まっている。暴力団対策法に基づき近隣住民の代理としての公益財団法人、暴力団追放兵庫県民センターの申し立てを受けて、神戸地裁は2022年5月16日付で、6代目山口組側による使用を差し止める仮処分を決定した。山健組は山口組内だけでなく全国の組織にも知られた暴力団社会の金看板とされるだけに、閉鎖の危機に波紋が広がっている。

山健組は、山口組を最大組織へと押し上げ、現在でもカリスマとして神格化されている3代目山口組組長、田岡一雄のもとで長くナンバー2である若頭を務めた山本健一が結成した組織として知られている。山本は4代目の最有力候補とされていたが、田岡が1981年7月に死去すると山本もまもなく亡くなった。

その後、山口組は4代目組長の座をめぐり分裂し、史上最悪の暴力団抗争とされた「山一抗争」を経て、5代目組長に山健組出身の渡辺芳則が就任した。それ以降、山口組内の最大派閥として、山健組の支配力は圧倒的だった。山健組を象徴する言葉として、当時は次のようにささやかれた。

「山健組にあらずんば、山口組にあらず」

5代目から2005年に6代目山口組に移行し組長の司忍の出身母体の弘道会主導の組織運営がなされるようになると2015年8月に再び分裂した。山健組は離脱した神戸山口組の中核組織だったが、2020年7月に神戸山口組を離脱して独立を宣言。2021年9月になると6代目山口組へ復帰した経緯があった。

警察当局の幹部は、「山健組を中核とする神戸山口組が6代目(山口組)を離脱したことは意外だったが、その後、山健組が神戸(山口組)を脱退したことはさらに驚きだった。そのうえ、6代目(山口組)に復帰するとは…」と振り返る。巨大勢力なだけに暴力団社会だけでなく、警察当局にとっても常に注目の的となる組織であることは今も変わりはない。

かつては爆弾事件も

山健組の本部事務所は、神戸市中央区花隈町にある。このため、暴力団社会では地名から山健組は、「ハナクマ」と呼ばれている。この地区は神戸の官庁街から少し離れた住宅街のため、地域住民らは暴力団事務所があることによって抗争に巻き込まれる危険性は絶えなかった。

2019年10月には山健組本部事務所すぐ近くで当時、対立状態にあった6代目山口組弘道会系の幹部が、山健組系組員2人を一度に射殺する事件が発生。事件直後、「ハナクマで音(銃声)が鳴った」「それも同時に2人が撃たれたようだ」などと暴力団社会と警察当局の双方で情報が飛び交った。

住宅街で拳銃を発砲するだけでも流れ弾による被害が懸念されるが、2010年11月には山健組本部事務所前の路上で手榴弾のようなものが爆発する事件も発生していた。この事件でのけが人はいなかったが、山健組事務所だけでなく向かい側の住宅の外壁や窓ガラスが損壊する被害も確認された。

 

 

19年12月に逮捕された山健組の中田浩司組長

暴力団事務所とはヤクザにとってどのような存在なのか。6代目山口組系の幹部は、「定期的な会合を開く事務所は我々にとっては絶対に必要だ」と強調する。そのうえで、「会合で全員が集まったところで親分が顔を出す。すると緊張感が漂う。そこで規律が生まれる。部屋住みの若い衆は事務所にいれば飯を食えるし、事務所を訪れた兄貴分から小遣いをもらえることもある」と解説する。

さらに、「山健の事務所が使用禁止となったが、どこか別の組織の事務所も使用差し止めの請求はあるだろう」と前置きしつつ、「シノハラの本家の使用禁止はないだろう」とも指摘する。

「シノハラの本家」とは、6代目山口組総本部を指す。神戸市灘区篠原本町にあるため、「シノハラ」と呼ばれることもある。使用差し止め請求がない理由として、「本家の部屋住みの若い衆たちが定期的に警備で見回っているし、周辺は掃き掃除などの清掃活動も行っている。この地域は治安がよいし周辺の住民は迷惑だと思っていないのではないか」と明かす。

ただ、6代目山口組と神戸山口組の対立抗争状態が続いているため、暴力団対策法に基づき双方ともに特定抗争指定暴力団に指定されて、神戸市は警戒区域に設定されているため、そもそも事務所への立ち入りが禁じられている。

対立抗争状態が終結すれば特定抗争指定が解除されるため、6代目山口組総本部の使用は再び可能となるが、山健組本部事務所については仮処分の決定で、その可能性は非常に低い見通しとなっている。

(文中敬称略)

  • 取材・文尾島正洋

    ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』(文藝春秋)

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